電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第344回

1人あたりGDPで日本をほぼキャッチアップした韓国の騒動は少し問題


~黒やグレーのシックなお姉さまが歩くソウルの街の美しさが泣いている~

2019/8/2

 「2018年の韓国の1人あたりGDPは、3万1300ドルまで伸長したのだ。いよいよ日本の3万9300ドルに近づいており、ほぼ一流国の仲間入りを果たしている。ああそれなのに、昨今の反日の嵐が吹き荒れる有様は、ちょっと嘆かわしい」

韓国ソウルのレストランにあったエレガントな女性のポスター
韓国ソウルのレストランにあった
エレガントな女性のポスター
 先ごろ、筆者が親しくする経産省の幹部と有楽町の屋台風の居酒屋で飲んだ折に聞いた言葉である。以前にも指摘したことだが、韓国の首都であるソウルの街を歩けば、いかにエレガントな街に変貌したかに驚かされる。街を歩く女性たちはみな美しく、黒やグレーの単色系のスーツをきっちりと着こなしておられる。ちなみに、経済の豊かでない国の街を歩けば、赤、緑、黄色などの極彩色の衣装をまとった女性たちがワーワーと騒いでおられる。韓国もまた大昔は派手な色の衣装を着た女性たちが多かったのだ。つまりは経済と民度の高さは女性のファッションに現れる、というのが筆者の見解なのだ。

 それはともかく、日本政府による韓国に対する輸出規制が始まった時から、韓国はまさにパニック的な騒動になっていると聞く。しかしてよく分からないのは、文政権がここにきて輸出規制のことを平気で韓国制裁と決めつけていることだ。なおかつ、最近では韓国侵略とさえ言っているという報道には驚かされるばかりだ。正直に言って、政治問題が背景にないとは言わない。しかしながら、この輸出規制は輸出禁止ではないのだ。すなわち韓国の動脈線となっている半導体の生産に必要な3つの材料は、必要な手続きを踏めばちゃんと手に入る。

 ところが、韓国のジャーナリズムの大半は「日本による韓国経済の叩き潰し」「従軍慰安婦、レーダー照射、徴用工問題など、一連の日韓関係を背景にした嫌がらせ」「どうしても参議院選挙で勝ちたい安倍政権の姑息なアピール」など、ひたすらに日本を徹底的に攻撃する論調に満ちている。もっとも、韓国の記者連中においても、心ある人たちは「こうした事態に立ち至ったことを、韓国政府も深く反省しなければならない」と冷静な分析をしているケースもある。

 「韓国の場合、半導体に代表される輸出産業が国を支えていることは間違いないだろう。とりわけ半導体の輸出はその中核にあるわけであり、もし韓国の多くの半導体工場が今回の輸出規制により止まることがあれば大打撃になるという指摘は当たっている。しかして何回も言うが、半導体材料が全く手に入らないわけではない。そしてまた、あらゆる手を使って、材料調達ができる工夫を韓国メーカーもし始めている。そうした懸念は事実上はあまりないといって良いだろう」(経産省幹部)

 工業生産額がGDPに占める割合(2017年)を見ても、韓国は35.9%もあり、突出して高い。つまりはモノづくりが韓国経済を大きく支えているのだ。ちなみに、この割合については日本も29.1%とやはり高く、イタリア21.5%、米国18.2%と続いている。韓国のモノづくりの現状は、得意とする自動車は絶不調であり、鉄鋼、造船なども元気がない。これはひたすら米中貿易戦争における中国経済の低下が影響している。とにかく韓国の輸出は圧倒的に中国向けが多いからだ。

 ところで、今回の日韓の最悪な状況に対して、喜んでいる人たちもいる。サムスンやSKハイニックスのメモリーの生産が止まれば、万歳三唱をするのは実のところ米国、台湾、日本なのだ。

 韓国は世界最強のDRAM生産国であるが、どっこい米マイクロンは日本の東広島に新工場を立ち上げて、増産体制を整えている。「来るなら来い」とばかりにマイクロンは考えているはずだ。そしてまたNANDフラッシュメモリーについては、サムスンの最大の敵が東芝/WD連合であり、世界トップシェアを争っている。もしサムスンの生産がいったん停止するなり鈍化することがあれば、東芝四日市工場および北上工場は、これまた「いつでも一気増産し、世界のサプライチェーンを守る」と息巻くことだろう。そしてシリコンファンドリーでサムスンと敵対する台湾TSMCも、有利な状況になるだろう。

 韓国政府はあろうことか、米国のトランプ大統領に日韓問題の仲裁をお願いしたというが、事実上はねつけられている。韓国政府が今回の輸出規制によって世界の半導体のサプライチェーンがズタズタになると主張するが、米国、台湾、日本、ドイツなど主要国の半導体企業は決してそうは見ていないということを、文政権はしっかりと認識すべきだと思えてならない。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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