電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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コンテナ化や自社半導体で利便性向上


~拡大するクラウドサービス~

2019/5/17

 5G時代の到来を控え、今後も拡大を続けることが確実なデータセンターおよびクラウドサービス。当社の調べによると、2018年におけるオフプレミスベースの全クラウドサービス売上高は約2000億ドルだが、19年には約2400億ドル、23年には約4100億ドルへ拡大すると予測している。

 クラウドサービスは、(1)インフラを提供するIaaS(Infrastructure as a Service)、(2)アプリケーションの実行環境を提供するCaaS(Cloud as a Service)、(3)Webサーバーなどのミドルウエアを含むプラットフォームを提供するPaaS(Platform as a Service)、そして(4)アプリケーションソフトウエアまでをも提供するSaaS(Software as a Service)と、4つのカテゴリーに分類できる。

 (1)~(4)の違いは、クラウドベンダーがサポートするソフトウエアの差にある。例えば、(1)はクラウド環境のみが提供され、ソフトはユーザー自身が開発・用意する必要があるが、(4)ではクラウド環境からソフトまですべてをクラウドベンダーが提供している。

 こうしたクラウド市場で突出した存在感を放っているのが、アマゾン、グーグル、IBM、マイクロソフト(MS)の4社だ。(1)では、AWSを展開するアマゾンが世界シェア4割以上と圧倒的なシェアを誇る。だが、意外にも、(1)~(4)を合わせた市場ではMSがアマゾンをわずかにかわして首位の座にある。

 当社では、これら4つのカテゴリーで今後は(2)と(3)の伸びが大きいと想定しており、なかでもビジネスシーンで高いシェアを持つ「Office 365」を擁するMSの成長余力は他のクラウドベンダーを上回るとみている。

 データセンターを支える半導体市場に目を移すと、プロセッサー市場ではインテルの「Xeon」が圧倒的なシェアを維持している。AMDが追撃を図っているが、買収したアルテラのFPGAを組み合わせた電力効率の最適化や性能向上、X-Pointメモリーを採用したシステム化などに一日の長があり、今後もそう大きくシェアを落とすことはないだろう。

 一方で、インテルががっちりサポートしているMSを除き、近年はクラウドベンダー自身がプロセッサーを自社開発するケースが増えている。マシンラーニングに特化したグーグルのTPU、アマゾンのGravitonなどがその代表例。インテルも先ごろ10nmプロセスを採用したFPGA「Agilex」を発表した。

 当社では、インテル(もしくはAMD)製CPUに組み合わせるエヌビディアなどのコプロセッサーの採用比率が高まるとも予測している。現在の採用比率はわずか2%にとどまっているが、22年には15%まで高まる。これにより、翻訳や画像認識、テキスト化といったクラウドサービスの性能をさらに高め、AIの質を向上させる。一方で、消費電力の削減がコプロセッサーを採用するうえで重要テーマの1つになっている。

 クラウドサービスに話を戻すと、今後を展望するうえで(2)の動向に注目している。その理由は「仮想化」にある。つまり、コンテナの実装によって、従来はオンプレミス(自社管理のクラウド設備)で管理していたデータをオフプレミスに移行しやすくなる、またはオンプレミスとオフプレミスを組み合わせ、あたかも同じ環境下で情報を管理しているようにみせるハイブリッド仮想化が実現しやすくなるためだ。

 コンテナ実装は、グーグルがその全ソフトをコンテナ化していることで大きく認識され、これを自動的に実行・管理(オーケストレーション)するオープンソフトKubernetes(クーバネティス)がリリースされて普及が加速している。クーバネティスによって複数のコンテナをオーケストレーションできるためで、これによりマルチクラウド(複数のクラウドベンダーを活用する)化やハイブリッドクラウド(オンプレミスクラウドとオフプレミスクラウドを併用する)化がしやすくなるといった利点がある。

 こうして見ると、オフプレミスのクラウドベンダーは、ソフトや自社製半導体の開発でユーザーの利便性をどんどん向上して、オンプレミス市場を徐々に侵食しつつある。日本はオンプレミス市場が比較的大きいといわれているが、果たして今後、米国クラウドベンダーの攻勢に対抗していけるのだろうか。
(本稿は、前納秀樹氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Markit Technology コンサルティング・ディレクター 前納秀樹、お問い合わせは(E-Mail: hideki.maeno@ihsmarkit.com)まで。
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