電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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世界では19年初頭にも一部実用化


~動き始めた5G通信~

2018/8/24

 第5世代(5G)通信が本格導入に向けて動き始めました。以前は導入する意義に疑問を投げかけるような向きもありましたが、早くから「2020年の東京オリンピック・パラリンピックにあわせて実用化」を表明してきた日本に加え、ラストワンマイルをミリ波で実現しようとする欧米の取り組みや、それに向けた試験導入、実証試験などが活発化しており、早ければ18年末~19年初頭にも一部先行導入するケースが出てきそうです。

 5Gの標準化団体である3GPPは、18年6月にRelease 15を発表しました。これでフェーズ1の仕様が決まり、各国でプロジェクトが前倒しで動き始めています。米AT&Tやベライゾンは18年末~19年初頭、カナダは19年中、ドイツテレコムは19~20年といった導入スケジュールを明らかにしています。日本ではどの周波数帯を使用するのか確定していませんが、世界では「東京五輪前」に実用化に踏み切る動きが見えてきました。

 また、フランスのオレンジやSIGFOXはLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの普及に積極的で、22年までにIoT用の5Gネットワークを構築する予定です。中国での普及は21年以降とみられていましたが、通信会社のファーウェイがこのスケジュールよりも明らかに早く技術開発や提案を積極化して通信機器メーカーとしてのプレゼンスを高める取り組みを行っており、想定よりも普及が早まる可能性があります。

 3GPPは、19年末までに最終仕様となるRelease 16を公開する予定ですが、この前段階として、Release 15の評価とアップデートとなるIMT-2020 Submission Milestoneを18年9月ごろ、IMT-2020 Finalを19年6月ごろに公表する予定となっており、商用プロジェクトのさらなる加速につながるとみられています。

 こうした流れを受け、5G用の半導体や電子部品の需要が増加し始めました。特に顕著なのが電源および高周波デバイスです。これまで通信用デバイスといえばGaAsベースが中心でしたが、かつては傍流とみられていたGaN on SiやGaN on GaNを中心とするGaNデバイス、シリコン、SiGeなどにも引き合いが強まっており、デバイスの高効率化、生産技術の改善に加え、種類の広がりや多様化によって役者が揃ってきたという印象を受けています。

 5Gの活用は、いわゆるスマートフォンを中心としたモバイルネットワークに限りません。導入当初はモバイルネットワークよりもむしろ、スマートシティやWi-Fiホットスポット、地域限定のブロードバンドのようなエリアを限定した使われ方から普及が進んでいくと考えます。使用する周波数帯にもよりますが、5Gでは周波数帯が高周波になるほど電波の直進性が高くなるため、スモールセル(小さな基地局)を数多く設置する必要があるからです。

 世界的にみて、通信キャリアの売り上げは決して大きく伸びていません。こうしたなか、導入のイニシャルコストを抑制しながらネットワークを広げていく必要があります。逆に、こうしたエリア限定的、あるいは用途特化型で導入が進めば、5Gネットワークを必要とする人に最適な料金体系で提供することが可能になり、インフラ整備が進めやすくなることも予想されます。

 デバイスに関しては、低消費電力化と熱対策がより重要になります。スモールセル用の通信設備は、電源や高周波デバイスなどを1枚の基板にまとめて実装したような形態になり、これをACアダプターでつなぐかたちになるといわれているため、ある意味で電子機器に近くなります。通信事業者は基地局の維持費を低減していく必要があり、こうした課題への対処がシェアに影響するでしょう。

 日本は早くから5Gの導入を宣言してきましたが、事業化スピードは決して速くはありません。海外では、AT&Tがタイムワーナーを買収するなど、5G導入後のコンテンツビジネス拡大を意識した体制作りも進んでいます。これから19年にかけて、3GPPのリリースを契機に「5Gでどのくらい顧客を獲得できるか」が実数として見えてくるようになるはずで、コンテンツやサービスを含めた商業化への競争がますます激しくなっていきそうです。
(本稿は、IHS Markit大庭光恵氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Technology アナリスト ジャパンリサーチ 大庭光恵、お問い合わせは(E-Mail : Mitsue.Oba@ihsmarkit.com)まで。
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