商業施設新聞
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No.758

不便であるほど脅威なEC


高橋直也

2020/6/2

 商業記者として、「ECは不便である」と感じるときこそ、ECが脅威に思える。ゴールデンウィーク中、ECで某アパレルブランドのチノパンを購入した。ECで衣料品を購入するときに気になるのは、何といってもサイズ。しかも購入しようとした商品は「セールにつき返品不可」と書かれており、余計に自分に合ったサイズなのか悩む。ただ、サイト上には商品の寸法が書かれていたため、クローゼットからジーパンなどを取り出して、「このジーパンと同じくらいのサイズ」と、確認をしたうえで購入した。数日後、商品が届いて、さっそく履いてみたところ、ウエストがかなりきつい。商品の寸法を測ってみると、サイトに書かれているものより2センチほど小さかった。リアル店舗のじゃないとだめだと思ったし、腹も立ったが、この不便さが伸びしろだと気づく。

 ECの不便なところをざっと上げると、服を買う際はサイズが分かりにくい/色や質感がサイト上の写真では分かりにくい/サイト上には商品の写真が同じ大きさで並んでいるだけなので、買い物という役割に特化しており、ハレの日としてのワクワク感はない/購入してから届くまで時間がかかる/過去に購入したものと似たようなものしか提案されず、意外な出会いがほとんどない、といったところか。新型コロナウイルスによって、ECを利用する機会はますます増えていくと思われるが、こうした課題が解決されたらリアル店舗はどうなるか。

 リアル店舗はECとの差別化として顧客体験をさらに向上させなければならない。ただ、将来的にはVRで仮想的に商業施設を訪れ、施設内を回遊し、買い回りすることができるようになるかもしれない。そうなればバーチャル試着など、ネットで服を買うハードルは下がるだろうし、もしかしたら商品の質感すら分かる時代が来るかもしれない。ECで買うと、最終的には商品を自宅などに届けてもらわなければならないが、ドローンによる配送システムにより、将来的には注文から数十分後に到着するかもしれない。

 ただ、リアル店舗もまだまだ改善の価値はある。あるキャッシュレス決済を進める企業に聞いたのだが、モノを買うときの会計の流れとして①店員が「▽◇円になります」と告げ、②来店客が現金を渡し、③店員が金額を確認・回収し、④「ちょうどお預かりします」もしくは「○△円のお返しなります」と釣りを渡す、といったかなりの手間が発生している。しかもどちらかというと、仕方なくやっている作業だ。この作業を削り、その分気持ちのいい会話などができれば顧客満足度の向上につながる。

高輪ゲートウェイ駅の「TOUCH TO GO」
高輪ゲートウェイ駅の「TOUCH TO GO」
 3月、高輪ゲートウェイ駅で(株)TOUCH TO GOが弁当、総菜、菓子、飲料などを販売する「TOUCH TO GO」をオープンした。カメラなどの情報から来店客が手に取った商品を認識して、決済エリアにやってくるとタッチパネルに商品と購入金額を表示し、スムーズに買い物ができる。こうしたウォークスルー型店舗ではAmazon Goも知られているが、小売店の常識を覆す店はまだまだ出てきそうだ。10年後、20年後にはECでハレの日を楽しむ時代がやってくるかもしれない。そうした時代に生き残るには、これまでの常識を覆す店づくりが求められるだろう。
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