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20年のテレビ市場


~コロナ禍が襲う 台数9%減~

2020/5/29

 2020年のテレビ市場は前年比8.9%減の2億311万台にとどまると予測している。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界主要都市のロックダウン、店舗の休業、東京オリンピックをはじめとする大型スポーツイベントの相次ぐ延期などによって当初の想定を大きく下回ると考えている。

 生産の約9割を中国が占めるパソコンやモニターと異なり、テレビは関税がかかることもあって、世界の地域ごとに生産拠点がある。すでに日本にはテレビ工場がなくなったが、北米市場向けにはメキシコで、欧州市場向けにはポーランド、ロシアなど東欧で、アジア市場向けはインドやマレーシアなどで生産しており、こうした拠点が都市封鎖や外出禁止令の影響を大きく受けた。

 20年1~3月期のテレビ市場は前年同期比10.2%減の4650万台の出荷にとどまり、前述のとおり欧米のロックダウンで需要が大幅に減少した。最大市場である中国が同24%減とかつてない落ち込みになったことが影響したほか、北米が同8%減、西欧が13%減、日本も2%減と軒並みマイナスとなった。

 ただし、コロナ禍が発生する以前の昨年12月時点では4322万台まで下がるのではと想定していたため、何とか10%減で踏みとどまったとも言える。巣ごもり需要が生じたことがその主因で、特に感染が急激に拡大した北米では安価な32~43インチや55インチが売れた。米国ではコロナ対策として大人1人に1200ドルの現金給付があったことも手伝い、4月に入っても安価な中小型テレビの販売が好調だ。ただし、大型プレミアムテレビの販売は振るわず、「2人で運搬しなければならない75インチ以上は配達員のソーシャルディスタンスが確保できないため、販売店も拡販に消極的」といった切実な理由もあるようだ。

 コロナ禍からいち早く立ち直りつつある中国市場は第2四半期から回復すると見込まれ、世界市場は4~6月期がボトムになるとみているが、感染が拡大しているブラジルやメキシコ、インドなどはすぐにフル生産というわけにはいかず、供給と需要双方に水を差す可能性がある。仮に欧米で巣ごもり需要が継続したとしても、それは年末商戦や来年の需要の先食いと考えており、下期の回復に大きな期待は持ちづらい。パネル需要の低下で液晶の価格も下がり、パネル各社の業績は4~6月期も7~9月期も赤字が続く公算が大きい。

 特に大きな影響を受けるのが、高価格帯のプレミアムテレビ、なかでも有機ELテレビだ。当社は、20年の有機ELテレビ需要を450万台と想定していたが、350万台へ下方更新した。19年から続く液晶パネルの値下がりで、液晶テレビと有機ELテレビの価格差はさらに広がっている。唯一のパネルメーカーである韓国LGディスプレーは、中国広州8.5G工場の立ち上げが遅れ、売れ筋の55インチや65インチで液晶に対抗しうる価格競争力を持てないようであれば、有機ELテレビ自体の将来性にも黄信号が灯りかねない。

 テレビブランド別でみると、現段階では「サムスン独り勝ち」といえる。欧米市場で新モデルの出荷前倒しなどで積極的にシェアを取りに行った結果、中国ブランドが前年同期比で13%のマイナスとなるなか、20年1~3月期は同7%増になった。中国以外の海外ブランドにコロナ禍の影響が出始めたのが3月末からであり、4~6月期はさらに厳しい結果になると予想される。

 プレミアムテレビの販売は今年は厳しい環境にあり、8Kテレビの市場拡大には時間がかかると予想している。コストを下げる取り組みが引き続き不可欠だ。また、液晶テレビはミニLEDバックライトを搭載して高品位化を図る取り組みも出つつあるが、有機ELテレビよりも安価にならないと普及しないだろう。
(本稿は、鳥居寿一氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




Omdia 鳥居寿一、お問い合わせは(E-Mail: Hisakazu.Torii@informa.com)まで。
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