電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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3大技術がイノベーションを起こす


~自動車産業に舵を切る半導体メーカーたち(上)~

2016/7/8

■成長続ける自動車市場

 近年、自動車へのエレクトロニクス導入のスピードは大幅に引き上げられている。様々な統計やデータを通して、このような傾向が明確になってきた。長きにわたり半導体の主要顧客であり続けたPCや家電では市場の停滞が起きて久しい。一人勝ちしていたスマートフォン(スマホ)でさえ普及に一服感が出てきた。半導体は巨大市場に成長し、その巨体を引っ張れる強力なアプリケーションが必要になっている。

 しかし、イノベーションや先端テクノロジー開発の動きは限定的で、以前よりも弱まっているように見える。こうした環境のなかで脚光を浴びるのが自動車の急激なエレクトロニクス化だ。IHSでは、自動車向け半導体市場は2015~20年の年平均成長率(CAGR)で5.8%の成長を予想している。15年には300億ドルであった市場は、20年には100億ドル上乗せの400億ドルを超えると見ている。

3大技術がイノベーションを起こす

 将来の自動車にイノベーションを起こすのが、(1)ADAS、(2)Infotainment : Connectivity&Telematics、(3)パワートレインの3大技術であるとIHSでは予想している。同時に自動車用半導体市場でも著しい成長を遂げると期待を寄せている。特にADAS分野の成長は著しく、同分野は15~20年のCAGRで19.5%の勢いで成長するとIHSでは見ている。

 ADASで最も重要なデバイスの1つがカメラ/イメージセンサーである。IHSでは、世界の自動車販売台数は19年に1億台を超えると予想しているが、自動車向けカメラ出荷台数も20年には1億個に達すると予想する。これは携帯電話/スマホへのカメラ投入率の実績にも劣らないスピードだ。その後も自動車の安全や制御、情報収集に至る様々な期待がカメラの搭載に拍車をかけ、将来は携帯電話に次ぐマーケットに成長するとIHSでは見ている。そして、自動車メーカーがADASの先に見据えるのは自動運転技術である。

 Infotainment : Connectivity&Telematicsの成長も15~20年のCAGRで13.8%と2桁成長を予想する。同分野では、かつての車載AV機器とカーナビが合体し、包括的な情報機器へと進化を遂げている。衛星電波、AM/FM電波、GPSなど様々な情報を受信しドライバーへ届ける。

 加えて、TCU機能では、LTEとUMTS(HSDPA)、GSM、CDMAといったモバイルネットワークも利用し、センターへの連絡と通話をサポートする。車両内のネットワークにはワイヤレスLAN(Wi-Fi)やBluetoothを導入する。将来的には、車車間通信や交通サービスとも連携し、AIによるサポートで機能は格段に向上するだろう。

 パワートレインでもエレクトロニクス化の流れが加速している。アイドリングストップが普及し、パワーステアリングやブレーキサーボは油圧部品などからモーター駆動に置き換わった。そして、駆動、制御のためのECU、電源デバイス、ドライバーICの搭載が加速している。

 フォルクスワーゲンの不正発覚以降はHV/EVへの技術シフトが決定的となり、今後の自動車はモーターへの依存が増すばかりである。自動車メーカーの開発も本腰となり、今やモーターやIGBTは基幹部品の座に就く。

■自動車市場に駆け込む半導体メーカー

 自動車のエレクトロニクス化が加速している背景には、それをサポートしているデバイスメーカーの存在が欠かせない。自動車メーカーとデバイスメーカーの関係はティア1を通してさらに強化されている。そして、自動車産業の未来に期待を寄せて自動車産業へ参入する半導体メーカーも増え続けている。

 過去10年間の自動車向け半導体売り上げは2006~15年のCAGRで5.4%の成長を遂げた。リーマンショックで需要が落ち込んだ09年を除き、売り上げは右肩上がりで上昇を続け、06年の180億ドルから15年には290億ドルに増加した。



IHS Technology 主席アナリスト 李根秀、
お問い合わせは(E-Mail : forum@ihs.com)まで。
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