電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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経済安全保障や輸出管理を議論


~レビュー Global Semiconductor Day Fall 2021~

2021/12/24

 大手調査会社のOMDIAは11月25日、半導体産業の経済安全保障や輸出管理などに焦点を当てたオンラインセミナーイベント「Global Semiconductor Day Fall 2021 半導体業界の今を解く鍵 ~2022年展望―市場・サプライチェーン・輸出管理の各動向~」を開催した。半導体産業の主要企業・団体の専門家・有識者によるセッションとパネルディスカッションを通して、半導体産業の今後の見通しについて、活発な議論が交わされた。

 「米中摩擦、カーボンニュートラル、DX化によるエレクトロニクス産業の変化」と題して最初に登壇したOMDIAシニアコンサルティングディレクターの南川明氏は、メタバースでデータセンターへの投資が拡大し、各国政府が半導体産業のデカップリングを進めている現状を整理するとともに、半導体と密接に関わっている中国の新インフラ投資を解説。一方で、増え続ける電力需要が逼迫するのはこれからと警鐘を鳴らし、500兆円を超える各国のグリーン関連投資が半導体需要をさらに押し上げていくと述べた。

 続いて経済産業省貿易経済協力局貿易管理部 技術調査室長の田中伸彦氏が「経済安全保障政策について」と題して講演。米国、欧州、中国など世界の環境変化を解説するとともに、戦略物資としての半導体をめぐる各国の産業政策を整理した。最後に日本の対応を紹介し、省内横断組織として経済安全保障室を設置したことや、政府方針における経済安全保障と施策の中間とりまとめなどを報告した。

 OMDIAコンサルティングディレクターの杉山和弘氏は「半導体不足どうなる!?2022年の業界トレンド予測」と題して、半導体不足は22年上期にはおおむね解消されるとの見立てを披露した。ファンドリーがより多くの追加容量を割り当てたため、自動車部品の不足は21年7~9月期以降徐々に緩和される。だが、ファンドリーの生産キャパ拡張計画は依然として主に12インチに焦点を当てているため、8インチファブの生産キャパ不足が自動車、サーバー、SSD、エネルギーインフラ関連に少なからず影響を与えることも付け加えた。

 「混迷の米中対立と中国経済の展望」と題して話したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の瀬口清之氏は、米バイデン政権の中国・台湾政策を解説し、米中対立に関して日欧の立ち位置には共通点が多いことを指摘。ただし、中国への投資に積極的な欧州に対し、日本企業はリスクを懸念して慎重な姿勢で、政府とともに情報収集力不足、判断力低下を改善することが喫緊の課題だと論じ、「中国の発展は日本の発展、日本の発展は中国の発展」と結んだ。

 「装置市場展望と輸出環境」のタイトルで講演した日本半導体製造装置協会(SEAJ)専務理事の渡部潔氏は、日本製装置の販売高が21年度、22年度ともに過去最高を更新する見通しであることを報告。そして30年代までのトランジスタ技術の方向性が固まってきたことで、装置・材料と二人三脚で今後も研究開発を続けていく必要があることを訴えた。経済安全保障の観点からは、生産能力を持つことがサプライチェーンの安定化に必須と話し、技術流出の防止などに取り組みつつも、世界市場に向けて積極的にビジネスを展開し、日本企業が半導体産業の必須パートナーとなることの重要性を語った。

 講演に続くパネルディスカッションでは、瀬口氏、渡部氏に武者リサーチ 代表取締役の武者陵司氏を加えて、22年の半導体産業を展望した。武者氏は、自社株買いと株主還元で米国企業が強力な財務基盤を築いていることを指摘。金融面で強さを発揮する米国企業らに対し、瀬口氏は日本企業が世界各国の市場にあわせて無駄をそぎ落とし、スピーディーに製品を開発しシェアを拡大していく努力をもっと加速するべきだと説いた。渡部氏は最先端の技術に若い技術者が触れる機会が減っているため、大学など教育機関への支援で人材育成にもさらに力を入れていくべきだと力を込めて語った。

(特別編集委員 津村明宏)


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 本イベントは2021年12月31日までオンデマンド配信中。詳細はhttps://omdia.oatnd.com/global-semiconductor-day-fall2021。

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