電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第383回

電子デバイス業界2020 10大ニュース 延長戦


新型コロナ&米中対立だけじゃない、20年をもう一度振り返り

2021/1/8

 本紙「電子デバイス産業新聞」2020年12月24日号1面で毎年恒例の「電子デバイス業界2020 10大ニュース」を掲載した。20年は新型コロナや米中対立などの話題が上位を占めるなど、まさに激動の一年であった。

第1位 半導体業界、コロナ禍でも力強さ
第2位 エヌビディアがArmを買収
第3位 インテル、外部生産委託を示唆
第4位 SMICが「軍事企業」に指定
第5位 アップル、インテルCPUと決別
第6位 ファーウェイへの追加制裁発動
第7位 車載電池の投資引き続き活況
第8位 サムスン電子元会長 イ・ゴンヒ氏逝去
第9位 キオクシア 上場延期
第10位 AMDがザイリンクス買収

 本紙では1~6位まで詳細なコメントを記載したが、7以下は紙面スペースの都合上、割愛せざるを得なかった。本稿では紙面で書ききれなかった7位以下のニュースについて、詳述していく。題して「電子デバイス業界2020 10大ニュース 延長戦」――。

第7位 車載電池の投資引き続き活況

 電動車市場の拡大に伴い、車載用LiB(リチウムイオン電池)の需要が増加。パナソニック、CATL、LG化学らが増産に取り組む一方で、ここにきて自動車メーカー自ら設備投資を行って生産に乗り出す動きが目立ってきた。外部調達だけでなく、自社で生産することで調達量を安定させ、リスク軽減を図るのが狙いとされる。

 具体的な動きとして、EV最大手の米テスラが保有するフリーモント工場でラインを拡張。自社生産の割合を高めていく方針だ。加えて、上海工場に全固体電池の開発ラインを有しているほか、建設中である独ベルリンのEV工場でも新型蓄電池の開発を進めていくと見られている。

 さらに、CEOのイーロン・マスク氏は、他社への電池供給についても言及しており、自社製品向けでなく、将来的には外販を行っていくことも示唆した。車載電池は高い市場性が期待できる一方、中国をはじめとする新興企業の台頭、さらには顧客企業の調達方針の変更によって、事業リスクが高い産業といえる。国内のパナソニックなどはこうした事業環境の変化に翻弄されている側面もあり、安定した事業基盤の構築が難しいとも見て取れる。

第8位 サムスン電子元会長 イ・ゴンヒ氏逝去

 長年、韓国サムスン電子のトップに君臨し、同社を世界的な大企業に育て上げた李健煕会長が20年10月25日に死去した。サムスンが半導体事業、とりわけメモリー分野で世界トップに浮上できたのは、李健煕会長の手腕によるところが大きく、サムスン電子の名が世界に知れた「64M DRAM」の国産化で陣頭指揮を執ったのが李会長だった。その後汚職事件などで検察から追及され、一時はトップの座を退任したが、10年に会長に復帰した。

 李健煕会長のバトンを引き継ぐのは、李在鎔副会長。すでに実質的に経営を引き継いでいるかたちとなっているが、韓国国内ではリーダーシップに疑問を抱く専門家もいるという。韓国内外で従業員50万人、年商400兆ウォンの超巨大企業に成長したこともあり、その経営手腕が今後問われることになりそうだ。

第9位 キオクシア 上場延期

 20年10月6日に株式上場を予定していたが、その手続きを中止し、延期すると発表した。新型コロナに伴う最終製品の需要低下と米中関係の悪化を延期理由に挙げている。東芝のメモリー事業が分離・独立した同社は、親会社のベインキャピタルのもと、設立以降、株式上場のタイミングを探ってきたが、直前に計画が白紙に戻る事態となった。

 足元のNAND市況も低迷している。需給悪化によりコントラクト(契約)価格は下落し続けており、価格反転のめどもまだ立っていない。加えて、3D-NANDへ移行して以降、設備投資金額が上昇し続けており、同じメモリーのDRAMに比べて収益確保が難しくなっている。さらにYMTCのような新興企業の台頭など参入企業数が多く、常に供給過剰リスクがつきまとう。

北上工場では第2棟(K2)の建設にも着手する
北上工場では第2棟(K2)の建設にも着手する
 四日市工場、北上工場それぞれで新棟の建設を発表したが、事業環境は決して良好とはいえない。同社がこの難局をどう乗り切っていくのかは、21年の大きな注目点となりそうだ。

第10位 AMDがザイリンクス買収

 AMDがFPGA最大手の米ザイリンクスを買収すると発表。株式交換で同社の全株式を350億ドルで取得、手続きは21年末までに完了する予定。買収を通じてAMDはデータセンター事業を強化する。

 一時は瀕死状態だったAMDが見事な復活を遂げている。CEOを務めるリサ・スー氏のもと、積極的な製品投入に加えて、製造委託を台湾TSMCに切り替えたことが奏功している。もともと、AMDはIDM企業であったが、その後前工程工場を分社化。中東マネーが流入するかたちで、グローバルファウンドリーズ(GF)が誕生したが、微細化をはじめとする技術開発の遅れが、結果的にAMDの競争力を低下させていた。

 その後、GFとの契約を見直し、主力委託先をTSMCに切り替えたことで、最先端プロセスを自社製品に盛り込むことができるようになり、競合のインテルとの差も縮まりつつある状況だ。

 21年も引き続き、新型コロナや米中対立に関するニュースが業界を席巻しそうな雰囲気だが、これらマクロ環境の劇的な変化が結果的に新たな電子デバイス需要を生み出しているのは事実。半導体市場も成長力を増しており、不確実性は高いものの、足元にあるマイナス材料はそれほど多くない。

 20年が全く予想外の展開を見せたように、21年も予測困難な一年となりそうだ。

電子デバイス産業新聞 編集部 副編集長 稲葉雅巳

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