電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第346回

香川県丸亀の三菱電機の受配電システム製作所はすごいIoT


~真空バルブ・真空遮断器の新工場はサプライズの生産ライン実現~

2019/8/16

 香川県丸亀と言えば、関東の人たちはすぐ「丸亀製麺」を想像するかもしれない。しかして、あれは全く丸亀の地場産のうどんではないのだ。筆者の見るところによれば、丸亀の最大の名物は、一鶴の骨付き鳥であろう。ちょっとやそっとのうまさではない。少なくとも、人生最高の鳥肉であったと思う。ちなみに、関東方面では横浜でしか食べられない。

先端IoTを立ち上げた三菱電機受配電システム製作所
先端IoTを立ち上げた
三菱電機受配電システム製作所
 それはともかく、丸亀には三菱電機の新たな看板とも言うべき工場が存在する。それが、受配電システム製作所であり、国内で断然のトップシェアを持つ真空遮断器、および真空バルブを量産している。2018年8月に本格生産を開始した新工場は、IoTを徹底的に活用した生産革新を図っており、約44億円を投入したファクトリーである。

 「新工場のIoTコンセプトは、三菱電機が2003年から提唱しているFA技術とIT技術を統合することで、開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを圧倒的に削減するものだ。生産現場のみえる化を3つの観点で捉えており、企業価値向上を徹底支援するものなのだ」

 こう語るのは、三菱電機の受配電システム製作所で所長の任にある野間元暢氏である。野間氏は、兵庫県西宮生まれ、関西大学大学院工学研究科を卒業し、1988年4月に三菱電機に入社する。2002年4月からは一貫して受配電システム製作所のあらゆる部門に勤務し、設計、開発をただ一筋に立ち上げてきた人だ。

 さて、この真空バルブ・真空遮断器の新工場は、アーキテクチャーとして、3つのみえる化を図っている。それらは、(1)見える化(可視化)=生産現場のデータをリアルタイムに収集、(2)観える化(分析)=FAで収集したデータを1次処理し(エッジコンピューティング)ITシステムへシームレスに連携、(3)診える化(改善)=ITシステムによる分析・解析結果を生産現場にフィードバック、である。

 つまりは、人・モノ・設備のあらゆる生産現場の情報をつないで一本化してしまう。シンプルに言えば、ITシステムがあって、それにかぶさるようにしてエッジコンピューティングがあり、これがそのまま生産現場にすべて行き渡っているというイメージを思い浮かべていただければよい。

 「この新工場には、当社のスマート中低圧直流配電ネットワークシステム『D-SMiree』を当社工場として初めて採用した。他に、太陽光発電やLED照明、空調機(放射空調方式)など最新の当社製省エネ機器を導入し、消費エネルギーを削減するなど、地球環境に配慮している」(野間所長)

 当然のことながら、生産情報一元化を図るためにビッグデータ基盤を構築し、改善サイクルを高速化している。営業情報、日程情報、購買情報、設計情報、組立・試験実績、出荷実績などのデータを収集し、受注から生産計画、部材手配、開発設計、組立、試験、出荷に至るまでのサプライチェーンマネジメントに革新的なファクトリーシステムを導入しているのだ。

 この現場を見せていただいたが、例えばオペレーターの人が部材をキッティングする際、間違ったものを選んでしまった場合に、RFIDがこの誤作業を見分けて、振動でアラームし、オペレーターのウエアラブル端末に伝える、という工夫には驚かされた。また、ばらつき対応、ちょこっと停止することの削減などには力覚センサー、2次元ビジョンセンサーなどの各種センシング技術を駆使し、安定稼働を図っている。もちろん、複数台のロボットによる協調動作にも注力している。人の手の感覚に近いロボットハンド技術を導入しているため、繊細な人の作業を自動化することに成功している。人の目のように見て、位置や向きを判断し、あたかも人が合わせ込みをするような作業を自動化することにも成功している。正直言って筆者は、これだけのフルIoT生産システムを導入した工場を見たことがない。

 「国内のデータセンターの投資回帰が始まっているため、今回立ち上げているこの新工場は、大きくこれに貢献することだろう。三菱電機グループのIoT革新のモデル工場として、これを立ち上げたわけであり、各グループの工場に様々なノウハウを提供していきたい。驚くべきことに、この新工場には、年間2000人が視察に来られる。やはり、人不足であり、コスト削減のミッションがあり、そしてまた環境に優しいというキーワードを実現したいと思っている企業はこんなにもいるのだ、との思いが強くなってくるばかりだ」(野間所長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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