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液晶用部材「中国勢が徐々に台頭」


~「第30回IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(5)~

2016/1/15

上席アナリスト 宇野匡氏
上席アナリスト 宇野匡氏
 大手調査会社のIHSは、1月27日、28日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第30回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに全6回にわたって聞く。第5回は「FPD部材市場」を担当する上席アナリストの宇野匡氏に主要テーマを伺った。

◇  ◇  ◇

―― 有機ELがアップルのスマートフォン(スマホ)に搭載されるとの報道が相次いでいます。
 宇野 搭載の真偽について当社としてコメントすることはできないが、講演では液晶と有機ELの構造の違いを解説させていただくつもりだ。有機ELを含めた自発光デバイスは、RGBの表現は得意だが白色が苦手。バックライトが必要な液晶は、白色が得意だが黒が苦手という特徴がある。部材の観点でいうと、有機ELの普及はLEDなどバックライト関連のサプライチェーンに最も大きな影響を及ぼす。

―― 中国のスマホブランドで有機EL搭載端末が増えていますね。
 宇野 有機ELモジュールのサイズに合わせた金型を作製し、かなり使いこなしている。この金型を標準的に使い始めると、液晶モジュールがこれに厚みを合わせなければならなくなる。液晶モジュールの厚みが有機ELにどこまで追随できるのかも今後の争点の1つになる。

―― 光学フィルムへの影響は。
 宇野 そう大きくないと見ている。偏光板の使用枚数は、液晶が2枚、有機ELでは1枚になるが、有機EL用は単価が高い。偏光板メーカーもテレビ用とスマホ用は別ラインで製造しており、投資計画や生産計画にまで影響が及ぶとは現段階では考えづらい。

―― 液晶パネルの需給バランスが緩んでいます。
 宇野 部材市場も同様だ。過去3年は8.5G工場が年に1棟ずつしか立ち上がらなかったが、15年は中国で3棟も稼働した。これに伴い、ガラス基板以外は当面オーバーキャパシティーの状況になる。逆に過去3年が順調すぎたと言え、少なくとも4月までは稼働調整を余儀なくされる。

―― それでも16年の生産面積は拡大しますか。
 宇野 テレビやモニターの生産台数は減っても、平均画面サイズの大型化によって、16年も15年と同様に、面積ベースで年率5%程度の成長が期待できる。テレビの平均画面サイズが1インチ大きくなると、生産面積は5%増加し、8.5G工場1棟分のキャパシティーが必要になる。

―― 部材市場で中国メーカーの存在感は。
 宇野 国産メーカーの部材を使用すると補助を受けられるという支援策が奏功し、様々な部材で採用が増えている。テレビやITパネルのバックライト用では、フィルムも含めて中国勢の存在感が増し、日系に限らず韓国や台湾のメーカーも押され気味だ。反射フィルムでは依然として日系メーカーが強いが、DBEFは間もなく特許の有効期限が切れるため、これから新規参入するメーカーが増えるのではとみている。

―― ガラス基板に関してはいかがですか。
 宇野 中国メーカーとしてイリコ(彩虹)、東旭集団、中国建材(CNBM)が知られており、現地パネルメーカーへの供給を増やしている。ただし、カラーフィルター(CF)用に限定されており、品質面でまだアレイには採用されておらず、サイズも6Gまでにとどまっている。長く赤字の状態にあり、経営は決して楽ではない。
 日米の先行メーカーも6Gまでのサイズでは中国勢と無理な競争はしていない。いまやCFは内製が前提であるため、日系メーカーは旧ラインを中国メーカーに売却し、技術を供与する代わりにブラックマトリックスやオーバーコートなどの材料を売り込んでいる。しかも、8G以上ではしっかりシェアを獲得しており、サイズ別にすみ分けができている。

―― 天馬微電子が量産供給を本格化させるなど、中国勢がLTPSの事業化に意欲的ですが。
 宇野 中国メーカーにとっては依然としてLTPSの量産は難しく、量産までに3年かかった天馬は日本製の最新の低熱収縮ガラスを使ってようやく歩留まりを安定化させた。今後LTPSの量産を予定している中国メーカーは天馬と同様、量産に苦労するだろう。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第30回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報は
https://technology.ihs.com/events/552152/30th-ihs-display-japan-forum
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