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医機連 国際政策戦略委員会 アジア分科会 主査 城風淳一氏


「国際ビジネス推進活動の実際~タイにおける血液透析医療の連携~」を講演

2016/6/21

城風淳一氏
城風淳一氏
 一般社団法人 日本医療機器産業連合会(医機連)では、日本の医療産業振興のため、政策提言活動や医工産官学連携などの産業基盤強化、海外事業展開の支援などの国際化推進に取り組んでいる。その一環で、2015年11月16日に第2回医機連メディアセミナーを開催した。セミナーでは、国際政策戦略委員会の依田紀男委員長の講演「日本の医療機器の国際展開~医機連の取組み~」に続き、国際政策戦略委員会アジア分科会主査の城風淳一氏が「国際ビジネス推進活動の実際~タイにおける血液透析医療の連携~」と題し、東九州メディカルバレー(MV)やタイとの交流などについて講演を行った(時制、データなどは講演時点)。

◇   ◇   ◇

◆東九州メディカルバレー構想特区の概要
 城風氏は、「タイにおける血液透析医療の産官学連携」において、タイとつながりを持っている日本の東九州メディカルバレー構想特区(血液・血管医療を中心とした医療産業拠点づくり特区、大分県、宮崎県)の概要を紹介した。

 同特区には、旭化成メディカルMT(株)、川澄化学工業(株)、東郷メディキット(株)の医療機器メーカー、大分大学(西日本唯一の治験中核病院、研修施設「スキルスラボセンター」保有)、宮崎大学(医療倫理体制をトップレベルで運用、産業動物教育研究センターを整備)、立命館アジア太平洋大学(留学生在籍数:約100カ国・3000人在籍、健康マネジメントプログラム保有)、九州保健福祉大学(臨床工学科に全国トップクラスの医療機器トレーニング施設を保有)が立地している。旭化成メディカルMTはダイアライザー(血液透析器)、川澄化学工業は透析用血液回路セット、東郷メディキットは透析用の留置針を製造している。

◆日本の透析患者死亡率は最低水準
 続いて、先進諸国の透析患者の死亡率を紹介した。アメリカを1とすると、日本は120日以内で0.50、121~365日0.25、365日0.30と、いずれも10カ国のなかでダントツに低い死亡率を示しており、「日本のこの高い技術を世界、アジアに普及させよう」との意気込みで活動が展開されている。

 そのうえで、アジア太平洋諸国の医療機器市場とタイ市場における国別輸入金額を解説した。アジア太平洋諸国の医療機器市場(2013年)は、以下のとおり。ドルは米ドル、カッコ内は5年間平均増加率。
▽日本300億ドル弱(7.0%)
▽中国170億ドル(22.6%)
▽韓国50億ドル弱(5.2%)
▽オーストラリア50億ドル弱(7.8%)
▽インド34億ドル(12.1%)
▽台湾20億ドル(7.8%)
▽マレーシア15億ドル(12.0%)
▽タイ8億ドル(13.0%)

◆15年に中国市場が日本市場を抜く
 13年は日本の医療市場がアジア太平洋エリアではトップであるが、15年は中国の医療市場が日本のそれを上回って推移していると述べた。また、タイの下は5億ドル未満で、ニュージーランド(5年間平均増加率7.4%)、ベトナム(10.6%)、インドネシア(9.5%)、香港(8.6%)、シンガポール(12.4%)、パキスタン(7.7%)、フィリピン(13.1%)、バングラデシュ(4.3%)と続く。
 全世界市場は3277億1200万ドル(5年間平均増加率5%)、アジア太平洋エリアは689億900万ドル(同10.4%)で、世界人口の6割以上を占める同エリアの医療市場のシェアは21%に過ぎない。さらに、世界の約10%を占める日本を除けばわずか12%に過ぎず、いかにアジアエリアの潜在市場が大きいかがわかる。

◆タイ市場で日本の医療機器はシェア2位
 タイ市場(7億9300万ドル、14年)における国別輸入金額は以下のとおり。
▽アメリカ1億9600万ドル
▽日本1億300万ドル
▽ドイツ9800万ドル
▽中国6800万ドル
▽スイス5400万ドル
▽アイルランド5200万ドル
▽韓国3100万ドル
▽その他1億9100万ドル
 タイ市場における日本の医療機器シェアは2位にランクしている。

◆東九州メディカルバレーがタイと人的交流
 07年から12年までのタイにおける腎代替療法の患者数は、一貫して増加している。血液透析は07年の2万641人が12年に4万505人、腹膜透析が1198人から1万2150人へ、腎臓移植は3618人が5729人へ、合計の患者数は2万5487人から5万8385人へと増加した。

 東九州メディカルバレーは、13年からタイのニーズ調査、タイから受け入れての人工透析技術セミナー、透析看護師の臨床トレーニングコース、技士の臨床工学トレーニングコースなどを実施しており、Siriraj(シリラート)病院およびRajavithi(ラチャウィティー)病院との連携が深い。シリラート病院は、マヒドン大学医学部附属病院で、マヒドン大学医学部は、チュラロンコン大学医学部と国内1、2位を争う医学の最高学府である。シリラート病院は、チュラロンコン王によって設立されたタイで最古最大の病院で、2223床、61診療科(113病棟、手術室72室)。腎臓内科医が15人在籍し、透析治療の3次医療機関となっている。

