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九州大学 名誉教授 尾形裕也氏


東大病院、シンポジウム・病院「再編統合」時代の一歩先を行く医療経営(1)
尾形裕也氏が「地域医療構想の実現に向けて」を講演、特異な日本の医療提供体制

2020/2/4

尾形裕也氏
尾形裕也氏
 東京大学医学部附属病院は、~経営のできる大学病院幹部養成プログラム 第2回特別公開シンポジウム「病院『再編統合』時代の一歩先を行く医療経営」を12月4日に開催した。本紙では、講演した尾形裕也氏(九州大学名誉教授)、本多麻夫氏(埼玉県保健医療部参事・埼玉県衛生研究所所長)、石川ベンジャミン光一氏(国際医療福祉大学教授)の講演内容をシリーズで紹介する。

 シリーズ第1回は、尾形裕也氏の講演「地域医療構想の実現に向けて」の連載2回のうちの1回目となる。

 尾形裕也氏は、1978年から2001年にかけて厚生省、OECD、ジュネーブ代表部、千葉市などに勤務。2001年から2018年は九州大学および東京大学において、医療経営、健康経営の教授を務めた。厚生省時代は、老人保健法や国民健康保険法の改正などに従事し、国保を支え、皆保険体制を支える改正に尽力した。現在進行中の厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」の座長でもある。
 尾形氏は、(1)全体の展望、(2)近年の医療・介護政策の動向、(3)2025年ビジョン、(4)地域医療構想の策定及び推進、(5)再検証要請対象医療機関の公表、(6)地域医療構想に関する私見、(7)新たな介護保険施設の創設の順に講演を進めた。このうち今回は、(5)までの内容を取り上げる。

 (1)全体の展望では、超長期展望として、人口は1500年の1000万人から1700年の3000万人へと推移し、1920年に5596万人となった。その後2010年の1億2806万人をピークに減少をたどり、2110年には4286万人(出生中位のケース)に達する推計を示した。超長期で考えると「1900~2100年の200年間は、日本の歴史上でも極めて異常な時期」であり、「日本の経済社会は、急勾配の山を上り詰め、今まさにそこから下ろうとしているところ」であることから、「『未来は過去の延長線上にない』と認識し、旧来の陋習にとらわれない新しい発想が必要」である。また、「医療・介護の在り方は急勾配の山を下るに際し、最重要ポイントの1つ」と指摘した。

 また、尾形氏が示した表「主要な医療資本投入状況の国際比較(OECD Health statistics 2019)」を見ると、人口1000人当たりの病院病床数は、日本が13.05であるのに対し、他国は0.19倍から0.61倍にとどまっており、日本の人口当たりの病床数が多いことがわかる。また、人口100万人当たりのCTは、日本の111.49に対し、他国は0.08倍から0.38倍、同じくMRIは、日本の55.21に対し、他国は0.13倍から0.68倍となっている。

 続けて示した表「主要国との医療労働投入状況の国際比較(OECD Health statistics 2019)」を見ると、病床100床あたりの▽臨床医師数(人)/臨床看護職員数(人)/人口1000人当たり臨床医師数(人)/人口1000人当たり臨床看護職員数(人)は、▽日本18.5(データ16年)/86.5(同)/2.43(同)/11.3(同)、▽カナダ105.1/395.2/2.65/10.0、▽フランス52.8/175.3/3.16/10.5、▽ドイツ53.1/161.6/4.25/12.9、▽イタリア125.4/182.3/3.99/5.8、▽イギリス110.8/308.5/2.81/7.8、▽アメリカ93.4(データ16年)/427.6(同)/2.61/11.7となっている。人口1000人当たりの医療スタッフ数はほぼ同水準であるが、病床100床当りの日本の医療スタッフ数と比べ、他国は2.85倍から6.78倍も多くなる。

 尾形氏は、「医療は労働集約型産業と言われるが、医師にしても看護職員にしても国際的にみると労働投入は非常に少なく、日本の医療サービスの提供体制は、先進諸国(G7)の中では、むしろ資本集約的、労働節約的である。こういうやり方でこれまでやってきたが、さすがにそれが限界にきているというのが昨今の状況である。このあたりを変えていこうというのが最近の制度改革である」と説明した。

 併せて、主要国の経常医療費の対GDP比率を示した。それによると、日本10.9%、カナダ10.7%、フランスとドイツ各11.2%、イタリア8.8%、イギリス9.8%、アメリカ16.9%で、アメリカが突出している。また、日米の医療比較では、人口はアメリカが2.5倍、国土面積は25倍であるが、病院数は日本8400、アメリカ6200となっている。

