電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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テレビ市場「18年は踊り場」


~「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(3)~

2018/7/13

エグゼクティブ・ディレクター 鳥居寿一氏
エグゼクティブ・ディレクター 鳥居寿一氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、7月26~27日にFPD市場総合セミナー「第35回IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)で開催する。本稿では、国内最大の受講者数を誇る同フォーラム内容について、講演アナリストに4回にわたりインタビューする。第3回は「TV市場」を担当するエグゼクティブ・ディレクターの鳥居寿一氏に話を伺った。

 ―― テレビ市場の現状をどう見ていますか。
 鳥居 端的に言うと「スーパーコモディティー」になった。中国ブランドがブランド力向上にも資金を投じるようになって世界シェアを上げ、トップシェアのサムスンをも脅かそうと積極的である。8.5G工場の増加で55インチ、4Kが急速に低価格化して普及しているが、8K化を論ずるには時期尚早だ。2018年は大きな目玉がなく「踊り場の年」といえる。
 18年のテレビ出荷台数は前年比3.5%増の2億2749万台になると予測しているが、これでも「強気の見方」と言われることもある。20年には2億3693万台まで伸びるとみているが、ここで新興国での薄型テレビ化も完了し、台数ベースで頭打ちになるとみている。

 ―― 18年は平昌五輪やサッカーW杯の特需に期待する向きもありましたが。
 鳥居 世界的なスポーツイベントがテレビの年間需要を押し上げる効果はすでに薄れた。18年に限れば、平昌五輪には押し上げ効果がなく、実際のところ五輪期間中の韓国テレビ市場は前年割れだった。
 サッカーW杯に関しては前半の出荷ベースの押し上げ効果だけはあった。1~3月期の出荷は中南米、ロシアを含めた東欧、中近東・アフリカなどが好調だったものの、販売はそれほど伸びなかった。そのなかで意外に好調だったのは日本で、6月に入り前年同月比2桁成長している。

 ―― 大型化のトレンドは継続していますね。
 鳥居 平均サイズは17年に42.7インチとなり、22年には47.1インチまで拡大するとみている。10.5G工場の稼働で今後65インチが増えてくるためだ。パネルの生産と同様に中国市場の大型化が顕著で、中国は17年平均が46.7インチ、22年には52.7インチになると予想している。
 ちなみに1~3月期実績でいうと、55インチ以上が出荷台数に占める比率は25%まで高まり、中国に限ると40%にのぼった。45インチ以上に占める4K比率は全体で82%、日本市場に限ると95%、中国は87%にまで高まっている。

 ―― 有機ELテレビがプレミアム市場で存在感を高めていますね。
 鳥居 テレビブランドも家電量販店も利益率の高いテレビを探しているところに有機ELテレビが登場し、高画質や薄型デザインで差別化できたこともあって、17年の商戦は大成功を収めた。日本市場では、55インチ以上に占める有機ELテレビの比率が10~12月期実績として台数ベースで17%、金額ベースで48%となり、世界的に見てもよく売れている。
 だが、今後を考えると課題が山積している。パネルの供給元はLGディスプレー1社のみで、今後の増産投資計画は遅延している。技術的に8K化が難しく、今後10.5G工場から大量の65インチ液晶が出てくることを考えると、コスト競争力にも不安がある。インクジェット技術でパネルを安価に量産したいが、そのめども立っていない。テレビ市場で今の地位を維持し続けられるのか、これからが正念場になるだろう。

 ―― 8Kテレビに関してはいかがですか。
 鳥居 4Kは、ネットフリックスなどによるネットコンテンツの4K化が後押しして普及しつつあるが、8Kはコンテンツがまだ皆無に等しく、8K放送の計画があるのは日本だけで、普及を後押しする要素がない。有機ELテレビをラインアップしないサムスンとシャープが8K化に熱心だが、その戦略の成否を判断するにはまだ時間がいる。

 ―― 19年に向けてのトピックスを挙げて下さい。
 鳥居 19年は10.5G工場からの本格出荷によって「大型化」が再び活発化する年になる。65インチや75インチの商品化が相次ぎ、市場にどう受け入れられていくかが焦点になる。機能面では、スマートスピーカーの機能をテレビに取り込んだ「ボイスアシスタント」がどう発展していくか。これらに付け加えるなら、サムスンが次世代テレビとしてQD-OLEDの事業化を決断するのかに注目している。

(聞き手・編集長 津村明宏)



 「第35回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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