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No.703

フルマラソン・リポート


若山 智令

2019/4/23

 仕事とは直接関係ないのだが、人生で一度くらいフルマラソンを走りたいと思っていた。そしてそれを達成する時がきた。前回のこのコラムで大会直前のことを記したが、去る3月17日、筆者は「板橋シティマラソン」の42.195kmを完走し、晴れてフルマラソンランナーの仲間入りを果たした。緊張のスタートから、余裕と感じた10km、「ちょっとキツイな」の20km、「もう限界」の30km、「限界突破」の40km、人の優しさと温かさに触れた42.195kmをリポートする。

 大会当日、心配された天気も曇り空を保ち、絶好のとまではいかないものの、マラソン向きの日だった。会場へ向かう電車内には、同じ大会に出場するランナーの姿が数多く見られる。案の定、会場の最寄り駅は人でごった返している。おそらく、この駅にとって1年で最も利用者数が多い日だろう。改札を出ると、すぐに友人と合流。友人は「あんまり練習してないや」と謙遜しつつも、明らかに仕上がった体つきである。まるで学生がテスト前に「全然勉強してないわ」と言いながらも陰でめちゃくちゃ努力するそれと同様だ。

 会場までは徒歩で15分ほど。意外と遠いのでいいウォーミングアップになった。受付を済ませ、いざスタート、といきたいところだが、申告した予想タイムを遅く設定していたため、スタート位置は遥か彼方にある。そうこうしているうちに号砲が鳴る。先頭チームはスタートを切った。実際に筆者がスタートしたのは、号砲から20分後だった。

ここまでは順調だった
ここまでは順調だった
 序盤は友人と並走。練習である程度距離を走っていたので、余裕を持って走れた。制限時間はたっぷりあり、最初の10kmは体力的にも時間的にも難なく通過。このままのペースで行ければと思いながら15、16、17kmと歩を進め、折り返し地点の21kmでそれは突然やってきた。

 シンプルに足が痛い――。それも予想以上の痛さで、練習でもなったことはないのに、なぜ今なるのか、そうなるなら「早めに言ってよ」という感じである。仕上がっている友人に悟られまいと走り続け、何とか30kmまできたが、気持ち的にはもう限界である。練習では最長でも30kmまでしか経験がなく、ここからは未知との闘いとなる。いよいよ走るのもキツくなり、歩く時間も多くなってきた。何とか歩かずに完走、と思っていたスタート前の自分と別れを告げ、ここからはただ時間内の完走を目指した。

ゴールが見えた時は本当に感動した
ゴールが見えた時は本当に感動した
 35km過ぎから40kmまでは、もう少しでゴールという応援ですら重荷に感じた。友人もキツそうではあるが、筆者ほどではないと思う。ここまで一緒に走ってくれたことに感謝しつつ、ここからはそれぞれで走ろうという言葉も出たが、そこは小学校からの腐れ縁ということで、最後まで一緒に完走を目指そうとなった。そして自分の限界を突破し40kmを迎えた。残る2kmはあまり記憶がないほど、いっぱいいっぱいだった。もっと練習しておけばよかったなどの後悔は一切なく、ただただ、あと2km走れば終わるということだけを考えて足を進めた。

 いよいよゴール間近。付近はスタート時にもそこにいた応援の人が同じ場所で同じ応援をしてくれているし、走り終わった人たちも「がんばれ」「もう少し」と、様々な声を掛けてくれる。この時はさすがに「マラソンっていいものだな」と感じた。まさに人の優しさ、温かさに触れた瞬間である。そしてゴール。確かに時間はかかったし、満身創痍だ。ただ、それに勝る満足感と達成感が押し寄せてきた。その後、移動や銭湯を済ませ、足を引きずりながら入った店で飲んだビールは格別だった。当然、友人とその日のマラソンの道のりを振り返り、会話に花が咲いた。

 1年かけて準備してきた、個人的な平成最後のビッグイベントが終了した。タイムも何もかも全然満足できなかったが、次に来る令和は、フルマラソンのない平和な時間を過ごしたい。
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