電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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『IoT最強国家ニッポン』出版


~摩擦への懸念とIoTへの期待~

2019/10/4

■米中摩擦、次の一手は

 長期戦やむなしの米中貿易摩擦。米国はこれまで、ZTEやファーウェイといった通信機器メーカーをはじめ、ハイテラ・コミュニケーションズ、ハイクビジョン、ダーファ・テクノロジーといった監視カメラや映像系のメーカーに対して制裁や取引規制を発動し国際競争から排除しようとしてきたが、次のターゲットにはスーパーコンピューター(スパコン)が挙がりそうだ。

 中国はすでにスパコンの国産化に成功し、世界のスパコンランキングで一時首位に立つコンピューターが登場するなど、常に上位に名を連ねるようになっているが、米国はこれに関する知財を丹念に調査しているようだ。米国が打つ次の一手に注目が集まる。

 ただし、関税の応酬については、どこかで終息に向かうとみている。すでに中国経済の減速が米国企業の業績にも影響を及ぼし始めている。景気の落ち込みが政権に及ぼすダメージは、中国よりも米国の方が大きいはずだ。

■韓国企業を悩ます文政権

 先日、ある韓国大手企業の幹部集会に招かれ、意見を求められた。日本政府が発動した半導体材料3品目(フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素)の輸出管理厳格化をはじめとする政策について、今後の方向性やその対処法について意見を述べてほしいという趣旨だったが、そこで垣間見たのは「文政権のかつてない強硬な政治姿勢に困惑している韓国企業の姿」であった。

 韓国企業は、日本の政策次第で今後安定的に材料が調達できなくなるのではないかと心底心配していると同時に、これまで共に材料を開発してきたという歴史も含め、取引を継続したいと切実に願っている。しかし、文政権に対しては意見を言えない、聞いてもらえない状況にあるという。文政権は、その成り立ちからして財閥に厳しく、「サムスン電子 李在鎔副会長の再逮捕すらありうる」との憶測まで出ている。

 日本政府は、すでに韓国への輸出を案件に応じて許可しており、今のところ日本企業のビジネスへの影響は小さいが、話がこじれて長期化すればするほど影響が大きくなる。政府間交渉だけに頼らず、早期の事態収拾に向けて企業も努力すべきだろう。

■IoT関連の新書発刊

 このほど、講談社+α新書から『IoT最強国家ニッポン』を出版した。レガシー半導体、電子部品、モーター、電子素材という4つの主要技術を持つ日本は必ず復活を遂げるという中身になっており、ぜひご一読いただきたい。

 これまでのエレクトロニクス市場では、電子機器は「所有」するものであり、これらを購入できる所得の高い人の消費によって成長が支えられてきた。こうした中間所得者はこの20年間で約30億人まで増えたが、そろそろ頭打ち。成長の源泉を従来と異なるところに求めなければならない。

 本書がテーマとするIoTは、インフラに近く、新しい機器を生み出すというよりも「経済活動の無駄を省き効率を高める」「シェアする」「エコ」がキーワードになる。人口増加、高齢化、都市への人口集中という3つのメガトレンドによって生じる様々な問題や課題を解決できる可能性がIoTにはある。

 当社では、IoTによって削減できる無駄は世界で360兆円にも及ぶと試算している。これまで電子機器がいくら進化しても、仕事の効率こそ上がったが、仕事の量は減らなかった。だが今後は、あらゆるものを削減してくれる、言い換えれば「時間を作ってくれる」テクノロジーにこそ価値があるのであり、その代表がIoTであり、AIであり、ロボットである。

 本書でそうした未来に触れ、希望を抱いていただけるなら幸いだ。
(本稿は、南川氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




IHS Markit Technology 日本調査部ディレクター 南川明、お問い合わせは(E-Mail: Akira.Minamikawa@ihsmarkit.com)まで。
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