商業施設新聞
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No.369

来場客動員に苦しむ「麗水エキスポ」


嚴 在漢

2012/6/5

 5月12日に盛大に開幕した麗水世界博覧会(麗水エキスポ)。韓国南西部の麗水(ヨス)市で3カ月にわたり開催されるが、来場者は当初予測の40%水準にとどまり、動員に苦しんでいる。
 麗水エキスポは、韓国では1993年の大田エキスポに次いで2回目の国際公認博覧会である。2010年に中国上海市で開催された上海エキスポは大成功を遂げたが、これに負けじと意気込む麗水エキスポ組織委員会は、開催前から韓国の国内メディアはもちろん、外国メディア向けにも、親切に、そして詳細な現地取材を許可した。しかし、いざ麗水エキスポが開幕してみると、意外と韓国の国民から好感を得られていないのが現状だ。

 まず、ソウル市から遠いことが最大のネックとなっている。麗水市は、ソウル市から356km、KTX(韓国の新幹線)でも3時間半かかる。加えて、麗水市の人口は29万人弱、上海エキスポを開催した上海市とは比べものにならない小規模な地方の海岸都市で開催している。さらに、宿泊施設の対応も不十分で、周辺都市の順天、光陽などに分散されている。つまり、地理的にも恵まれず、また開催地周辺の動員力も弱いため、思うように来場者を動員できていない。

 麗水エキスポ組織委員会によれば、エキスポ開催にあたっての基盤施設の投資費用は2兆1590億ウォン(約1490億円)。一方、開催期間(93日間)中には外国からの観光客を含め1000万人以上の来場者を予想し、外国人観光客の消費だけでも1兆2400億ウォンを見込んでいた。さらに、経済的な波及効果は3兆3000億ウォン規模とし、これによる生産誘発効果は全国で12兆2328億ウォン、付加価値創出効果は5兆7201億ウォン、そして7万8833人の雇用を創出すると同委員会は想定している。
 目に見える経済効果も大きいが、それ以外の効果にも大きな期待を寄せている。麗水エキスポを通して、韓国は既存の産業発展、すなわち「大都市中心の発展」という韓国のイメージを払拭させて、次世代の海洋観光・レジャー産業と先端海洋交通手段および海洋科学技術などを発展させるチャンスとして捉えようとしている。また、世界にあまり知られていない朝鮮半島の西南圏の潜在力、南海岸一帯の海岸線や海上国立公園の美しさなどが世界中に知れ渡ることも期待している。

 しかし、このようなバラ色の希望にひたるのも、まずは来場者が1000万人を突破してからの話だ。5月末現在、当初の来場者予想を大きく下回ったまま、時間だけが経過している。来場者の動員が伸び悩めば、全国の小学生、中学生、高校生の修学旅行をはじめ、国民総動員で麗水エキスポへの来場を促すことになるのだろうか。
 無理矢理な宣伝、動員で作られた“成功”を収めるよりも、88年のソウルオリンピックや02年の日韓ワールドカップのように、「みんなで盛り上がった麗水エキスポ」と思えるようになって欲しい。成功裏に閉幕することを切に願う。

麗水エキスポの開幕式には李 明博大統領も訪れた
麗水エキスポの開幕式には李 明博大統領も訪れた
海洋ロボット館の館内展示
海洋ロボット館の館内展示
韓国で開催された大型国際イベントの経済効果(韓国国内)の比較
  ソウルオリンピック
(1988年)
大田エキスポ
(1993年)
日韓ワールドカップ
(2002年)
麗水エキスポ
(2012年)
開催期間 16日 3カ月 1カ月 3カ月
観光客 290万人 1400万人 350万人 1082万人
生産誘発 4.7兆ウォン 3.1兆ウォン 11.5兆ウォン 12.2兆ウォン
付加価値 1.8兆ウォン 1.3兆ウォン 6.7兆ウォン 5.7兆ウォン
雇用創出 3万人 21万人 35万人 7.9万人
(出所:韓国国土海洋部、麗水エキスポ組織委員会)

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