電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第494回

韓国、「新成長4.0戦略」を具体化へ


AIや量子コンピューティングに重点投資

2023/3/10

日本とのパートナーシップを強調する尹大統領(3月1日) 写真:韓国大統領室
日本とのパートナーシップを強調する尹大統領
(3月1日) 写真:韓国大統領室
 韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)政府が2022年に打ち出した「新成長4.0戦略」に対する細部課題を具体化し、その実行のためのプロジェクト案が23年2月に決まった。民間中心で大規模プロジェクトを推進し、輸出の反騰と投資の活性化を図る。


超格差のR&D戦略打ち出す

 新成長4.0戦略には、人工知能(AI)と半導体などの戦略産業をはじめ、モビリティーや量子コンピューター技術、宇宙探査、次世代物流、観光やコンテンツなど多様な分野が盛り込まれた。


 半導体は、民間を中心に先端プロセスの導入および先端ファンドリーのキャパシティー増大、AI向けファブレス分野の投資を拡大する。また、韓国国内における大規模な半導体クラスターを構築し、リチウムイオン2次電池(LiB)向けの次世代生産ラインの建設も進める。

 尹政府は、そうした具体的な実行案をベースに、23年3月にも非メモリーのエコシステム強化戦略と半導体・LiB・FPD産業に対する「超格差の研究開発(R&D)戦略」を矢継ぎ早に打ち出す。また、半導体関連の税額控除率アップなどで投資をサポートし、政策金融(5300億ウォン)と半導体ファンド(3000億ウォン)などを通じてファブレスを支援する。LiBも30年までにR&Dに19兆5000億ウォン、設備投資に30兆5000億ウォンなど、総額50兆ウォン(約5.26兆円)強の投資が執行される見通しだ。さらに、FPDパネル分野でもフレキシブル有機ELや量子ドットOLED(QD-OLED)など、次世代ディスプレーへのシフトを進めている。

25年の実用化目指す空飛ぶタクシー

 韓国版のチャットGPT開発に向けた制度的な基盤も整える。超巨大AI開発用のデータ分析に著作物が利用できるよう著作権法を改正し、中小企業と大学の超巨大AIモデルの活用を支援する。

 また、未来型交通産業である都心航空モビリティー(UAM、空飛ぶタクシー)は25年の実用化を目指し、23年8月から実証飛行テストを開始する。23年下期(7~12月)に規制特例を含めたUAM法案を制定する計画だ。自動航走は実証成果などを考慮し、C-ITS通信方式を23年内に決定、年末まで自動航走性能の認証制度を作る。

 さらに、20qubit量子コンピューターの開発および試演時期は、当初予定の24年末から23年下期に前倒しする。続いて、50qubit強の量子コンピューターは26年末をめどに構築する計画だ。現状で量子コンピューターの開発には韓国標準科学研究院(大田広域市儒城区)を筆頭に、10機関余りの産学研が参画している。韓国政府は、企業の参画拡大に向けて後続事業に対する予備妥当性調査を急いで、R&Dの税額控除率アップ、政策金融の支援などを進める。

 韓国国土交通省は、新成長4.0戦略の一環として「スマート物流インフラの構築方策」を発表し、26年のロボット配送から27年にはドローン配送の商業化を目指す。そのため、無人配送の法制化や安全基準の整備などといった制度的な基盤を段階的に進めていく計画だ。

 韓国政府は、新成長4.0戦略を尹政府の代表的な成長政策としてブランド化する方針だ。また、24年度予算案の立案時に関連事項を優先的に反映し、大規模なR&Dやインフラ構築事業はスピーディーな予備妥当性審査を通して、民間企業の投資計画の樹立に支障がないよう、財政投入でバックアップする計画だ。

電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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