商業施設新聞
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No.874

つばぜり合い第2章


岡田光

2022/9/20

2階から見た「ファンスタクロススタジアム」の様子
2階から見た「ファンスタクロススタジアム」の様子
 イオンモール(株)と三井不動産(株)。リージョナルショッピングセンターで業界を牽引してきた2社が激しいつばぜり合いを演じている。今春は三井不動産が九州初のRSC「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」(福岡市博多区)を開業したかと思えば、イオンモールは同じ福岡県の北九州市に業態2号店となる「ジ アウトレット北九州」をオープン。今秋以降も三井不動産が関西エリアに、イオンモールは中部エリアに新しいRSCを開業する予定だ。

 先日、三井不動産が11月に開業する「ららぽーと堺」(堺市美原区)の先行内覧会に参加した。建物は完成していたが、内装工事は未着手の状態で、至る所にベニヤ板が置かれていた。その先行内覧会で一番印象に残ったのが、1階に設けられた屋内型スタジアムコート「Fansta X Stadium(ファンスタクロススタジアム)」だ。なぜ印象に残ったのか。それは2階に上がってファンスタクロススタジアムを見た時に、写真のように「まるで球場の観客席にいる」と感じる光景を目の当たりにしたからだ。

 私はこれまで数多くのSCの内覧会に参加してきたが、参加する度に感じることがあった。「なぜ、2階のベンチは吹き抜けから遠い位置に置かれているのだろうか?」と。コロナ禍に陥ってからはあまり聞かないが、コロナ前はファンスタクロススタジアムのようなセンターコートでよく有名人のコンサートを開いていたと聞く。そのコンサート風景の写真を見た時も、1階の観覧者は座っていたが、2階の観覧者は立ち見だった。確かにベンチを吹き抜けに近い場所に置くと、転落の危険性が付きまとうが、上から見る景色はまた違って見えるはず。東京ドームを子会社化した三井不動産ならではの発想だなぁと感心した。

 一方、イオンモールは10月に開業する「イオンモール土岐」(岐阜県土岐市)に様々な外部棟を設ける。ゴーカートサーキット場や温浴施設など、3世代ファミリーが楽しめる空間が満載であるが、私が注目しているのは「総合住宅展示場 ハウジングパーク」だ。商業施設と住宅展示場、あまり聞かない組み合わせのようにも思うが、最近、この組み合わせが中部エリアで増加している。エイトデザインとBinOは今秋、愛知県豊田市に商業・レジャーと住宅展示場を融合した新施設「MATSURIVA(マツリバ)」をオープン。野村不動産も今秋、「名古屋栄三越」内に総合型マンションギャラリーをリニューアルオープンする予定だ。

 市街地再開発事業では低層部に商業施設、高層部に住宅を設ける組み合わせもあるが、同じ空間に融合させるという事例は珍しいと思う。これはひとえにリニア中央新幹線の開通が影響していると感じる。リニア中央新幹線は品川~名古屋間を40分で結ぶ。中部エリアでは岐阜県中津川市と名古屋市に新駅が設置されるが、中津川市からイオンモール土岐のある土岐市までは、電車で30分程度と近い距離だ。県内住民の移転はもちろんのこと、県外からの移住も可能性として考えられる。そうなると、SC内にも住宅を販売する機能が必要になってくる。イオンモールの先見性に感心するばかりだ。

 長々と述べたが、ららぽーと堺は15年に都市計画を提案、イオンモールは15年に土岐市と基本協定書を締結するなど、いずれも7年以上を要した長期プロジェクトである。長く時間を要した分、まだまだ私の気づいていない魅力が隠されているはずだ。2強のつばぜり合いは来春まで続く見通しであるが、まずは今秋に開業する2施設をじっくり楽しみたい。
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