電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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中小型FPD「車載さらに成長」


~「第42回 ディスプレイ産業フォーラム」開催~

2022/1/28

シニアディレクター 早瀬宏氏に聞く
シニアディレクター 早瀬宏氏に聞く
 大手調査会社のOMDIAは、1月27~28日にFPD市場総合セミナー「第42回 ディスプレイ産業フォーラム」をオンラインで開催する。中小型FPD市場を担当するシニアディレクターの早瀬宏氏に2022年の注目点を伺った。


―― 22年の中小型パネル市場の見通しについて。
 早瀬 新型コロナの感染状況に大きく左右される。不確定要因が大きく、依然として予断を許さないが、端的に言うと、スマートフォン(スマホ)を含めた携帯電話向けはネガティブだが、その他の用途は成長が続くとみている。

―― 携帯電話は過剰感が強まっていますね。
 早瀬 21年の携帯電話用パネルの出荷台数は前年比8%増だったが、端末の出荷台数は横ばい~2%増にとどまったとみている。ポストファーウェイを狙う動きが活発化したことや、ドライバーICの不足などが重なり、特にミドル~ローエンド端末用のパネルを作り過ぎてしまった。
 一方で、ミドル~ハイエンド端末向けはそこそこ堅実だった。リジッド有機ELは頭打ちだったが、フレキシブル有機ELがLTPS液晶を置き換えたため、スマホ用有機ELはプラス成長を遂げた。

―― 22年の見通しは。
 早瀬 旧正月明けの売れ行きを見極める必要があるが、中国や新興国ではオミクロン株の流行でスマホの需要が伸びづらい状況が続くとみており、携帯電話用パネル全体では前年比8%減を想定している。在庫処理にかなり時間を要するのではないか。
 一方で、フルモデルチェンジの年にあたるiPhoneのパネル仕様がどうなるか、BOEや天馬をはじめとする中国勢がフレキシブル有機ELでどこまでスマホ市場に食い込んでくるのかに注目している。

―― 自動車向けについては。
 早瀬 ポジティブだ。21年は、半導体不足の影響があったにもかかわらず26%増とハイペースの成長が続いたが、22年はこれをさらに上回って10%増になるとみている。EVシフトの加速で搭載台数が増え、車種ごとにデザインが異なるため、仕様やサイズが多様化して「千差万別」という状況になってきた。
 ニーズの多様化を1社でカバーするのは無理で、現状ではほぼすべてのパネルメーカーが自動車用に参入しており、シェアが分散してきた。そのなかでも天馬やBOEといった中国勢が存在感を強めてはいるが、シャープやジャパンディスプレイといった日本勢も決して出荷数量を落としてはいない。

―― 上級車種ではディスプレーの大画面化やワイド化が進んでいますね。
 早瀬 アモルファスに代わって省エネ性能に優れるLTPS液晶が徐々に浸透し始め、G6ラインで12インチ以上のワイドパネルを量産する流れが定着してきた。LTPSはスマホ市場では付加価値を取れなくなってきたが、車載用にはまだまだ伸びる。

―― 有機ELの搭載は広がりそうですか。
 早瀬 上級車のごく一部にとどまる。寿命や信頼性、価格を含め、普及するにはまだ相当の時間を要するだろう。現時点では有機ELよりも、ミニLEDバックライトを搭載したLTPSの優位性が高い。

―― 用途別では。
 早瀬 ダッシュボード周りに伸びが見込める。クラスターは一巡しつつあるものの、オーディオやエアコン、助手席モニターなどを複数枚のパネルで一体化する動きが強い。アフターマーケットを含め、引き続き15%成長が期待できる。
 ヘッドアップディスプレーも順調に伸びている。21年はドライバーIC不足で伸びが抑制されたが、これが解消してくる22年は30%増を見込んでいる。

―― スマホや自動車以外の注目用途は。
 早瀬 VRだ。現在はゲーム以外の用途が立ち上がっておらず、VR端末ではメタ(フェイスブック)傘下のオキュラスが独走している状況だ。22年は「何のためにVRを使うのか」を追求し、水平展開によって真の需要を作っていく年になるだろう。これが見えてくると、20%以上の成長を達成しても不思議ではない。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏)


「第42回 ディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はhttps://na.eventscloud.com/website/33089/まで。
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