電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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レベル4以上は集中制御が不可欠か


~変化する自動車用半導体業界~

2018/10/12

 完全自動運転の実現に向けて、日々進化を遂げる自動車業界。すでに欧州ではレベル3(条件付き運転自動化)を実現できる自動車が登場し、レベル4(高度運転自動)、レベル5(完全運転自動)の実現に向けた技術開発がさらに加速している。

 その実現のキーデバイスとなる半導体にも変化の波が押し寄せつつある。現在のレベル3車両には25個前後の電子制御ユニット(ECU)が搭載されており、「走る」「止まる」「曲がる」というクルマの基本性能をそれぞれ高度化してきた。今後レベル4、レベル5へ自動化が進むたびにECUの搭載数は増えると考えられてきた。

 だが直近では、パワートレインやADAS(高度運転支援システム)といった機能ごとにドメインを設定し、これを大規模コントローラーで集中制御することでECUの増加を抑え、システムをシンプルにしようとする動きが顕在化している。この大規模コントローラーの役割を担うのが、画像処理に長けたGPUや演算処理を得意とするCPUあるいはFPGAであり、これを製造するエヌビディアやインテル、クアルコム、ザイリンクスといった半導体メーカー、あるいはグーグルやアップルといったIT企業がGPU/CPUの大規模化、高性能化に取り組んでいる。

 こうしたGPU/CPUメーカーは、例えばエヌビディアならゲームやパソコン、クアルコムならスマートフォン(スマホ)といったように、すでに自動車以外の分野にしっかりとした事業基盤を持ったうえで、培ってきたアーキテクチャーを自動車へ展開しているのが特徴だ。

 そうした意味で、今後は中国メーカーも大規模プロセッサーの事業化に参入してくると考えている。なかでも、スマホ用プロセッサーの国産化に成功しているハイシリコンなどが台頭してくる可能性が高い。

 現時点では、レベル5を実現する半導体にどれだけのパフォーマンスが必要なのか、自動車メーカーですら明確な答えをまだ持っていない。だが、自動車用のGPU/CPUに対するパフォーマンス要求は年々上がっており、従来はECUが個別に担ってきた「走る」「止まる」「曲がる」までも制御の対象に加えそうな情勢にある。

 例えば、エヌビディアが実用化を目指しているロボタクシーには最先端のGPUが10個搭載され、完全自動運転を実現しようとしている。また、自動運転車の走行テスト・検証をシミュレーション上で行えるプラットフォームの提供も開始しており、数十億マイルが必要と言われる公道走行テストの負荷を減らす仕組みも構築した。

 現在のところ、GPU/CPUによる集中制御が本命なのか、クルマの基本性能をECUが個別に制御する方式が主流になるのか、答えは出ていない。最終的には「どちらがより安全、より安価なのか」によって決まると考えている。
 しかし直近では「レベル3には不要だが、レベル4以上に集中制御が不可欠ではないか。安全を担保するなら集中制御の二重化(大規模プロセッサーを複数搭載する)が必要」との声も聞かれる。集中制御方式には、部品点数を減らせるためコストを下げやすいという利点もある。

 こうした状況下で今後注目されるのは、これまで「走る」「止まる」「曲がる」という基本性能の高度化に注力してきた半導体メーカーがどのような戦略をとるかだ。具体的には、マイコンやセンサーを主力とするインフィニオンやSTマイクロ、NXP、ルネサスといったメーカーたちだ。

 インフィニオンやSTマイクロは、得意のセンサーやMEMS、パワー半導体で差別化し、GPU/CPUの集中制御が及ばないタイヤ周りなどの駆動部の高度化に集中すると考えている。「センサーフュージョン」という言葉があるように、センサーに紐づく各ドメイン内で存在感を強めていくのではないか。

 NXPは、クアルコムとの経営統合で集中制御~ECU個別制御まで一貫した事業体制を構築する予定だったが、破談に終わったことで戦略の見直しを迫られている。もともとセキュリティーマイコンなどに強いため、そこに差別化要素を見出すかもしれない。

 ルネサスは「走る」「止まる」「曲がる」の最先端を提供できているが、その先の展望がまだ描けていない。総額1兆円を投じてインターシルとIDTを買収したが、自動車分野だけに限定すると、大きなシナジーは期待しづらい。

 デンソーの今後に注目している。トヨタの電子部品事業を集約することに基本合意したほか、100%出資で半導体IPの開発・ライセンスを手がける(株)エヌエスアイテクスも設立した。一から大規模プロセッサーを開発するには莫大な資金がかかるが、どのレベルの半導体まで自社生産するのか、今後の展開に注目している。
(本稿は杉山氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Markit Technology プロジェクトマネージャー 杉山和弘、お問い合わせは(E-Mail: Kazuhiro.Sugiyama@ihsmarkit.com)まで。
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