商業施設新聞
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No.907

街づくりの熱量


高橋直也

2023/5/30

 先日、ある自治体の幹部と情報交換する機会があった。最新の商業施設の事例を伝えた一方、その自治体の動向・課題などを聞いた。その際、幹部が街づくりの課題として挙げたのは『行政が受け身になっていること』だった。その幹部は街づくりにおける問題意識が非常に強く、様々な取り組みをしなければならないと考えているのだが、行政全体としては「民間など、誰かがやってくれる」という空気があるのだという。そのため物事が前に進みにくいそうだ。

 実は、同様のことを取材で感じたことがある。以前、ある地方都市の街づくりを取材した際、どのような課題があるかをヒアリングした。課題は交通量など数値を含めて明確だった。しかし、対応策を聞くと「その辺は民間にね……」と、民間頼みだった。

街づくりが進む福岡市の天神地区
街づくりが進む福岡市の天神地区
 逆のパターンもある。天神ビッグバンなどで街づくりが猛烈に進む福岡市を取材したことがあるのだが、(失礼な言い方になるが)本当にこの人は行政の人か、と疑うほど問題意識が強く、熱量があった。ちなみに会ったのは幹部クラスではなく、リーダークラスの人だ。福岡市でなぜあそこまで街づくりが加速しているのか分かった気がした。

 問題意識や熱量は街づくりにつながる。しかし問題意識や熱量を新たに持ってもらうことは難しいようだ。街づくりを支援する企業と情報交換した際、「街づくりがメディアに取り上げられるのは成功したほんの一部の場所。実態は頓挫したり、進まないことがほとんど」と話していた。難しさの理由の一つは、「地元に街づくりをやろうと思っている人が少ない」ことだという。そのため、街づくり関連のイベントを開催するなどして、地元の熱量を上げることが第一歩となるという。

 最初に記した自治体幹部の話を踏まえると、こうした機運醸成の取り組みは自治体でこそ必要な気がしてくる。この幹部は危機感を持ってもらうため視察ツアーをしたい旨を話していたが、それも手段の一つだろう。自治体は街づくりに対して補助金などで支援をするが、内側(担当職員)に対して、もっとお金をかけても良いのかもしれない。
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