 ラチャウィティー病院は、タイ保健省直属の3次医療機関で、医学部附属病院ではないが、医師やナースの卒前・卒後の教育病院としての機能を持つ。1200床の総合病院で、腎臓内科医7人が、血液透析、腹膜透析、腎臓移植まで網羅している。

◆タイを足がかりに東南アジアへ普及目指す
 東九州メディカルバレーは、タイで日本式透析システムを普及させ、さらに、そこから周辺の東南アジア諸国へと進出・普及を目指している。

 そのロードマップ(13年時点)は、アジア諸国の経済成長に伴う透析患者の急増を背景に、世界最高水準の日本の透析医療技術・機器をもってして、経済状況および医療保険制度の整備状況からタイにおいて事業展開を開始。第1フェーズで医師・看護師・技師を対象とした在邦研修、現地調査・技術指導・水質完全実証調査、国立病院などへの日本式透析システムの導入、第2フェーズでアジア版臨床工学技士制度創設の働きかけとタイ全土へのCDDS(セントラル方式による多人数用透析装置)の展開、第3フェーズでタイ周辺の東南アジア諸国への事業展開、東九州地域にナショナルトレーニングセンター設立、第4フェーズで他の医療分野(オールジャパン)での展開として、アフェレシス治療、ステント治療、カテーテル治療などに領域を拡大し、さらに、日本のMEJ(メディカル・エクセレント・ジャパン)との連携による包括的な海外戦略の構築へと発展させる。

 14年6月から15年にかけて本邦研修、3回にわたるタイ現地調査などを実施し、結びつきを強めている。本邦研修では、タイの透析施設(ラチャウィティー病院)から、日本との連携で望むこととして、水処理の品質向上、CDDS、前処理用ミクロフィルター、エンドトキシン除去フィルター、生菌試験とエンドトキシン濃度試験、後半の分子量の尿毒物質を除去できるダイアライザー、臨床工学技士の養成プログラムの応接に対するサポートが挙げられた。

 現地調査では、それぞれチームを編成し、水の純度調査(生菌試験・エンドトキシン検査)、水の前処理装置(マイクローザ試験機)の設置&運転、新病棟および新透析室の建設計画調査、透析医療の実態調査(透析および薬物治療)、臨床工学技士制度の導入可能性に関する調査、透析の医療経済分野の調査を行った。

◆タイの両病院の新病棟・新透析室計画を支援
 ラチャウィティー病院は、1フロアの面積3000m²×27階建ての新病棟の建設が進んでおり、18年には9階フロアの半分のエリアに透析室がオープンする。また、シリラート病院では、20年に新病棟を開業する計画で、同じく大規模な新透析室を整備する。いずれも、透析治療技術のほか、施設および設備のレイアウト、導入する設備機器、運転管理に到るまでの支援を行う。

◆日本式透析医療技術の受け入れ可能性高まる
 こうした活動により得られた成果として、原水(水道水)の詳細評価は予想以上に汚れており、季節変動(雨季/乾季)が大きいこと、ラチャウィティー病院からの「臨床工学技士教育も、タマサート大学などと組んで進める」という将来計画の紹介、継続的な人の交流の結果、個別ビジネスにもつながったこと、日本式の透析医療技術の多くが、タイおよびASEAN諸国に受け入れられる可能性が明らかとなったこと、タイ保健省および国民医療保険事務所(HNSO)からの支援獲得、在タイ日本国大使館および厚労省、経産省からの支援獲得、東九州メディカルバレーの産官学の連携強化、東九州メディカルバレーの枠組みを超えた連携拡大(日機装、和光純薬の参画)を挙げた。

 城風氏はこうした成果から、原水(水道水)の前処理の重要性、建築基準の違い、保健償還制度の違い、タイ政府の医療政策の今後の動向などといった新たな課題が見つかっており、引き続き、この課題解決の取り組みが重要と説明した。

◆バンコク医薬・医療分科会
 城風氏は最後に、盤谷日本人商工会議所化学品部会 医薬・医療分科会(略称:バンコク医薬・医療分科会)について紹介した。
 同分科会は、在タイ日本国大使館、JETRO、JICAとタイ政府やその関係機関、関係団体の仲介役として、市場の情報交換、ASEANへの新規参入を検討する企業などへの情報提供、会員間連携による新たなビジネス機会の創出といった活動を行っており、15年3月に開催した同分科会キックオフミーティングには、118人が参加した。内訳は、医薬品22.3%、医療機器13.8%、大使館・公的機関8.5%、現地製造8.5%、コンサルティング・法律8.5%、商社5.3%、タイ病院関係5.3%、日本病院関係3.2%、現地製造(駐在事務所)3.2%、人材紹介業2.1%、メディア・出版2.1%、その他17.0%となっている。城風氏はタイ、ASEAN諸国の医薬、医療市場への関心の高さを紹介しながら、日本の医療の輸出に向けて協力と参画を呼びかけて講演を終えた。

(この稿終わり)
(本紙編集長 倉知良次)

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