電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第490回

福岡県半導体・デジタル産業振興会議は盛大に設立された!


産学官会員1010が集結、泉谷渉も基調講演で吠えまくり~

2022/7/15

 6~8月にかけての手帳を見ていて、ふーっとため息をついている。驚くなかれ、この3カ月の間にスピーチしなければならない講演は23を数えるのである。冗談ではない。こんなにしゃべっていたらバカになっちゃう、などと思っているが、どうにもならない。

 それはさておき、2022年6月6日のことである。福岡市のホテルニューオータニのホールに、300人の人たちが押し寄せていた。「福岡県半導体・デジタル産業振興会議」の設立総会が開かれたのである。

2020年6月2日に1010の会員を擁する一大会議が福岡で設立
2020年6月2日に1010の会員を擁する
 一大会議が福岡で設立
 その基調講演のメンバーたるや大変なものであり、ノーベル賞を受賞された名古屋大学の天野浩教授、そして産業技術総合研究所(産総研)の上席執行役員/つくばセンター長の金丸正剛氏が堂々たる講演をされた。そして筆者もまた、「半導体100兆円市場が切り開く福岡の発展」と題して講演させていただいた。例によっての吠えまくりであった。誠に名誉なことであるが、こんな一流の方々と一緒に講演する輩ではない、と心に念じていた次第である。

 さて、国の半導体産業振興の大号令がかけられたことにより、福岡県も独自に地域振興および半導体企業の発展を図るべくこの会議を立ち上げたのだ。会員数は全国トップクラスの1010の産学官プラットフォームをすでにこの時点で確立していた。産の会員は712、学の会員は167、官の会員は131となっており、福岡県および北九州市、福岡市が強力にこの会議のリーダーシップをとっていたのである。

 福岡県半導体・デジタル産業振興会議の会長は、安川電機のトップであった津田純嗣氏である。顧問としては、文部省科学技術・学術政策局長、九州経済産業局長、福岡県知事、北九州市長、福岡市長というそうそうたるメンバーである。

 「スマート社会の実現に向け、あらゆる産業でデジタル化が加速している。デジタル化・DX化の進展に伴い、急速に半導体の需要が高まっている。こうした中で、台湾のシリコンファンドリー世界最大手のTSMCが熊本に進出することなどをきっかけに、九州内で半導体推進組織が次々と発足している。シリコンアイランド九州の存在感が再び高まっており、大きなチャンスが到来したと言えるのである」

 こう語るのは、同会議の会長に就任した津田氏である。津田氏がトップとして引っ張ってきた安川電機は、いまや世界を代表するロボットメーカーであり、最近では半導体向け装置としてのロボットにひたすら注力しているのだ。

 福岡県のポテンシャルは大きい。同県における半導体関連企業は約400社に上っており、パワー半導体大手の三菱電機、国内でも有数の半導体メーカーであるロームグループのローム・アポロ、アナログデバイスに強い日清紡マイクロデバイスが立地している。さらにはOSAT(半導体後工程受託)で世界2位のアムコーテクノロジー、CMOSイメージセンサーで世界シェア1位のソニー・セミコンダクタソリューションズ、ICリードフレームのトップメーカーである三井ハイテックなど、注目立地企業は数多いのである。

 さて、この会議の取り組みの方向性は次のようなものである。

①半導体産業(グリーンデバイス)の進行=カーボンニュートラル時代の製造業を支える半導体デバイスであるグリーンデバイス(省エネルギーに直結するパワー半導体および関連製品、低消費電力化を実現する各種半導体および関連製品)の一大開発・生産拠点の構築を目指す。

②デジタル産業の新興=ロボット、IoT、デジタル化システムや宇宙ビジネスを新興し、新たなニーズに対応した新産業の創出を目指す。

 福岡県知事の服部誠太郎氏は、製造業を支える半導体の安定供給、サプライチェーンの強化は最重要であるとして、次のようにコメントしていた。

 「全九州で戦うという視点は、もちろん重要である。隣接する熊本県、佐賀県などともきっちりとスクラムを組んでいく。そして何よりも大切なことは、半導体企業の誘致を促進することである。さらなる半導体企業を集積させるためには、新たな産業団地の整備が必要であり、ここにも全力投球の構えである」

 5年間で約100haの新たな産業団地の整備に着手するというのであるからして、ただ事ではない。この事業費を概算しただけでも、筆者は頭がクラクラしてきたのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2020年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
サイト内検索