電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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買収より協業を優先すべき


~ルネサスに求められるもの~

2019/3/22

 2018年第4四半期から中国を中心に新車の販売にブレーキがかかっていることを踏まえ、当社では車載用半導体市場の伸び率も19年は1桁台にとどまるとみている。だが、自動運転や電動化に向けた投資が止まることはなく、ベースアーキテクチャーの統一化やプラットフォームの共用化に向けた動きがさらに進展すると考えている。

 当社の予測では、レベル3以降の自動運転車両は30年に世界全体の10%、1000台前後に達するとみているが、この半分はウーバーやウェイモといった「自動運転車両を用いるサービス事業者」が購入すると考えている。こうしたサービス事業者は、利用者の情報を幅広く得るために、一般ユーザーよりも高機能・高価な車両を購入する傾向が強いためだ。

 一方、このような業務用の自動運転車両では、ベースアーキテクチャーの統一化やプラットフォームの共用化が図られやすい。価格を抑制するためECUの統合を進めたり、そのためにマイコンに代えて統合SoCを用いたりするケースが増える。すでにアウディは、ADAS(先進運転支援システム)を高度化するため、レベル3の新型「A8」にセントラルドライバーアシスタンスコントローラー「zFAS」を搭載しているが、これはインテル傘下のモービルアイの「EyeQ3」とアルテラのFPGA「Cyclon V SoC」(LiDARやセンサー情報の処理)、エヌビディアのGPUチップセット(カメラ情報の統合)、インフィニオンのマイコン「Aurix」(走る・曲がる・止まるの制御)を組み合わせたもので、今後こうした組み合わせがプラットフォームとして自動運転車に採用されていく可能性が高い。

 こうしたなか、車載マイコン大手のルネサス エレクトロニクスが合計で2カ月間、工場を停止することが明らかになった。自動車に限らず産機向けの需要軟化も一因なのだろうが、熊本地震以降に在庫を多めに持つようにしたこと、低採算製品のEOL(End Of Life)に時間を擁していること、ファンドリー委託先であるTSMCに一定量を発注し続けなければいけないこと、なども停止の要因になっている。

 だが、工場停止措置の最大の要因は、米IDTの買収にあるのではないかとみている。金融機関から買収資金を融通してもらうためには一定の利益率を維持する必要があり、これを捻出するため、工場の停止にとどまらず、人員や給与の削減といったコスト削減策を打たざるを得ないのではないだろうか。

 ここ数年のルネサスの経営戦略はどうなのだろうか。1500億円の増収効果にもかかわらず、総額1兆円でインターシルとIDTの買収を決断したが、車載分野での上積みは小さかった。新製品発表の機会も減り、ADASや電動化に対する戦略が見えづらくなった。先に買収したインターシルとのシナジーも感じられず、製品戦略が融合したようには見えていない。

 デンソーがインフィニオンに出資した背景には、マイコン、センサー、アナログ、パワーと半導体製品を幅広く取り揃えているインフィニオンが欧州自動車メーカーのトレンドを深く理解していることがあると考えている。このようなインフィニオンの製品ラインアップに肩を並べるべく、ルネサスもインターシルとIDTの買収に踏み切ったのかもしれないが、とにかく早くシナジーを出すことが重要である。

 ルネサスは元来、スマートフォンやメモリーのような市場に直結したボリュームビジネスはしておらず、V字のような急激な回復は難しい状況かもしれない。

 こう考えると、IDTの買収は諸条件の状況に応じて、中止することも考慮した方がよいかもしれない。先述のzFASでAurixをルネサス製マイコンで代替するような提案があるのか定かではないが、ドメイン側のマイコン需要を確実に確保しつつ、自動運転の心臓部に入っていくには、IDTの買収よりも他社との協業が優先されるべきだ。日本版zFASを作るようなアライアンスがあっていいのではないか。
(本稿は、杉山氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Markit Technology プロジェクトマネージャー 杉山和弘、お問い合わせは(E-Mail: Kazuhiro.Sugiyama@ihsmarkit.com)まで。
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