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メディカル・エクセレンス・ジャパン(下) 理事 山田紀子氏


日本の医療の海外展開推進、日ロ先端医療Cを計画中

2013/11/26

山田紀子氏
山田紀子氏
 JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナーで、日本の医療の海外展開(アウトバウンド)、日本への患者誘導(インバウンド)を促進する一般社団法人メディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)の北野選也理事と山田紀子理事は、講演「日本再興戦略を踏まえ本格稼働段階に入った新生MEJの具体的事業展開と新たなプロジェクト~医療機材・医療技術と共に健康の輸出入ビッグ事業~」を行った。連載2回目は、山田氏による講演「MEJの概要、具体的な事業の例(インバウンド):医療通訳について、具体的な事業の例(アウトバウンド):ロシア・ウラジオストクにおける画像診断センター/これからのプロジェクト・モスクワ先端医療センター構想、これからのMEJが目指すもの」を紹介する。
◆新生MEJと国際展開タスクフォースが開始
 MEJの設立経緯は、経済産業省が2009年度に実施したメディカル・ツーリズム調査事業、10年度の国際医療交流調査研究事業を通じて外国人患者受け入れのサポートを実施し、現在も実施している。11年1月に同省調査事業のコンソーシアム名称が「Medical Excellence Japan」に決定、外国人患者受け入れを中心とした組織の組成検討が始まった。11年10月に法人格(一般社団法人)を取得、インバウンドを中心に活動を開始した。
 12年6月には、経済産業省内でMEJ改組のために、医療機器メーカーを中心にタスクフォースを発足。今年1月に主要医療機器メーカーがMEJに加入、4月に定款、組織改編し、新生MEJを発足(山本修三理事長就任)、6月の記念式典を経て、8月から内閣官房(健康・医療戦略室)を中心に関係5省と連携を取りながら、医療の国際展開をスタートした。
 内閣官房にて、各省庁が連携するための「医療国際展開タスクフォース」が発足。内閣官房は中心となって、具体的案件の情報整理、日本の医療の国際展開に関する情報共有、広範な協力関係の構築・拡充を担い、経済産業省は海外における日本の医療技術・サービスの事業促進、インバウンドの医療環境整備、厚生労働省関係案件(政策形成支援、協力協定など)の整理、相手国との関係構築、医療基盤構築の支援、日本の医療サービスの導入促進、文部科学省が関係案件(協力協定、専門家の派遣など)の整理、留学経験者ネットワーク、重粒子線がん治療に関する各国とのチャネル構築、外務省が相手国の医療事情・ニーズ把握、保健当局との調整など、ODA案件の整理、医療関係者の渡航や海外患者・研修生などの受け入れ支援、総務省が関係案件の整理、相手国通信インフラ事情の把握、通信インフラ等活用事業(遠隔治療とか遠隔診断など)の組成支援などの機能を果たす。
 外務省に関しては、例えば、医療滞在ビザの運用が11年12月から始まっているが、今後の状況に応じて制度の見直しなどが必要となることも考えられる。
 MEJは、国内医療機関および企業(医療機器メーカーなど)と連携し、アウトバウンド支援事業(調査・情報の蓄積、現地パートナーとの交渉、海外での医療事業の組成・運営)、基盤整備事業(調査/広報活動、人材の育成支援、海外の人的ネットワーク構築:日本への留学生のネットワークを含む、国際遠隔医療システムなど構築)、インバウンド支援事業(外国人患者の国内医療機関への受け入れ支援)を手がけ、日本ブランドの海外拠点(総合病院/専門病院/診断センター/クリニックの設置、各施設がMEJの拠点としての日本医療の窓口機能、新興国における保険制度などの構築・運営支援など)といった事業を推進する。


◆医療機関および多領域の企業の加盟促進へ
 連携医療機関は、国内の有力病院など57機関に上り、13年度中に10機関程度が加わる見通しだ。また、MEJには医療機器メーカー約30社が参加するが、今後は、医薬/流通、医療関連サービス、医療コンサル、ゼネコンなども加えていく考えである。
 医療機関および企業の加盟に際しては、理事会で承認される必要があり、また、入会金および年会費はその事業者の資産規模に応じて設定されている。
 進行中の事業(インバウンド)の通訳講座は10年度から開始しており、13年度は東京外国語大学オープンアカデミーにて「医療外国語講座」として短期講座の開催を予定している。英語、中国語、ロシア語を対象にオリジナルテキストも利用する。
◆ロシアで北斗画像診断センターが事業を開始
 アウトバウンド事業は、山田氏が担当するロシア語圏の2つのプロジェクトを紹介した。
 その1つ、ロシア(ウラジオストク)・HOKUTO画像診断センターは、今年5月から事業を開始した。ウラジオストクの医療機関敷地内に設立した診断センターで、第二次予防医療の普及を目的とした人間ドック等の検査のほか、地元医療機関からの撮影依頼を受けて、撮影・画像診断・所見を提供するとともに、人材教育を行う。さらに、画像診断以外の医療ニーズがあれば、脳神経外科などの北斗病院(北海道)や、それ以外の日本の医療機関が対応。また、北斗病院が遠隔画像診断を手がける。事業規模は約4億円で、日立メディコなどのMRI、CT、エコーなどを導入している。
 施設の基本設計までは日本で手がけ、実施設計以降はロシアの企業が担当。建設監理、メンテナンスや改修に際しては、日本から指導している。
 HOKUTO画像診断センターでは、1日に30人程度の人間ドックと個別の検体・画像検査を行っており、これまでドック受診の概念がなかったロシア人にドック受診のニーズが生まれ、また、これまで海外で受診していた人がここで受診するようになった。今後はロシアにおける治療の可能性を調査していく考えである。
◆モスクワで日ロ先端医療センターを計画中
 もう1つは、(仮称)日ロ先端医療センター計画(案)で、モスクワで設置を検討している。事業費の目安は約100億円。陽子線治療だけでなく、がんの診断および治療が適切に行われる施設を目指す。合わせて、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の共同治験の可能性を調査する。
◆中東・ロシア語圏・ASEANで医療需要調査
 山田氏は、MEJとして中東諸国、ロシア語圏諸国、ASEAN諸国などの相手国の需要調査を進め、チャートで示す準備を進めていると説明、プロジェクトの可能性を探っている。機器だけでなく、日本の優れたサービスを提供することが目的。医薬品に関しては各国の法規制が難しいものの、どういう薬が提供可能で、求められているかの調査が必要。さらに、相手国によっては、日本のような保険制度を利用できるかどうかの検討もできるかもしれないと展望を説明した。
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