商業施設新聞
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No.685

変わる宿泊特化型ホテル


岡田 光

2018/12/11

 関西エリア、特に大阪府や京都府で、新規ホテルの開発が加速している。これまでは、ビジネスユースをターゲットに据えた宿泊特化型ホテル、いわゆるビジネスホテルが中心であったが、最近はシティホテル、カプセルホテル、簡易宿所などバリエーションに富む。「ホテル阪神」や「ウェスティン都ホテル京都」といった既存の大型ホテルもリニューアルを敢行するなど、両府のホテル市場は、まさに百花繚乱の状況だ。この流れを受けて、宿泊特化型ホテルの形態も変わろうとしている。

 大阪での宿泊特化型ホテルは、これまでアパホテルやドーミーイン、ホテルユニゾなどが相次いで開業。その多くは新大阪、梅田、淀屋橋、本町といった、大阪メトロ御堂筋線沿いのオフィス街に出店していた。一方、京都ではアパホテルやホテルユニゾのほか、ダイワロイネットホテル、ザ ロイヤルパークホテルも宿泊特化型ホテルを開業。これに、相鉄フレッサイン、東急ステイ、ホテルリソルといった関東のホテルブランドも初進出し、積極出店を続けている。

 しかし、最近は宿泊特化型ホテル以外の新ホテル、具体的にはシティホテルやカプセルホテル、簡易宿所の開発も増えてきた。シティホテルでは大阪にマリオット・インターナショナルが日本初上陸の「Wホテル」を、京都には京阪グループが「ザ・サウザンド キョウト」の開業を計画。カプセルホテルでも大阪に本社を置くニッケが新規参入し、簡易宿所では京都に本社を構えるワコールが多店舗展開を図るなど、話題に事欠かない。こうしたホテル開発の多様化を受けて、宿泊特化型ホテルの形態も少しずつ変わりつつある。

Ludicoのホテル初出店となるレストラン「ikariya365」
Ludicoのホテル初出店となるレストラン「ikariya365」
 元来、宿泊特化型ホテルはレストランや宴会場を設けず、客室のみに特化することで出店コストを抑え、客室料金を安く設定して儲けを生み出すという仕組みであった。その安価な価格設定が、ビジネスユースの支持を得て、出張族を中心に利用が進んだ。しかし、この安さに国内の観光客が目を付けたことから、節目が変わる。大阪では「USJ」や「大阪城ホール」を訪れる観光客が、京都では三大祭り(葵祭、祇園祭、時代祭)や秋の紅葉見物に訪れる観光客が、こぞって宿泊特化型ホテルに宿泊。一時、出張で訪れるビジネスマンは、ホテルの予約が取れないという状況に陥った。これに加えて、関西国際空港のLCC就航により、訪日客が大幅に増加。彼らも宿泊特化型ホテルの価格の安さに魅力を感じ、利用を増やしていった。

 宿泊客が増える一方で、同業他社との競争も激しくなっているため、この宿泊特化型ホテルに変化をもたらす動きがある。そのひとつがレストランだ。前述のとおり、宿泊特化型ホテルはレストランを設けないのが定番であったが、例えば11月に開業した宿泊特化型アッパーミドルホテル「京王プレリアホテル京都烏丸五条」では、1階にレストランを誘致。地元で人気の「イカリヤ食堂」などを運営する(株)Ludicoがホテルに初出店し、朝食ビュッフェのほか、同社では初めてピザの提供も行う。また、12月7日に開業した「東急ステイ京都 新京極通」では、ケータリング専門店に朝食デリバリーを依頼するという、同社初の試みが行われている。

 これらに共通するのは、ホテル内でもその地域、例えば京都を肌で感じてもらいたいという、ホテル事業者の思いだ。そしてそれは、宿泊特化型ホテルの差別化につながる取り組みでもある。安い客室料金や交通アクセスの良さに目を奪われがちな宿泊特化型ホテルであるが、時代の流れとともに、その形態は変わりつつある。
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