 尾形氏は、「こうしたデータを見ると、日本のやり方が唯一のやり方ではない。かといってアメリカのやり方がよいというわけではないが、日本が特異なやり方をしているいうことは間違いない」と説明しながら、(2)近年の医療・介護政策の動向として、地域医療構想に至る医療・介護制度改革の経緯を振り返った。

 それによると、2006年に医療制度構造改革において、小泉構造改革(聖域なき構造改革)のもと、高齢者医療制度、特定健診、協会健保制度、7対1看護、医療計画(PDCAサイクルなど)、現在の制度的枠組みが規定された。その後、2011年の民主党政権下での「2025年ビジョン」「社会保障・税一体改革」が打ち出され、地域医療構造の原型が示されるとともに、増税と社会保障の改革をセットで実現することに与野党が合意した。2012年に自公政権への交代があり、2014年に医療・介護総合確保推進法が成立し、地域医療構想の構築が本格化。2017年に介護保険法が改正され、介護医療院が創設された。

 (3)2025年ビジョンでは、「『2025年』は高齢化のピークではなく、ピークは2040年代であり、2025年は『象徴的な年』だ。『団塊世代』が皆75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護サービスに対するニーズが質・量両面で大きく変化する可能性があり、現在の医療・介護サービス提供体制で十分対応できるのか、という基本的な問題意識である」を指摘した。

 死亡場所別の割合は、1951年の自宅82.5%、病院11.6%から、1975年に自宅47.7%、病院46.7%と拮抗し、その後逆転した。2005年は病院での死亡がピークの82.4%となり、その後、2010年80.3%、2014年77.3%と減少している。その一方で、自宅は2005年の12.2%を底に、2010年12.6%、2014年12.8%と上昇に転じ、さらに介護施設での死亡が増加してきている。

 病床数の地域差(人口10万人対病床数)は、一般病床においてトップの高知県(1111.9床)は最下位の埼玉県(502.6床)に対し2.2倍、療養病床では、トップの高知県(904.8床)は最下位の宮城県(148.1床)の6.1倍、精神病床ではトップの長崎県(587.7床)は最下位の神奈川県(150.6床)の3.9倍もの格差が生じている。

 地域医療構想は、「医療介護総合確保推進法」に基づき、2017年3月末までに全都道府県で策定が完了しており、2025年の医療需要推計に基づき、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の各病床機能別必要量が示された。

 機能別の病床数の算定には、医療資源投入量(中央値)の推移(入院患者数上位255のDPCの推移を重ね合わせたもの、2011年度)を活用した。おおむね医療資源投入量3000点以上の高度急性期は入院後数日の医療投入で終わり、その後、入院日数の経過とともに、急性期3000点から600点、回復期600点から225点、慢性期225点未満にほぼ分類できることが判明した。

 また、2025年の医療機能別必要病床数の推計結果(都道府県別、医療機関所在地ベース)から、病床が不足するのは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府の大都市部および沖縄県、それ以外の地域では過剰となる地域が多く、さらに、介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療などで追加的に対応する患者数も大都市部を中心に多くなっていると解説した。

 都道府県の推計を積み上げた全国の2025年の医療機能別必要病床数は、高度急性期13.0万床程度、急性期40.1万床程度、回復期37.5万床程度、慢性期24.2万~28.5万床程度の計115万~119万床程度となり、このほかに、医療資源投入量が少ないなど、一般病床・療養病床以外でも対応可能な患者が29.7万~33.7万人程度と推計している。これは介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療や、新たに制度化された介護医療院での受け入れを想定している。

 また、地域差を調整された療養病床の実態を見ると、10万人当たりの受療率(性・年齢階級調整)は、中央線213を上回って、400以上は山口県、徳島県、高知県、熊本県、鹿児島県、300以上は北海道、富山県、石川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、213以上は福井県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、広島県、香川県、宮崎県、沖縄県となっている。

 尾形氏は、続いて(5)の再検証要請対象医療機関の公表に関して概要を解説した。厚生労働省は、A診療実績が少ない医療機関(各分析項目〈がん・心疾患・脳卒中・救急・小児・周産期・災害・へき地・研修・派遣機能〉について、診療実績が特に少ない:構想区域内において3分の1未満の実績)、B類似かつ近接(各分析項目〈がん・心疾患・脳卒中・救急・小児・周産期〉について、構想区域内に一定数以上の診療実績を有する医療機関が2つ以上あり、かつ、お互いの所在地が近接している:車で20分以内)を基準に選定を行った。具体的対応方針の再検証の要請対象となった医療機関数(分析の対象となった医療機関)は、全体で424機関(1455機関)、このうち、公立病院数257機関(711機関)、公的医療機関等167機関(744機関)の構成で、ほかに民間の地域医療支援病院17機関(156機関)を対象としたことなどを挙げた。そのうえで、地域医療構想に関する「私見」を述べた。

(編集長 倉知良次)
(この稿続く)

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