電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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FPD部材「新技術対応が重要」


~「第38回 ディスプレイ産業フォーラム」開催(2)~

2020/1/10

上席アナリスト 宇野匡氏
上席アナリスト 宇野匡氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、1月30~31日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第38回 ディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では注目の講演内容を登壇アナリストに聞く。第2回は、「FPD部材市場&コスト分析」を担当する上席アナリストの宇野匡氏に主要テーマを伺った。

 ―― 2019年は液晶パネル価格が大幅に下落しました。
 宇野 年末時点でオープンセルの価格が65インチで150ドル、75インチが300ドルを切るまでに下落し、キャッシュコスト割れの状況にある。以前から懸念されていたことではあるが、供給過剰の影響が前倒しで押し寄せてきた。
 一方で、ここまで下がるとテレビに割安感が出て、大型テレビの販売はそれなりに堅調だ。出荷台数が大きく伸びることはないが、平均サイズの大型化につながるため、部材メーカーにとって重要な「需要面積の成長」は続いている。

 ―― 20年の需要面積成長率をどう見ていますか。
 宇野 テレビ用だけに限れば、10.5G液晶工場の立ち上がりで65インチ以上の出荷が増えることが寄与し、年率10%強の成長が見込まれる。これによりテレビの平均サイズは2.6インチ大型化する見込みだ。しかし、これはある意味で需要の先取りでもある。テレビの大型化は限界に近づいており、22年以降には面積成長が望めなくなる可能性がある。

 ―― 部材市場の注目点について。
 宇野 日米欧の先行メーカーは堅実に利益を上げており、素材になればなるほど圧倒的に強い状況は変わっていない。汎用品での価格勝負を避け、高付加価値品で差別化できており、この流れがさらに強まる。
 例えば、フィルム関連では車載用に高機能品が続々と登場している。ヘッドアップディスプレーの映像を投射できる光学特性を備えた中間膜を持つ合わせガラスが登場しているほか、フロントガラスにディスプレーの映像が映り込むのを防ぐ反射防止フィルムや、ピアノブラックの車室内とマッチする低反射フィルムなどが採用されており、高価でも売れている。

 ―― 液晶から有機ELへシフトが進みそうですが、部材市場に影響は。
 宇野 有機ELは、スマートフォン(スマホ)市場では成功したが、IT用やテレビ用では液晶との価格差がさらに大きく開き、どこまで普及が進むかまだ見通せない。
 一時的に供給がタイトだったCOF(Chip on Film)だが、ファーウェイ問題で新規開発案件が減少したことに加え、他のスマホブランドも最近ではCOG(Chip on Glass)で十分と考えるようになり、需給環境が以前の状態に戻っている。20年はテレビ向けの需要だけが牽引役だ。

 ―― ドライバーICに関してはいかがですか。
 宇野 5G関連で半導体市況が回復しつつあり、すでにファンドリーのキャパシティーを心配する声が出始めている。安価なドライバーICはファンドリーが積極的に生産したがらないため、需給にタイト感が強まってきそうだ。

 ―― 「新技術への対応が大事」ですね。
 宇野 1つ注目しているのは、スマホのアンダーパネルカメラだ。ディスプレー直下にカメラを配置し、カメラに重なる部分の画素だけ低解像度に作り込んで光の透過率を上げるというもので、これを使えば現在カメラを搭載しているノッチやホールがなくなり「全面がディスプレー」というデザインが実現できる。
 この技術は、バックライトを要する液晶では実現できず、有機ELならではのもので、採用が増えれば有機ELの搭載率を押し上げることになる。透過率を高くするため基板には透明ポリイミドが必須だが、ガラスがいいという話もあり、ガラスであればフレキシブル有機ELを使わずにリジッド有機ELで十分だという意見もある。
 どの流れになるかで、スマホにおける液晶と有機ELの搭載率や、有機ELでもフレキシブルかリジッドかの採用に影響するため、これからの技術動向を注視している。

(聞き手・編集長 津村明宏)



「第38回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : mitsuhiro.kato@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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