電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第306回

メモリー変調で2019年半導体設備投資は最大20%減


~しかして、マイコン、車載向けなど好調で2018年は9兆円保持~

2018/10/12

 中国スマホの絶不調、そしてアップルの新製品もイマイチという情勢が続いている。そしてまた、データセンターなどのクラウド投資もここに来て減速しており、これを契機に半導体メモリーの投資に暗雲がかかり始めた。

 具体的には最大メーカー、サムスンが西安工場第2棟および平澤工場第2棟への設備導入を最低でも6カ月、長ければ1年は凍結するという情報が飛び交っているのだ。そしてまた東芝も期待の岩手北上新工場の設備導入を見送るとの話もある。マイクロンは広島工場隣接に工場を新立地し、最大1兆円を投資するとの憶測もあったが、これも時期未定というかたちになったようだ。唯一、SKハイニックスのみがDRAMおよびフラッシュメモリーの投資を拡大しているが、全体としてメモリーの一気トーンダウンは免れようがない情勢となっている。

 一方で、これらの動きはDRAMおよびフラッシュメモリーの価格維持のために揃い踏みで投資ブレーキ、という見方もある。DRAMは年明けもほぼずーっと価格横ばいであるが、フラッシュメモリーは年初に比べて約3割下がっており、営業利益を確保するためには投資先送りという判断がメモリー各社に働いているのだ。

 しかしながら、ロジック系はここに来て調子が戻ってきており、インテルは2018年の設備投資を1130億円増額し、米国、アイルランドおよびイスラエル工場の大型増強を断行する。インテルの2018年の投資はトータルで約1兆7000億円となり、再び世界の半導体設備投資をリードする存在になろうとしている。また台湾TSMCも一時期は投資減額の話が出ていたが、車載、IoTがらみでファブレスからの発注が増えており、2018年投資は1兆円を大きく超えてくる見通しになっている。

 こうした状況から、サムスン、東芝などが投資を減速させても、2018年の世界全体の半導体設備投資は前年比ほぼ横ばいの9兆円を保持するのではないかとの分析が出始めた。ただ、2019年については最大20%減もありうるとの情勢であり、7兆円強まで大きく下がってくる可能性を否定できない。半導体製造装置各社にとっても、まさに踊り場状況を迎えたわけであり、今後の推移によく注意を払う必要があるだろう。

 ただ、これは一時的な変調にすぎないと筆者は考える。IoT革命はまだ始まったばかりであり、これから本番を迎えるためメモリー、AIチップ、各種センサー、マイコン、ロジックなどの投資が増えていくことに間違いはない。何しろ、IoTによって創出される新市場は1000兆円ともいわれており、このうち20%を半導体をはじめとする電子デバイスが占めるのであれば、200兆円の新たな巨大市場が待っていることになる。

 実際のところ、メモリーを除く半導体は、IoT革命を背景に相変わらず好調な伸びを続けている。2018年のマイコン出荷数は前年比18%増となる見込みで300億個を超えてくるだろう。パワー半導体も車載向けの引き合いが強く2桁成長の勢いであり、各種センサー半導体についても10%以上の伸びが続いている。ワイヤレス通信向けアナログも前年比23%増と絶好調なのだ。ファブレス大手のクアルコムは、台湾でマルチメディア研究開発センターとモバイルAIイノベーションセンターを2019年初めから運用開始する見込みだ。

96層積層プロセスを用いた3次元フラッシュメモリーを搭載したSSD(東芝)
96層積層プロセスを用いた
3次元フラッシュメモリーを搭載したSSD(東芝)
 つまるところ、今回のメモリー変調によりすべての半導体が総崩れになってくることはない。シリコンサイクルはやはり生きているというオピニオンが復活しているが、筆者は決してそう考えない。IoT革命を促進し、5Gに移行するためにはどうあってもデータセンターの投資は必須事項であり、メモリー投資の再開は時代の要請によりやらなければならないことだからだ。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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