商業施設新聞
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No.763

街から人が消えて思う


若山智令

2020/7/7

 銀座から、東京から、日本から、ありとあらゆる場所から、今回のコロナ禍がきっかけで、人の姿が街から消えた。これには当然、飲食、小売り、観光など様々な業界が頭を抱え、大きなダメージを受けただろう。中でも、特に深刻なのはやはり観光業界で、ここ数年日本は観光バブルを感じるほど大きく成長してきた。訪日外国人観光客(インバウンド)の急増も手伝って、有名観光地には人があふれ、行列は当たり前という状況を目の当たりにし、こうした状況はいつまで続くのかと期待を持っていた。そんな時の、今回のコロナである。これによって観光業界は先が見通せないほどの状況に陥った。

 日本の観光業界の成長を後押ししたのは、日本人の旅行意欲の向上もあるが、インバウンドの増加ももちろんある。観光庁が6月に発表した「令和2年版観光白書」によると、令和元年(2019年)のインバウンド数は3188万人(前年比2.2%増)、インバウンドの旅行消費額は4兆8135億円(同6.5%増)で、いずれも過去最高となり、インバウンドが観光業界に与える影響は大きいと感じる。

普段は賑わう銀座も、新型コロナの影響で人は少なかった(写真は4月2日に撮影)
普段は賑わう銀座も、新型コロナの影響で
人は少なかった(写真は4月2日に撮影)
 インバウンドの旅行消費額4兆8135億円の内訳は、トップはやはり中国で1兆7404億円(構成比36.8%)、2位が台湾の5517億円(同11.5%)、3位が韓国の4247億円(同8.8%増)、4位が香港の3525億円(同7.3%)、5位が米国の3228億円(同6.7%)と続く。

 では、このインバウンドの旅行消費額4兆8135億円というのは、果たして大きいのか小さいのか。この視点だと意外な面が見えてきた。同じ令和2年版観光白書によれば、令和元年(19年)の日本国内における旅行消費額は27兆9000億円(同7.1%増)だ。インバウンドの旅行消費額は4兆8135億円なので全体の17.2%となる。逆を言えば、まだ8割強は日本人による国内旅行の消費だということが分かる。

 前述した、インバウンドの旅行消費額が大きいのか小さいのか、これは個人で捉え方が違うだろうが、筆者は率直に「もっとインバウンドが占める割合が大きいだろう」と思った。メディアから流れてくる映像や情報では、観光地がインバウンドで賑わう姿をよく目にした。数年前には「爆買い」が流行語になったり、例えば店舗では外国語表記された案内の看板や外国人スタッフなども、以前と比べ物にならないほど増えた。でも実際は、日本人の消費がまだまだ大部分を占めるというのも事実である。

 もちろん、インバウンドの旅行消費額は、これまでの国内旅行消費額に単純にオンされる形なので、純粋に消費額に上積みされる。要するに新しく売り上げに貢献してくれる新規客である。そしてインバウンドは観光業界だけにとどまらず、その個人個人は他のビジネス領域にもつながるかもしれない。決して軽視することはできないし、観光業界からすれば(インバウンドは)増えるに越したことはない、と思う人もいるはずだ。ここには大きな期待をしつつも、あくまで「旅行における消費」に関しては、8割強の割合を占める日本人に改めてフォーカスしてほしい。今回のコロナで露呈した、不安定なインバウンド依存から脱却し、内需で稼げる観光地が確立できれば、さらに強い日本になると思う。

 日本政府は、今回の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う観光需要喚起策として「GO TO キャンペーン」を8月から実施する方針で、これにより観光地にはポジティブな影響が出るだろう。このキャンペーンを機に旅行に出かけたり、遊びに行く人も増えるはずだ。すぐにビフォーコロナの状況に戻るとは思えないが、少しでも観光地や観光業界が潤い、元気が出てくれれば嬉しいと感じる。また、令和2年はインバウンドが激減することからインバウンドの旅行消費額も落ちるだろうが、2年後や3年後、10年後はどうなっているか、日本人とインバウンドの割合はどうなっているか、逆転する日は来るのだろうかなど、様々な視点を持っていきたい。
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