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エア・ウォーターと国循、連携協定書に調印、医療教育システムを全国へ


50億円で新施設を23年4月開設、コラボで医療・福祉と介護・農業・食品の融合ビジネス創出

2021/6/8

左から原氏、豊田氏、大津氏、宮本氏
左から原氏、豊田氏、大津氏、宮本氏
 エア・ウォーター(株)(AW、大阪市中央区南船場2-12-8、Tel.06-6252-3966)と国立循環器病研究センター(国循、大阪府吹田市)は、5月26日に連携に関する協定書の調印を行った。AWの代表取締役会長・CEOの豊田喜久夫氏、常務執行役員・技術戦略センター長の原圭太氏、国循理事長の大津欣也氏、国循オープンイノベーションセンター長の宮本恵宏氏が出席した。また、AWは、健都イノベーションパーク(大阪府摂津市千里丘新町)における事業計画を説明した。


 両者は、(1)共同研究体制の構築強化として、健康食の栄養デザイン、エア・ウォーターグループによる、国循が普及を進める「かるしお」食品の開発、VRやAI画像処理を用いた開発、今後の医療への取り組み、非侵襲センサーを用いたバイタルサインの解析などに取り組む。

 また、(2)高度な医療人材育成のための教育システムの構築にも取り組む。開発済みのヘッドマウントディスプレーなどの機器・システムを、医療従事者を中心とする教育のほか、遠隔リハビリや歩行支援など患者向けに活用し、さらに、患者(疾患)の疑似体験をしてもらうことで、健康の再認識や疾病予防、患者への配慮などの気持ちを養う。ナショナルセンターである国循の教育プログラムに組み入れることで、全国への展開を目指す。

AWのヘッドマウントディスプレー
AWのヘッドマウントディスプレー
 (3)循環器疾患を中心とした疾病予防と健康づくり推進の取り組みとして、「くらしにつながる新事業」創出を目指しており、国循での急性期医療の前の段階においては、他業種とのコラボにより、食、ヘルスケア、口腔ケア、フットケアといった領域、急性期医療の後は、地域との連携を強化し、リハビリ、遠隔医療、在宅介護支援、宅配食といった事業を挙げている。

 健都イノベーションパークでは、(仮称)AWオープンイノベーション推進施設を整備する。施設は、3階建て塔屋付き延べ約4600m²(敷地3654m²)の規模とし、土地、建物、設備を含めた総投資額50億円を想定している。

 1階は、「地域とつながる、すこやかな交流の場(Living Lab)」として、セミナースタジオ、街角広場、オーラルケアスタジオ、キッチンスタジオ、ヘルスケアスタジオの配置をイメージし、国循や国立健康・栄養研究所などの専門家による市民講座、子供向け歯みがきセミナー、健康な食事、最新のヘルスケア、在宅医療体験など開催する。

 2階は、「技術がつながる、創造・発信拠点(Connecting Lab)」として、イノベーションスタジオ、共創スタジオ、光庭を配置し、展示や打ち合わせスペースを活用した積極的な交流の場、企業と企業、企業と研究機関、企業と自治体などの関係構築に利用し、また、職業体験などにより健都エリアで働きたい次世代の発見を支援する。同社では、神戸医療産業都市の「国際くらしの医療館・神戸」で、子どもたちに手術室の疑似体験などを受けさせている。

 3階は、ワークスタジオやレンタルルームなどの配置をイメージし、医療・福祉、介護・農業・食品の融合を促進させる。ここでは、事業の垣根を越えたオフィスでマーケティングと技術・開発部門全員で、スピーディーに事業を創り上げる。同社では、3階での協業について、入居企業や開発する事業はコンペ方式で選定することを考えており、また、事業が完成し、上市できたら退去してもらい、企業の固定化はしない。さらに、3階に限らず、各階・屋上に導入する機能や設備などもコンペにより委託することを考えている。

 屋上は、「安心でつながる、防災・災害対策拠点(Communication Lab)」として、防災備蓄庫、屋上庭園を設け、開放する憩い・安心の広場として活用する。また、屋上までの屋外階段を設置し、運動にも活用する。

 ここでは、「フレイルドミノ防止」をキーワードとし、青空ランチ、園芸リハビリをはじめ、趣味・就労・ボランティアを通じた第2の緩やかな社会参加に利用し、社会とのつながりの場や機会を設ける。施設は、22年に着工し、23年4月のオープンを予定している。

 なお、同社では、長野県松本市に07年10月に総合開発研究所を設置し、17年6月には同市と「健康寿命延伸都市・松本の創造に向けた連携に関する協定」を締結した。神戸市の「国際くらしの医療館・神戸」において、歯髄再生事業(アエラスバイオ)、8K映像事業(世界に先駆けて8K技術を内視鏡カメラに取り入れる医療応用を実現)をはじめ、医療・ヘルスケア、農業・食品分野といった、くらしに関わる事業領域に特化した開発センターとして、「バイオデザイン」プロセスで商品や事業開発を担っており、今回の摂津市への進出に加え、札幌市へも進出を目指している。北海道では、農業、バイオ、食品、医療、ヘルスケアなどをテーマに内容を検討している。

(編集長 倉知良次)

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