電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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デジタル化で楽器が急速に進化


~コロナ禍で使われるもの~

2021/4/16

 コロナ禍にあって、エレクトロニクス業界の好調が続いています。

 国際通貨基金(IMF)によると、2020年のGDP成長率はマイナス3.5%とかつてない大きな下げ幅になる見通しです。しかし、当社の調べでは、エレクトロニクス機器の出荷金額はほぼ横ばいとみており、プラスの貢献を果たしたと考えています。スマートフォン(スマホ)市場が2桁の出荷減になるなど、分野によって強弱はありましたが、巣ごもり消費の拡大でパソコンやゲーム機、家電などが好調だったほか、リモート対応やデジタル化の進展でITインフラもプラス成長に寄与しました。

 なかでも、半導体は+5%、モバイルインフラは+21%となり、貢献度が大きかった。モバイルインフラに関しては、中国でのLTE投資が一服した15年以降、低調が続いていましたが、5Gネットワークの立ち上がりや、新常態に対応する新たなインフラ構築が投資の加速と需要の増加を牽引しました。

 21年について、IMFはコロナ禍からの回復によってGDP成長率が5.5%に達すると予測しています。当社では、エレクトロニクス市場はスマホの出荷増や5G比率の上昇などでさらに成長を続け、モバイルインフラは20年に比べて成長率が鈍化するものの、半導体市場は+8%へと成長が加速すると考えています。

 半導体に関しては、生産能力の不足に伴う供給面に制約こそあるものの、新常態の定着によってRFデバイスやアプリケーションプロセッサーなど5Gスマホ向けの需要増が見込めるほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)やIoTの加速でデータセンターへの投資意欲は全く落ちておらず、引き続き経済回復の牽引役になるとみています。

 このように、エレクトロニクスや半導体は高い成長が続く見込みですが、コロナ禍と新常態の定着によって「使われるもの」「使われなくなるもの」の差が明確に出てきました。例えば、Web会議アプリの利用率はコロナ禍で急増しましたが、在宅勤務の普及によって、出社を前提とする企業向けITネットワークへの需要は急激に低下しています。こうしたフィジカルからITリモートへ移行するという傾向は今後さらに顕著に出てくると考えられます。マイナスの傾向が出てくる機器や市場がある一方、ヘルスケアのオンライン化などには大きなビジネスチャンスが生まれてくるとみています。

 こうした流れのなか、デジタル技術を融合することで市場拡大に成功しつつあるアナログ分野も出てきました。その1つが「楽器」です。ニッチ市場ではありますが、自宅で過ごす時間が増えたこともあって、デジタル技術を付加した電子楽器が人気を集めており、新たなユーザーの獲得に成功しています。

 例えば、以前の電子ピアノはヘッドホンがつなげる程度でしたが、最新のモデルはスマートフォンのアプリと連携したり、ブルートゥース対応スピーカーを内蔵していたり、センサーやアクチュエーターの進化に伴ってアコースティックピアノに近いタッチ感を実現していたりします。今後あらゆる電子楽器がネットワークにつながるようになれば、バーチャルライブやオンラインセッションをより手軽に楽しめるようになるでしょう。

 電子ピアノに関して言えば、カシオは老舗のアコースティックピアノメーカーと協業し、得意の電子技術を付加して、オープンイノベーションによって新たなファン層の開拓に成功しています。

 また、シンセサイザーなどの電子楽器メーカーというイメージが強かったローランドですが、国内家具メーカーとの協業によって天然木を使ったインテリア性の高い電子ピアノを商品化し、イメージを一新することに成功しました。

 コロナ禍は私たちの生活に大きな変化を強いていますが、こうした楽器のデジタル進化はQOL(Quality of Life)をより向上させる歓迎すべき変化と言えるのではないでしょうか。
(本稿は、大庭光恵氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)




Omdia 大庭光恵、お問い合わせは(E-Mail: mitsue.oba@omdia.com)まで。
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