電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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23年以降の成長サイクルを議論


~レビュー Global Semiconductor Day Fall 2022

2022/12/23

 大手調査会社のOMDIAは11月22日、ハイブリッド型のセミナーイベント「Global Semiconductor Day Fall 2022~新たな成長へ向かう半導体市場展望~各国政府支援による投資拡大をどうみる~」を開催した。半導体産業の主要企業・団体の専門家・有識者によるセッションとパネルディスカッションを通して、今後の半導体市場の新たな成長サイクルについて議論を交わした。

 「日本製半導体製造装置の需要予測および市場動向」と題して最初に登壇したSEAJ(日本半導体製造装置協会)専務理事の渡部潔氏は、半導体産業への各国の大規模支援が装置需要を下支えしていることを説明し、世界シェア3割を握る日本製装置はすでに主要輸出品目のトップ5に入っている現状を説明した。また、2022年7月からの需要予測の変化も解説し、22年度は17%増で史上最高を更新するが、23年度は不確定要素が多く下方修正が必要との見方を示した。

 続いて経済産業省商務情報政策局情報産業課長の金指壽氏が「半導体・デジタル産業戦略の足元の状況と今後の方向性について」と題し、日本の半導体産業復活の基本戦略を解説した。レガシー半導体と装置・素材の生産能力の増強、先端半導体の製造基盤とBeyond 2nmの確保、日米連携による半導体産業政策などを説明し、Rapidusの設立や人材育成コンソーシアムなどの取り組みにも触れつつ、「小規模に予算を出していくことはあまり考えておらず、グローバルに勝負できるところに支援を集中していく」と語り、支援を継続していく姿勢を示した。

 「今(も)そこにある危機」と題して講演した荏原製作所 フェローの辻村学氏は、同社が1985年から半導体産業に参入した歴史を振り返りつつ、「半導体業界は危機には慣れている」と語り、困難な壁に立ち向かい続けることが大事だと力説した。また、IoT、クラウド、AI、自動車、5Gの頭文字をとった「ICAC5」とGX・DXが今後も半導体需要を喚起し続けると述べ、聴衆を鼓舞した。

 Omdiaコンサルティングディレクターの杉山和弘氏は「潮目が変わった半導体市場、2023年以降の半導体市場を読み解く」と題して講演した。自動車向け半導体はプラス成長が継続するが、スマートフォン(スマホ)向け半導体が前年比でプラスに転じるのは23年下期、PC向けはそれより遅く23年10~12期と予測しており、メモリー市場に厳しさが増すことで23年の半導体市場全体では0.2%のマイナスになるとの見方を示した。

 昭和電工マテリアルズ(株)の阿部秀則氏は「昭和電工グループの半導体材料事業への取り組み」と題して、後工程の技術革新で半導体の高性能化に貢献していくことを表明。新年からレゾナックに社名を変更し、パッケージングソリューションセンタや共創コンソーシアム「JOINT2」などを通じて材料・プロセスのオープンイノベーションを進める考えを述べた。

 Omdiaシニアコンサルティングディレクターの南川明氏は「次世代のエレクトロニクス成長局面」と題して、マクロ経済の状況を解説した。円安で日本の半導体産業は長期的なメリットを受けやすくなり、製造業の国内回帰が始まったことを示唆。さらに、各国のグリーン関連投資は今後500兆円を超え、メタバースやEVなどカーボンニュートラルに資する分野が半導体の次なる成長を促進することを解説した。

 パネルセッションには、(株)アルバック執行役員の鄒弘綱氏、セミコンポータル編集長の津田建二氏、UBS証券マネージング・ディレクターの安井健二氏が登壇し、加熱する米中半導体摩擦下でのビジネスを展望した。

 23年市況について安井氏は、PCがマイナス11%、スマホがマイナス10%、自動車生産はプラス7%、WFE(前工程装置)はマイナス30%、半導体全体ではマイナス1.4%と予測。逆風がこれから強まると述べ、インフレが落ち着けば底を打つとみており、24年以降には明るい展望があると述べた。

 また、米国の中国に対する輸出規制の厳格化について、鄒氏は「中国市場の重要性は変わらず、ビジネスは無くならない。日本の法律に則る必要があるが、投資規模を考えると目を離せない。レガシー分野やパッケージ分野などでソリューションを提供し、ローカルの装置企業と差別化して戦っていく必要がある」と決意を述べた。

 さらに、Rapidus(株)を含めた日本の先端開発について、津田氏は「歓迎すべきこと。設計など解決すべき課題は山積だが、将来に向かっていける機会がようやくできた」と述べるなど3人ともポジティブに受け止め、初志貫徹で戦略を曲げず成し遂げてほしいとエールを送った。

(特別編集委員 津村明宏)

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 本イベントは12月31日までオンデマンド配信中。詳細はhttps://omdia.oatnd.com/global-semiconductor-day-fall2022まで。
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