電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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テレビ市場「4つの変化に要注目」


~第31回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催 (4)~

2016/7/15

シニアディレクター 鳥居寿一氏
シニアディレクター 鳥居寿一氏
 大手調査会社のIHSは、7月27~28日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第31回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに全5回にわたって聞く。第4回は「TV市場」を担当するシニアディレクターの鳥居寿一氏に話を伺った。

 
 ―― 2016年の薄型テレビ市場の予測は。
 鳥居 出荷台数の見通しは年初から据え置いている。当初の想定どおり、リオ五輪の効果は薄く、中国や米国市場で若干のプラス成長が見込める程度で、完全に成熟期に入っている。そうしたなかでも4つの点で大きな変化が起きていると考えている。

 ―― 4つの変化とは。
 鳥居 まず、大画面化が急激に進んでいる点が挙げられる。年初の予測で16年は通年で平均サイズが40インチ台に突入するとみていたが、1~3月期の実績値として、すでに世界平均が40.6インチ、中国市場に限ると45インチに達した。中国で8.5世代ラインが相次いで稼働し、55インチの生産が急増したことが背景にあると考えており、55インチ以上の比率は北米が25%、中国はこれを上回る27%にまで高まった。
 中国における大画面化の加速を反映し、16年の世界平均を41.3インチに上方修正した。出荷台数は伸びないが、大画面化によってパネル生産面積の拡大は今後も続くとみている。

 ―― 2つ目は。
 鳥居 4Kおよびスマートテレビの比率が半分に達したことだ。
 4Kの普及率は毎回予測を上回っており、45インチ以上では世界平均が48%と約半数に達した。日本市場は59%、中国も58%と4K市場をリードしており、順調に伸びている。
 IHSでは、20年には全サイズベースでテレビの45%、45インチ以上だと93%が4Kになると予測しており、50インチ以上に限れば18年以降は100%が4Kになる見通しだ。つまり、17年以降は4Kのコモディティー化が進み、価格面でのプレミア感が失われることを意味する。

 ―― スマートテレビに関しては。
 鳥居 日本ではあまり普及していないが、世界市場ではスマートテレビの比率が51%まで上昇した。中国市場は実に80%がスマートテレビで、米国も56%と過半数を突破した。放送局が強く、無料放送の文化の日本とは対照的に、中国は放送に魅力的な番組が少なく、ネットを介してテレビでコンテンツと楽しむという習慣が米国以上に根付いている。

 ―― 3つ目の変化は。
 鳥居 これが最も大きな変化だと思っているが、中国でLeTV(楽視)に代表されるコンテンツやスマートデバイスの分野から多くの企業がテレビ事業に新規参入し、大きくシェアを伸ばしている。シャオミーの「MiTV」、MTCの「FunTV」などストリーミングテレビブランドが続々と参入し、コンテンツの視聴契約とテレビをセットでネット販売する手法などで販売を伸ばしている。LeTVは15年末の中国スマートテレビ市場で4位につけ、今年4月だけで約70万台を販売した。
 家電量販店を介さないため価格競争力が高く、セット販売によって、テレビ本体に関しては採算を度外視した価格設定をしている。4Kコンテンツも保有しており、中国でもテレビ市場の成長率が低下するなかで、こうした新興のストリーミングテレビブランドが伸びている。LeTVは15年に300万台弱を販売したが、16年は倍増の計画を立てており、ローカルテレビブランドからシェアを奪っている。

 ―― そうなるとハイセンスやTCL、コンカといったテレビブランドは中国以外の市場を狙っていく必要に迫られますね。
 鳥居 そのとおりだ。だが、彼らはまだ世界市場でのブランド力やマーケティング力が弱く、そこに資金も投じておらず、海外展開は決してうまくいっていない。日本や欧米からブランドを買ったりライセンスを受けたりと、弱いブランドを補おうとしている。

 ―― 4つ目について。
 鳥居 日本メーカーのテレビ事業の再編に一定のめどが立ったことだ。出荷台数は減ったものの、ソニーは2年連続で黒字を達成した。欧米市場でプレミアムブランドとしての地位を維持し、パナソニックも日本や西欧、東南アジアで健闘している。日本のブランドが各地域でしかるべきポジションを確保できたことは喜ばしい。

 ―― 有機ELテレビはどう見ていますか。
 鳥居 出荷台数予測を16年80万台、20年に580万台と、前回から下方修正した。参入が目されていたサムスンが事業化から距離を置いたことと、LGディスプレーの次期大型投資が遅れていることを反映したためだ。先述のとおり、中国で55インチ液晶テレビが急速に普及しているため、LGディスプレーが有機ELテレビのサイズ戦略を55インチから65インチへシフトしつつあり、大画面化によって出荷台数が減少するということも考慮に入れた。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第31回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報は
http://www.cvent.com/events/31st-ihs-display-japan-forum/event-summary-9f97d28cf3a54a92a143df2f3670badc.aspx?Refid=IHSSITE
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