商業施設新聞
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No.834

子どもも大人も楽しめる施設へ


山田高裕

2021/11/30

 「子どもも大人も楽しめるコンテンツ」というものはしばしば聞かれる。いわゆる子ども向けのコンテンツであっても、例えばNHK教育の『ピタゴラスイッチ』などは、大人も夢中になって見てしまう。こうした、子どもと大人が共に楽しめるというコンセプトは、商業施設にも見られる。

 11月12日、東京都世田谷区の「二子玉川ライズ」8階にて、屋内型プレイグラウンド施設「PLAY! PARK ERIC CARLE」が開業した。絵本作家エリック・カール氏の有名絵本『はらぺこあおむし』の世界観をベースにした施設で、アスレチック遊具のプレイゾーン、迷路ゾーン、虫の標本などで彩られているディスカバリーゾーン、アトリエなどからなる施設だ。

 中でも注目されるのは、施設中央にあるオートマタゾーンだ。ここには木製の大きな骨組みがあり、これは「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」と呼ばれるもので、あの『ピタゴラスイッチ』のように、からくり仕掛けが次々と連鎖し、ボールなどが一定の動きを繰り返していく。

施設中央のルーブ・ゴールドバーグ・マシン
施設中央のルーブ・ゴールドバーグ・マシン
 ボールは基本的に一定の動きを繰り返すので、ずっと見ていても何か新しい要素が生まれるわけではないが、それでも複雑なからくり仕掛けが動作し、見事に連鎖していく様は、それ自体に感嘆してしまう。またマシンの下で「はらぺこあおむし」を模したおもりがユーモラスに動いていくのも、じっくりと見入ってしまうものだった。

 施設を運営する東急モールズデベロップメントは、開業に当たって「大人も子どもも共に楽しめる施設」をコンセプトとして掲げた。なるほど、確かにこのマシンや、その周辺のオートマトンなどは大人も惹きつける魅力を感じるものだ。内覧会の際も、コインをはじいて穴に落ちないように進める機械を、はしゃぎながら操作している人もいて微笑ましい気分になった。

 件の「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」も、元々は無意味に複雑な機構で無意味な動作を表現し、機械文明の空虚さを皮肉る意図で作られた、アート的な機械であったらしい。同じアトラクションでも、子どもと大人とではまた違った楽しみ方・解釈があるということでもある。大人が童心に帰りつつ、多層な楽しみ方ができる、そういう施設が求められているのだろう。
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