商業施設新聞
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No.835

観光都市・京都、ホテルの行く末


岡田光

2021/12/7

嵐電嵐山駅の周辺では修学旅行生の姿が目立つ
嵐電嵐山駅の周辺では修学旅行生の姿が目立つ
 長かった緊急事態宣言が解除され、京都に足を運ぶ観光客の姿が増えてきた。特に、この11月は修学旅行生が連れ立って歩く姿をよく見かけるようになった。紅葉も清水寺や東福寺が見ごろを迎えており、12月上旬までは色鮮やかなもみじを愛でることができる。今年は11月に入っても気温が高く、暖かい日が続いていたので、正直、紅葉狩りは無理かなと思っていた。しかし、先日取材で訪れた嵐山でも、渡月橋から紅葉が見られたので、地元民としてはほっと胸をなでおろしている。

 紅葉が際立つ京都では、今、ホテル開発が新たな局面を迎えている。これまではアパホテルなどのビジネスホテルチェーンが中心となり、京都駅や四条駅などの主要ターミナル駅に宿泊特化型のホテルを展開。主要ターミナル駅の周辺には商店街や地下街があり、飲食店も軒を連ねることから、「食べるのは外で、休むのはホテルで」といった考えで、レストランを併設しないホテルが増えた。一部のホテルチェーンは、ホテルの1階に飲食チェーンを誘致し、宿泊需要だけでなく、飲食需要も取り込もうとしたが、新型コロナウイルスの流行でイートインを敬遠する宿泊客が増え、結果、1階の飲食チェーンが撤退するという状況も目の当たりにした。

 次に訪れたのは、外資系ホテルチェーンによるライフスタイルホテルの出店だ。代表的なのが、建て替えで生まれ変わった新風館に出店した「エースホテル京都」。213室を用意し、客室には音楽を象徴するターンテーブルやギターのほか、オリジナル家具やアートも設置。加えて、最大で280人が収容できる宴会場やミーティングスペースも備え、展示会やイベント、ウエディングの需要を取り込んでいる。

 また、二条城の周辺では、マリオットが展開するライフスタイルホテル「モクシー」の京都初出店となる「モクシー京都二条」が開業。フロントデスクの横にはバーカウンターを併設したロビーが設置され、DJイベントやカルチャー教室などを楽しみながら、ドリンクや軽食を味わえる。

 このライフスタイルホテルと併せて、外資系ホテルチェーンが出店を強化してきたのが、ラグジュアリーホテルの展開だ。これまでも「ザ・リッツ・カールトン京都」「フォーシーズンズホテル京都」「アマン京都」「パークハイアット京都」などがオープンし、今後も「(仮称)シャングリ・ラ京都二条城」や「シックスセンシズ京都」が開業する予定であり、現在はこのラグジュアリーホテルが京都の宿泊需要を取り込むと予想されている。

 しかし、私はこの予想が外れると思っている。と言うのも、京都のホテル開発で新たな主役が躍り出ると予想する。それは地域密着型ホテルだ。地域密着型と聞くと、地元企業が運営するホテルであるとか、ホテルの中で地元ならではのクリエイティブな体験を用意するとか、いろいろ手法は考えられるが、ホテル業界において、地域密着型を表現する答えはまだ出ていない。それは地元に落ちるお金=効果が見えていないためだ。すでに星野リゾートは3施設を開業し、OMOレンジャーでその効果を生み出そうとしているが、他のホテルチェーンはまだ本格的に動いていない。果たして、ホテル業界における地域密着型とは一体何なのか。私も自問自答しながら、京都のホテル動向をつぶさに追っていきたい。
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