電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第291回

世界最強のニッポン電子部品、18年度設備投資は1兆円超!!


~「自動車」「センサー」キーワードに半導体に迫る勢い~

2018/6/29

 「驚くべきことが起きている。日本の電子部品は世界シェアの4割を握り、ぶっちぎっているが、ここに来て設備投資も急拡大してきた。主要30社の18年度投資計画は何と1兆円を超えてきた。日本の半導体産業の設備投資に迫る勢いといってよいだろう」

 こうつぶやくのは、電子デバイス産業新聞にあってロボット報道で知られる浮島記者である。最近では電子部品の取材にも携わっており、6月21日付の1面トップ記事では日本の電子部品メーカー主要30社の設備投資計画をまとめている。

 それによれば、2016年度段階で6578億円であった電子部品30社の設備投資は、2017年度には8935億円にも跳ね上がり、2018年度は実に前年度19%増の1兆629億円となる見通しであるという。

 日本の半導体設備投資は2017年度に、10年ぶりのことであるが1兆円を超えてきた。2018年度は東芝のフラッシュメモリー、ソニーのCMOSイメージセンサーなどで投資を大きく拡大するため、2年連続で1兆円を超える可能性が高い。それにしても、電子部品への投資が半導体に並びかけるという現象はついぞ見たことがない。IT産業からIoT革命へと時代が動いていることの象徴といえるだろう。

 電子部品業界で最大の投資を計画するのが村田製作所であり、2017年度の3066億円をさらに上回り、3400億円という高水準に押し上げた。知り合いの証券アナリストとこのことを話していたら、彼は「全く半導体メーカー並みの設備投資だね。参りましたよ。村田さんには」と吠えるように言っていた。今や黄金武器となりつつあるメトロサークは急拡大しており、プリント配線大手のメクトロンを脅かしている。先ごろ原材料を作る三重村田の第2期拡張を決めたことから、富山村田などの増強にも拍車がかかっていくことだろう。

最近の自動車は電子部品の搭載が急増している。
最近の自動車は
電子部品の搭載が急増している。
 各社の投資を見ていて気が付くことは、やはり「自動車」「センサー」がキーワードになっていることだ。自動車においては時ならぬEVブームが巻き起こり、燃料電池車、プラグインハイブリッド車などのエコカーブームで積層セラミックコンデンサー(MLCC)の大活況を呼び込んでいる。何しろ普通のエンジン車であれば、700~800個搭載するくらいであるが、こればEVになれば1台につきMLCCを1万個搭載するというサプライズなのだ。こうなればMLCCで世界トップを行く日本勢、つまり村田製作所、TDK、太陽誘電はいずれも大型投資を構えざるを得ないだろう。

 センサーに関連する投資も目立ってきている。TDKは最近になって「未来プランの中心を成すのはセンサーであり、ここに全面注力」の姿勢を打ち出した。このために海外のセンサーメーカーをバンバンM&Aしており、足りないところのラインアップを揃えることに傾注している。車載を取るためにはセンサーのフルラインアップが必要と考えているわけであり、自社の得意技である磁性体テクノロジーを生かしたTMRセンサーも拡大していく考えだ。IoT時代の本格到来で世界全域に45兆個のセンサーが必要と見る向きもあり、TDKをはじめ電子部品メーカーはひたすらセンサー開発/量産に余念がない。

 日本電産はモーター大手として知られているが、インテリジェントモーターと呼ばれるIoT対応の車載モーター開発/量産に力を入れていく。同社は車載関連について、2~3年間で2000億円を投じていく方針を固めている。また、世界トップシェアを持つハプティクス(触覚)センサーや振動センサーのさらなる充実を図っていく考えだ。

 ところで、どのようなセット機器を作るにあたっても必要となるのがコネクターであるが、これが現状では全く足りない。コネクターがないために製造装置、IT機器が予定どおりの生産計画で作れないというグチも多く聞こえてくる。この製造不安を解消すべく、日本航空電子、第一精工、本多通信工業、イリソ電子工業などが一斉に工場新増設に動き始めている。

 これまで電子部品メーカーの成長を支えてきたのは、いつにかかってスマホの急成長であったが、ここがかなりの「曇り空」となり、台数はマイナス成長に入ってきた。これに代わるアプリとして「自動車向け」が急浮上してきたわけであり、エコカーさらには自動走行、コネクテッドカーなどに多くの電子部品が活躍することになるだろう。もちろん5G通信に伴う高速化、高周波化の流れで電子部品メーカーには追い風が吹く。AI、ロボットなどIoT革命を担うハードにも必須であるのが電子部品であり、日本にとって電子デバイス最後の砦ともいうべき「一般電子部品」の投資動向からは今後も目を離すことができない。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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