電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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ハイテク制裁は止まらない


~米中摩擦 米国の本気度~

2019/2/15

 2019年が明けてすぐ米国に赴き、米国の政府高官やシンクタンクなど様々な方と、中国との今後の関係について意見交換する機会を得た。すべてをつまびらかにすることはできないが、米国はかなり詳細に中国のことを調べ上げ、本気で中国のハイテク化、いわゆる「中国製造2025」をスローダウンさせるつもりだと強く感じた。

 米国は、トランプ政権以前から中国の動きを丹念に調査してきた。それを担っているのが米国通商代表部(USTR)だ。中国企業との合弁会社設立の強要、海外投資の制限、中国政府の審査や許認可による技術移転の強制、バックドアをはじめとするサイバー攻撃など、WTO加盟国として許されるべきではない数々の「動かぬ証拠」を収集し、これをもとに特定企業への制裁を科し始めた。

 その最たる例が、米マイクロンのDRAM技術を盗用したとして半導体製造装置の輸出を禁じられ、工場立ち上げが頓挫した半導体メーカーの福建省晋華集成電路(JHICC)だ。

 米国は18年8月、国防権限法2019(NDAA)を成立させ、国家の安全保障を理由に情報システムの調達企業からファーウェイ、ZTE、ハイテラ・コミュニケーションズ、ハイクビジョン、ダーファ・テクノロジーという中国企業5社を排除した。銀行取引も停止するなどして、こうした「軍事」に直結する企業を国際競争から排除し、ハイテク企業の育成を阻止するのが狙いである。

 3月1日に米中の「90日協議」の結論が出る。これに関して現時点では、関税を掛け合うような貿易摩擦については中国側の譲歩によって終息に向かうが、中国ハイテク企業に対する米国の攻撃は止まらない、それどころか、さらに激化すると予測している。制裁対象となる中国企業の数はさらに増える可能性が高いと考えている。

 こうした攻撃によって、特定の企業や産業に悪影響が及ぶことは避けられない。例えば「ファーウェイへの制裁で5G通信の普及が遅延する」といった可能性がある。なかでも、半導体をはじめとするエレクトロニクス産業に対しては、特にここ半年、大きな影響が及び、一部では現在よりも厳しい景況感に晒されるかもしれない。JHICCやZTEのように、米国が確たる証拠をつかんだ特定の中国企業だけを叩くのは、経済への悪影響を最小限に抑えるための戦略であり、配慮だともいえる。

 JHICCへの措置に見るように、現在の制裁は主に「製造」を対象にしているが、今後は「知財」に対する圧力が強まってくることも考えられる。半導体に関して言えば「設計」分野だ。仮に、もし設計分野に制裁が科せられるようなことになれば、中国の半導体国産化という目標はは相当スローダウンすることになるだろう。

 一連の米中摩擦は、一時的に日本をはじめとする周辺国に好影響を及ぼす。中国が米国から調達できなくなった部材を日本や台湾などから調達しようとするからであり、すでに一部で事例が出始めている。米国の制裁によって中国はハイテク分野の育成に一層拍車をかけるだろうが、国産化までにはかなりの時間を要するためだ。

 一方で中国は、リーマンショック直後と同様に、国内で様々な景気刺激策を打ってくるし、すでに打ち始めている。だが、経済成長率が鈍化し、これ以上のインフラ投資が難しく、かつてほど外貨が稼げなくなっている今、景気刺激策でリーマンショック後のようなV字回復を実現するのは難しいだろう。

 このように、米中貿易摩擦に端を発して足元の世界経済は停滞感が強いが、20年は好転して「いい年」になると期待している。中国での製造から撤退し、他国へ移った工場の立ち上げが活発化してくることや、現在は絞りに絞っているデータセンターや半導体メモリーへの投資回復が見込まれるためだ。現在の「抑制された投資マインド」が解放され、半導体や電子部品の需給も大きく改善すると考えている。
(本稿は、南川氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Markit Technology 日本調査部ディレクター 南川明、お問い合わせは(E-Mail: Akira.Minamikawa@ihsmarkit.com)まで。
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