電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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ハイエンド用途へ有機ELが拡大


~「第40回 ディスプレイ産業フォーラム」開催~

2021/1/29

シニアディレクター 謝勤益氏
 大手調査会社のOMDIAは、1月28~29日にFPD市場総合セミナー「第40回 ディスプレイ産業フォーラム」をバーチャル形式で開催する。開催以降は2月28日までオンデマンドでいつでも視聴できる。FPD市場総論を担当するシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に2021年の注目ポイントを伺った。

―― 需給バランスの見通しから伺います。
  20年のFPD需要面積の伸び率は7%だったのに対し、供給面積(生産能力)の伸び率はコロナ禍による工場の立ち上げ遅れや韓国メーカーの能力削減によって、わずか2%増にとどまった。
 これに対して、21年の需要面積の伸び率は6.4%と引き続き高い伸びが見込まれるものの、CSOTの10.5GやHKCの8.6Gなど中国で大型工場が立ち上がることから、供給面積の伸び率は8.4%と需要の伸びを上回る見通しとなっている。
 これに伴い、上期はまだ需給にタイト感が強いが、下期には若干の供給過剰になる。20年から上がり続けてきたパネル価格は、後半に10~20%の下落に転じるだろう。現在は不足感が強いドライバーICや偏光板、ガラス基板もタイト感が徐々に薄れていきそうだ。

―― テレビ市場は。
  韓国勢のWOLEDとQD-OLEDという有機ELと、中国・台湾勢のミニLEDバックライト搭載液晶テレビがハイエンド市場で争う。20年時点でテレビ市場に占めるハイエンド領域は7%に過ぎないが、25年には30%まで拡大すると予測している。コロナ禍に伴う巣ごもり需要の拡大や給付金の支給、旅行などの自粛によって、テレビに使う金額が想定以上に伸びており、メーカー各社はハイエンドテレビの拡販に力を入れる。
 ただし、液晶パネル価格が上昇したことで、テレビメーカーが年央までに値上げに踏み切る可能性がある。これまではプロモーション費用の削減などで価格を維持してきたが、テレビの値上げが進めば需要に影響を及ぼすかもしれない。

―― パソコンやモニター、タブレットなどIT機器も需要が旺盛です。
  20年のIT機器向けパネル需要は6.8億台となり、過去最高を記録した。リモートワークや遠隔教育などで需要はいまだに衰えておらず、21年も同水準の需要が見込まれる。パネル各社は生産能力をIT用に振り向けつつあり、韓国メーカーは閉鎖予定だった韓国の工場の稼働延長を決めている。

―― 中小型パネル市場については。
  スマートフォン(スマホ)では有機ELの搭載率が40%に高まり、メーンストリームになる。このなかで、バックプレーンがLTPSからLTPOにシフトする動きが強まる。すでにサムスンのGalaxyがLTPOベースの有機ELを採用しているが、アップルもiPhoneの21年モデルから採用する。LGはアップルウオッチ向けのみにLTPOを量産してきたが、21年はスマホ向けにも量産を本格化する見通しだ。
 中国スマホメーカーの有機EL搭載台数は、20年の約7000万台から21年は1億台になる。LTPOを製造できるメーカーはまだいないが、LTPS液晶とほぼ同等の価格を実現できるようになったリジッド有機ELの搭載が大きく伸びていきそうだ。

―― 有機EL市場が拡大しそうですね。
  有機EL市場は、20年の3000億ドルから27年には4700億ドルへ拡大すると予想している。アップルはiPadにミニLEDバックライトを搭載した液晶を採用する見通しだが、22~23年にはiPadにもMacbookにも有機ELを搭載する可能性が高い。有機ELは車載にも採用が広がる見込みで、今後はハイエンド用途に有機EL、ミドルクラスにミニLEDバックライト搭載液晶とすみ分けていくのではないか。

―― FPDメーカー間の競争がさらに激しくなりそうですね。
  サムスン、LG、BOE、TCL、フォックスコンという5大メジャーの動向に注目している。サムスンとLGはセットのシェアが高いが、韓国国内の生産能力削減によって、今後は外部調達比率を高める必要がある。一方で、TCLはテレビシェアが世界2位となりブランド強化が著しいが、子会社のCSOTはサムスンを主要顧客としており、ここにジレンマを抱えている。こうした状況を考えれば、サムスンとフォックスコン+シャープ連合の協力関係がさらに密になる可能性がある。
 また、BOEとTCLはグループ内に強い半導体事業がない。PMICやTCON、ドライバーICの確保がパネル事業の強さを左右する側面もあるため、中国メーカーの半導体戦略も今後を占う注目点の1つになる。

(聞き手・編集長 津村明宏)


 「第40回 ディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はhttps://na.eventscloud.com/jpdisplayforum2021/まで。

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