商業施設新聞
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No.852

50年の悲願、加須病院が完成


若山智令

2022/4/12

 先日、埼玉県加須市の「埼玉県済生会加須病院」の内覧会に行った。新しい病院はそれほど頻繁に建てられるものではないので、病院の内覧会は年に1回あるかないかの貴重な機会。埼玉県の大野県知事や、加須市の大橋市長、済生会の炭谷理事長、埼玉県済生会の原澤支部長などが一堂に会し、新病院の完成を祝った。

 もともとこの新病院は、栗橋町(現在は久喜市と合併)にある済生会栗橋病院を加須市へ移転新築するもので、栗橋病院の老朽化への対応や設備更新などを目的に建設された。新病院は7階建てで、診療科目は26科、病床数は304床(許可病床数329床)を有する病院だ。加須市は埼玉県の利根保健医療圏に属しており、この利根保健医療圏の中核的な病院として、また、市内や近隣の医療機関との連携という面からも期待を集めている。

 今回のような総合病院は、来院者も多いことからある程度敷地が必要となるため、駅から遠いケースも多い。筆者が過去訪れたいくつかの病院も、とてもじゃないが、最寄駅から歩いて行ける距離にないことがあった。だが、今回の加須病院は東武伊勢崎線の加須駅から徒歩7分程度。実際、加須駅で降りるとひときわ大きな建物が目に入る。これが加須病院だ。駅から病院までは一本道で行けるのだが、この通りも「済生会通り」という名称に変えたらしい。街を挙げて新病院の誕生を喜んでいるように感じた。

完成した済生会加須病院
完成した済生会加須病院
 また、敷地内にある広大な駐車場も新病院の大きな特徴だと感じた。筆者が小さいころに通っていた総合病院は、敷地内駐車場が小さく、いつも駐車場待ちの渋滞ができていた。また、いきなり敷地内に駐車場を作れないので、周辺の空き地をどんどん駐車場にしていったのだが、点在しすぎて分かりづらいという声もあったようである。駅から歩ける距離にあるとはいえ、やはり車で来る人が多いであろうことから、この大きな駐車場整備は意味があると思った。

 内覧会の前には、落成式が行われた。県知事や済生会理事長、支部長など多くの人が完成を祝う言葉を述べていたが、とりわけ加須市の大橋市長の挨拶が印象的だった。大橋市長は「中核病院の誘致は加須市として50年来の課題であり、市長として私の最大の責務と位置づけ、市長就任以来、市民の命と健康を守るため、最重要課題として今日まで取り組んできた。ついにこの日を迎え、感無量だ。済生会病院の誘致を表明して以来、市議会をはじめ、市民の皆様にご理解いただけるよう、適時適切にご説明を申し上げながら、大切に、丁寧に誘致を進めてきた」と挨拶。50年の悲願とも言うべき新病院の誘致は、多くの人が携わってきたことだろう。こうした色々な人たちの努力により今回の新病院が実現したという背景は非常に感慨深い。

 新病院では、県内初の常駐型救急ワークステーション設置、当初の設計にはなかった救命救急センターを目指した施設・設備の導入など最先端の機能を多数導入した。まだ完成したばかりということもあり、医療機械などは設置されていなかったが、今後は手術支援ロボットのダビンチも導入予定だ。なお、今時の病院らしく院内は明るく、廊下は広いため開放感もあり、「病院ではないみたい」という使い回された表現が適しているような、素晴らしい病院になっている。

 新病院は2月に竣工、引き渡しが終わり、6月1日に開院する。色々な人の思いが詰まったこの病院が、地域医療に大きく貢献してくれることを願ってやまない。
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