電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内

ゲーム用が高付加価値化を牽引


~コロナ禍で変貌したモニター市場~

2021/10/1


■デスクトップモニター
 コロナ禍によって、デスクトップモニター市場は大きな変貌を遂げた。以前は付加価値を付けづらかったが、巣ごもり消費やリモートワーク、遠隔教育の急速な普及で大型ディスプレーを要する用途が増え、使い方の定義が変わった。当社の調べで、デスクトップモニターの出荷台数は2020年1~3月期の2860万台をボトムとして、21年1~3月期には3700万台まで拡大し、需要が継続的に高まっている。

 この間の液晶パネルの価格上昇にも後押しされ、平均売価も上昇している。従来は100ドル以下のモニターがボリュームゾーンだったが、現在は100~200ドルが主流になった。大画面化やハイエンドなゲーム用の増加といった要因に加え、カラーマネジメントモニターなど専門用途のモニターの出荷拡大も寄与している。

 販売面では、コロナ禍に伴ってB2Cチャネルでの販売が大きく伸びた。従来はB2Bチャネルでの販売比率が65%前後あったが、直近では50%強まで下がっている。ただし今後は、企業や学校における購入費の予算化などでB2Bの比率が徐々に増加してくるのではとみている。

 足元の需要は堅調だが、22年のデスクトップモニター市場は横ばい~微減になると想定される。コロナ需要がいったんピークアウトするのが主因で、半導体不足も徐々に解消に向かうためだ。ハイエンドのスケーラーチップが恒常的に不足している影響は残るが、B2Bの汎用モニターではFPGAを用いたシンプルなスケーラーチップを採用するなどして不足を回避する動きが出ている。


■ゲーミングモニター
 巣ごもり需要で市場が急拡大しているのがゲーミングモニター。20年の出荷台数は1510万台と前年から倍増以上となったが、21年は2180万台、22年は2570万台と引き続き成長が見込まれ、今後はノートPCとの接続のみならず、プレイステーション5やXbox Series X/Sといった新型のコンソールゲーム機との接続需要増加も期待でき、上ぶれる可能性もある。

 リフレッシュレートは、これまで144Hzが主流だったが、165Hzへ高速化が進んでいる。画像のちらつきを抑制するVRR(Variable Refresh Rate)やHDMI2.1への対応などによって対応するコンテンツやアプリケーションが増加し、ドライバーICやTCONといった搭載される半導体にも性能向上が要求されている。

 サイズの主流は27インチだが、32インチや34インチといった大型がシェアを伸ばす一方、23.8インチ以下は微増にとどまる。ただし、40インチ以上になるとVRR対応の大型テレビと競合してくることが予想されるため、大画面化のトレンドが継続することはないとみている。


■LEDビデオウォール
 パブリックディスプレー&サイネージ市場は、コロナ禍の影響で市場が低迷していたが、直近ではプロジェクトベースの出荷が増加し、特に3000cd/m²以上の屋外用高輝度モデルの出荷が好調に推移している。また、液晶ディスプレーとLEDビデオウォールが競合するケースが増えており、今後はLEDビデオウォールの需要が伸びてくるとみている。

 ただし、55インチビデオウォールのフルHDディスプレーセットでm²あたりのコストが5000ドル弱である液晶に対し、LEDビデオウォールはいまだにコストが圧倒的に高い。現在の売れ筋はLEDの実装ピッチが1.0~1.5mmのクラスであり、1.0mmを下回るようなミニLED、マイクロLEDを用いた製品が登場し始めているものの、需要が本格化するには至っていない。

 今後、RGBのLEDチップを1つのパッケージに収めた3 in 1や4 in 1といったパッケージが普及すれば、実装効率が上がって、さらにコストダウンが進む可能性がある。だが、「割高だが液晶よりLEDに分がある」ような、遠目から見る用途から採用が増えることになるだろう。
(本稿は、氷室英利氏へのインタビューをもとに特別編集委員 津村明宏が構成した)




OMDIA 氷室英利、お問い合わせは(E-Mail: hidetoshi.himuro@omdia.com)まで。
サイト内検索