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(株)ベネッセスタイルケア 代表取締役社長 滝山真也氏


介護事業20周年にシニア・介護研究所を設立、「『年をとるほど幸せになる社会』実現に貢献」

2016/1/12

滝山真也氏
滝山真也氏
 (株)ベネッセホールディングス(岡山市)は、新たに介護領域の社内シンクタンク「ベネッセ シニア・介護研究所」を2015年11月11日に設立、所長にベネッセホールディングス執行役員で、(株)ベネッセスタイルケア代表取締役社長の滝山真也氏が就任した。超高齢化社会を迎えつつあり、高齢者の住居、QOL、介護、在宅介護/医療、看取りなど我々が向き合わなければならない多くの課題があるなかで、研究所設立の狙い、今後の活動内容などについて、滝山氏にお話を伺った。

―― まずは、研究所設立の経緯から。
 滝山 ベネッセは、1995年に介護事業をスタートさせ、今年20周年を迎えた。今日(15年11月11日)時点で、約1万4000人のお客様が286の高齢者向けホームおよび住宅で生活されており、約7500人のご高齢者に対して、34の在宅介護の事業所を通して介護/生活支援をさせていただいている。当社では、約8000人の老人ホームの介護スタッフ、約2000人の在宅介護のスタッフとともに、お客様の「その方らしさに、深く寄りそう」ことを大切にしている。多くのお客様が生活する現場の運営を通じて培った知見、インフラを保有しており、この強みを生かして、より一層の「年をとればとるほど幸せになる社会」の実現に貢献するため、高齢化社会に役立つ調査・研究を行い、社会や介護業界全体に対して発信することを目的に研究所を設立した。また、調査・研究結果を当社の提供するサービスのさらなる向上にも活用していく。
 介護事業20周年にあたり、現在のご入居者様とご家族様に対してご意見を伺い、今後の介護事業の取り組みに反映することを目的に「施設(高齢者向けホーム)のご入居者様・保証人様を対象とした『介護に関する意識調査』」をまとめており、この1月にも詳細を発表する。

―― 調査・研究の軸について教えてください。
 滝山 (1)高齢者・介護に関する未解決のテーマに取り組む、(2)現場の実態やご利用者・ご家族・介護スタッフの声を発信すること、(3)介護人材の成長とキャリアにフォーカスした研究である。
 (2)については、この「介護に関する意識調査」が最初の成果であり、当社の有料老人ホームをご利用されているご家族様とご入居者様約1万2000人を対象に、回答率55%、6000件以上の回答(15年10月23日現在)を得た。
 調査の詳細は別の機会に譲るが、調査の結果、「介護が突然現実のものになることも多いため、高齢者本人や家族だけでなく、周りの人、さらには社会全体が、介護に関する知識をあらかじめ持てるようにする必要がある」「ひとりや家族だけで悩まず、専門家に相談することが大切」「ひとりや家族だけで頑張りすぎず、社会資源を活用することも必要」「施設入居などのサービスの利用により、身体的・精神的負担が軽くなるだけでなく、家族関係が改善するケースも多い」「したがって、このような選択肢は、仕事と介護の両立が可能となり、介護離職の減少につながる方策の1つと言える」といったことが見えてきた。
 約1万4000人のご入居者様、約7500人の在宅のお客様、およびそのご家族様、約1万人の介護スタッフの声をもとに、今後も発信していきたい。

―― 貴社にとっても、業界、社会にとっても大きな調査結果ですね。
 滝山 入居に際しては、例えば、当社の有料老人ホームの入居者は「元気な人」が多いと思われる方が多いが、実際は、要介護1が22.8%、要介護2が17.3%、要介護3が15.3%、要介護4が15.1%、要介護5が12.0%の構成で、特養ホームの入居対象となる要介護3以上の方が42.4%を占める。残りは、自立が2.8%、要支援1が8.5%、要支援2が6.1%となっている。
 有料老人ホームは幅広い介護度の方が入居されていることも含めて参考にしていただける調査結果だと考えている。当社ホームのご入居者様の平均年齢は87歳。ホームでの看取りで亡くなる方は年間約1200人で、地域のかかりつけ医とともに看取りにたずさわっている。

―― (1)の高齢者・介護に関する未解決のテーマへの取り組みでは。
 滝山 今のところ、東京大学医学部附属病院老年病科との共同研究に着手しており、介護予防やさらなる健康寿命の延伸をテーマにしている。

―― 一方、(3)の介護人材の成長とキャリアにフォーカスした研究ということで、不足しているとされる介護人材に関するテーマですが。
 滝山 当社では、早くから人事制度や研修の充実を図るなどして、スタッフのキャリアアップを支援している。たとえば、昨年度はホームで働く介護職の人事制度を改定、目指すサービスや仕事のスタイルを明確にし、介護技術や認知症ケアなどの研修と等級を体系化している。
 また、介護福祉士を目指す者には、当社で開講している受験対策講座の受講費用や、介護福祉士国家試験の受験費用を全額援助しており、15年4月からは、介護福祉士の有資格者の手当てを3000円から1万5500円に増額する処遇改定も行っている。そのほかにも、社員が匿名で悩みを相談できる窓口を複数設け、問題解決を支援している。こういった様々な取り組みが人材定着につながっている。
 もちろん、ベネッセの「年をとればとるほど幸せになる社会をつくる」「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを提供する」という理念に共感しているところも根本にあると思うが、研究所では、介護人材の確保や育成、キャリアアップのための研究を継続し、発信することで、この領域においても業界、社会に貢献していく。

(聞き手・本紙編集長 倉知良次)

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