電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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最悪期を脱し春から市況回復へ


~「第44回ディスプレイ産業フォーラム」開催~

2023/1/27

シニアディレクター 謝勤益氏に聞く
シニアディレクター 謝勤益氏に聞く
 大手調査会社のOMDIAは、1月30~31日にFPD市場総合セミナー「第44回 ディスプレイ産業フォーラム」をバーチャル形式で開催する。「ディスプレイ市場 2023年トップ10予測」と題して業界の最新動向を語るシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に注目ポイントを伺った。

―― 22年のFPDは厳しい市況でした。
 謝 パネルの出荷台数、出荷面積、売り上げのいずれも前年割れし、出荷面積は史上初めてマイナスになった。だが、すでに最悪期は脱した。23年は回復期に入り、どの程度まで市況が戻るかが焦点になる。

―― 23年の見通しは。
 謝 需要は4.5%伸びるが、生産キャパシティーは約1%減るとみている。これはLGディスプレー(LGD)が韓国G7と中国G8.5、あわせて月産20万枚分の液晶生産能力を休止したことが影響する。CECパンダのG6工場も休止した。これに加え、中国FPDメーカーにテレビ用パネルのキャパ増計画がないことがキャパの減少につながる。

―― 需給が引き締まりそうですね。
 謝 大型パネルの価格が下がり、値ごろ感から調達意欲が上がって、エンドユーザーの買い替えが進む。非需要期である1~3月はまだ力強さに欠けるが、4~6月期から5~15%の値上がりが見込める市況へ転じるとみている。

―― 注目ポイントは。
 謝 IT用有機ELの量産投資が本格化する。アップルが24年にiPad Pro、26年からMacbookに有機ELを採用するとみており、これに向けてサムスンディスプレー(SDC)、LGD、少し遅れてBOEがG8.7ハーフの量産ラインを構築する。
 当社では、IT用有機ELの需要は、22年の970万台から23年は1290万台、24年には2540万台へ拡大すると予測している。発光層の2層化(タンデム)による長寿命化、ガラス基板と薄膜封止を組み合わせたハイブリッド構造など、量産実現への技術的ハードルはきわめて高いが、SDCがトップを切って近いうちに量産装置を発注するだろう。

―― 大型の有機ELパネルについて。
 謝 SDCのQD-OLEDは、22年の100万台から23年は200万台へ倍増を目指す。22年は9割がテレビ、1割がモニター向けだったが、23年はテレビ130万台、モニター70万台という構成になる。
 LGDのWOLEDは、22年の出荷が740万台にとどまったが、23年はテレビ用97インチやモニター用45インチなどサイズの多様化によって870万台まで伸ばす計画だ。
 QD-OLED、WOLEDともに最新型のパネルでは新規発光材料の採用などで輝度の向上を競っており、これらの評価にも注目したい。

―― 中小型パネル市場については。
 謝 スマートフォン市場で有機ELの搭載比率が4割以上へ上昇し、これに伴って中国勢のシェアが上がってくる。韓国勢のキャパ増計画がほぼないためで、21年は17%、22年は23%だった中国勢のシェアが、23年は30%に達する見通しだ。
 このなかでBOEは年間1億台の出荷を計画しており、iPhone向けが増える。22年のiPhone14では1モデルにしか供給できなかったが、23年のiPhone15では2モデルに供給する見込みで、これによってアップル向けの供給量ではBOEがLGDを上回るとみている。

―― その他のアプリケーションについて。
 謝 アップルがアップルウオッチにマイクロLEDを採用しそうだ。24年に発売10周年を迎えることを記念して、アウトドア用を意識したハイエンドモデル「アップルウオッチ ウルトラ」を商品化し、これに既存モデルよりも少し大きい2.1インチのマイクロLEDを搭載する可能性が高まっている。
 LEDはエピスター、LTPOバックプレーンはLGDが供給し、アップルがかつて買収したラックスビューの技術も生かす。パネルコストは125ドルとかなり高額になりそうなため、セット価格は1200ドル程度が想定される。

(聞き手・特別編集委員 津村明宏)

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 「第44回 ディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はhttps://omdia.oatnd.com/displayまで(オンデマンド配信は2月28日まで)。
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