商業施設新聞
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No.833

温泉ワーケーションがここにも


若山智令

2021/11/22

 コロナ禍によって、働く場所が多様化したと思う。リモートワークや在宅勤務が普及し、いまや自宅をはじめ、どこでも職場となる時代だ。「ワーケーション」という言葉も、ずいぶんと広まったものの一つではないだろうか。この取り組みとして、セントラルスポーツが始めた温泉ワーケーションが面白いのでぜひ紹介したい。

新設したワーキングスペース
新設したワーキングスペース
 セントラルスポーツが提案するワーケーションは、同社の温浴施設にワークスペースを新設することで、仕事場の確保とリラクゼーションの両方を提供するのがコンセプト。この第1弾として、東京・西新井の「THE SPA 西新井」にワークスペースを整備した。元々、同施設には休憩処として使用していたリラクゼーションルームが2室あり、今回、そのうちの1室をワークスペースに改装したそうだ。ワークスペースは約100m²で、14の個別ブースを設けている。共用部にはコワーキングスペースを設置していたようだが、隣接するフィットネスクラブの音が漏れたり、案外集中するのが難しいなど課題も多く、運用は難しかったようだ。その点、今回のワーキングスペースは扉を設け防音性も向上。完全に仕事場としての役割が果たせる格好となった。

 ワーケーションと聞くと、リゾート地や観光地などを思い浮かべる人も多いと思うが、セントラルスポーツでは都内でこれを提案している。しかも、THE SPA 西新井の温浴は天然温泉で、地下1500mから湧き出す温泉を使用しているという。温泉のほかにも、今ブームのサウナもあり、リフレッシュ効果は抜群。仕事で疲れた体を癒やしてくれるはずだ。

 仕事とリラクゼーションという、この相反するものを1つの場所で提供できるのは、非常に面白い取り組みだと思う。まだ事業としても始まったばかりだが、利用者からは好評なようで、身近にマイ温泉があるという楽しみ、仕事後のリフレッシュ、癒やしなど様々な効果があるという。

 一方、同社としては既存施設の有効活用に加え、新たな客層も取り込みたいと考えているだろう。日中のスポーツクラブや温浴施設は、比較的年齢層の高い利用者が多い。そこで、このワーケーションを展開することで、働く世代や若年層の利用者の増加も狙っていると思う。新しい集客方法として、この取り組みがどう働いていくかは興味深いところだ。

 スポーツクラブ業界はコロナの影響を最も受けた業界の一つだろう。そうした中で新しいビジネス展開も始まっている。スポーツクラブが手がけるワーケーションが定着、浸透するか注目したい。
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