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第20回

ポストLiB、苛烈化する次世代2次電池競争


NEDOプロジェクト積極化、北米はオールUSA体制

2013/11/15

 リチウムイオン電池(LiB)の性能を上回る次世代2次電池に向けた研究開発が加速している。経済産業省や文部科学省は次世代2次電池に関する研究開発プロジェクトを実施し、研究開発を積極的にバックアップしている。一方、LiB産業で日本、韓国に遅れをとった北米は、約1億2000万ドルを投じて次世代2次電池の研究開発ハブを設立。次世代2次電池では主導権を握る考えだ。

求められる「安全性」と「性能」

 LiBは高容量、高電圧、高エネルギー密度に対応する2次電池。その性能の高さから携帯機器、民生用機器、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、電動スクーター、電動自転車、定置用電源などあらゆる用途で使用されている。

 一方で、今後の用途拡大や低環境社会の構築に向けてさらなる性能の向上が求められている。
 例えば、EVにおいてはエネルギー密度が直接的に航続距離につながるためより顕著だ。具体的には、現状のEVでは航続距離が120~200kmで、ガソリン自動車の航続距離(400~500km)と比較すると圧倒的に短い。エアコンなどの電子機器を使用するとさらに短縮する。これはLiBが高出力密度化に対応するため電極を薄膜化し、エネルギー密度が犠牲になっているのも要因の1つだが、ガソリン車並みの後続距離を目指すなら現状の2倍以上は必須だ。

 また、昨今のノートPCや携帯電話の発火事故に代表される安全性への懸念も叫ばれて久しいが、乗り物用途での発火事故は人命にも関わる重大事となるのは言うまでもない。2次電池メーカーはより安全性の高い正極材としてMnを採用したマンガン酸リチウムや3元系(Mn、Co、Niの化合物など)などで対応しているが、より抜本的に安全性が実現される技術が求められている。

 さらに、既存LiBの高いコストも課題として挙がっている。Li、Co、Niはいずれもレアメタルであり、また、産出する国も限られる。Liは、LiBが商用化された90年代以降から高騰傾向にある。現状では南米のチリやボリビアなどから輸入しているが、今後の需要の増加に加え政情悪化の可能性もあり、今後も安定的に確保できる保証はない。

 このようななか、クローズアップされているのが次世代2次電池だ。既存のLiBより高性能化し、安全性を高め低コスト化したもので、具体的には、既存LiBの性能を大幅に高めた「先進LiB」をはじめリチウム空気電池、リチウム銅電池、マグネシウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、全固体型LiBなどが候補として挙がっている。最も高性能が期待されるリチウム空気電池においては、既存LiBの10倍以上のエネルギー密度が可能と言われている。また、全固体型LiBは通常は液体の有機溶媒の電解質が使われているのに対し、固体を使うため安全性が高い。

日本のロードマップ

 経済産業省は2012年7月、20年における世界2次電池市場(20兆円)の国内関連企業シェア5割を目指すことを明言し、この目標に向けて課題や実施すべき施策などを整理した「蓄電池戦略」を策定。これを受けて同省傘下のNEDOは技術開発の課題を明確化・共有化することで企業や研究者の新規参入を促し、2次電池の性能向上や市場導入を促進することを目的にした「NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013」を発表した。


 同ロードマップは、自動車用2次電池、定置用2次電池のロードマップをはじめ、材料マップとしてLiB正極材、同負極材、同電解質、革新電池などを示している。例えば、自動車用2次電池のロードマップでは、出力密度重視型において正極材や電解質の高容量化、高電位化、負極材の高容量化などにより、性能を大幅に拡大するとしている。具体的には、20年でエネルギー密度200Wh/kg(現在は30~50Wh/kg)、出力密度2500W/kg(同1400~2000W/kg)、コスト約2万円/kWh(同約10万~15万円/kWh)だ。


 革新電池は先進LiBの性能限界を超える次世代2次電池として位置づけており、例として金属空気電池(リチウム空気電池、ナトリウム空気電池など)、リチウム硫黄電池、金属負極電池(負極材にカルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどを使った電池)などを挙げている。

 こうしたロードマップの達成に向けて、NEDOは数々の次世代2次電池開発プロジェクトを実施している。例えば、「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」(実施年度09~15年度)は、既存LiBの安全性や性能の飛躍的な向上や革新電池の技術開発を進めている。

 他方、文部科学省傘下のJST(科学技術振興機構)は、戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)の特別重点技術領域として、今年度から「次世代蓄電池プロジェクト」を加えている。これまでに蓄積された2次電池の成果を集約し、異分野からの知見を取り入れることで基礎・基盤研究を促進するものだ。全固体型電池、金属空気電池、リチウム硫黄電池、多価電池(マグネシウムイオン電池、アルミニウムイオン電池など)などが対象となる。「全固体電池チーム」「金属空気電池チーム」「その他電池(中長期型)チーム」「その他電池(長期型)チーム」に分けて実施している。

米国も総力戦

 一方、北米では米国エネルギー省(DOE)が、EVやスマートグリッド向けの次世代2次電池の研究開発を目的に研究開発ハブ「JCESR(Joint Center for Energy Storage Research)」を設立し、「オールUSA」による次世代2次電池の開発を加速する。アルゴンヌ国立研究所(米イリノイ州シカゴ) を中心にローレンスバークレー国立研究所、パシフィックノースウェスト国立研究所、サンディア国立研究所、SLAC国立加速器研究所などDOE傘下の研究所が含まれる。また、ノースウェスタン大学、シカゴ大学、ミシガン大学、イリノイ大学、ダウ・ケミカル、アプライド マテリアルズ、ジョンソン・コントロールズなども参加する。投資額は5年間で約1億2000万ドル( 約120億円)だ。

 北米では、50年後にエネルギー消費が2倍になることが予測されている。こうしたなか「25年までに消費される電力の25%を太陽光発電および風力発電でまかなう」「15年までに100万台の電気自動車またはプラグインハイブリッド自動車を走行する」という2つの目標を掲げているが、同目標を達成する必要不可欠な要素技術が次世代2次電池だ。

半導体産業新聞 編集部 記者 東 哲也

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