電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第100回

日本電子部品業界は絶好調!


~バブルじゃないよね~

2015/6/12

 実生活の台所は火の車、貧乏暇なしで毎日を二十日鼠のように走り回っているのだが、世の中の風はそうでもないらしい。私鉄沿線も含め、東京都内は再開発の嵐。出張で出掛けた地方都市も再開発の真っ最中。どこもかしこもブルドーザーが街を引っ掻き回し、まるで日本全土が総入れ替えの作業に突入しているようだ。ビルの耐久年数など、お構いなし。とりあえず壊して、建てる。これって、もしかしたら、バブル?

強い日系電子部品

 エレクトロニクス業界も好調のようだ。海外大手半導体メーカーの設備投資計画が、それを象徴する。国内に目を向ければ、電子部品業界が飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続けている。電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、2014年度の世界の電子部品市場は21兆5229億円。15年度は14年度比4.5%増の22兆4878億円に達する見通しだ。

 半導体の世界市場35兆5000億円には手が届かないものの、日本陣営の頑張りには目を見張るものがある。半導体業界における日系メーカーのシェアは10%程度。これに対し、日系電子部品メーカーは、世界市場の37.7%を制す。とりわけ、受動部品と変換部品の市場で、圧倒的な強さを誇る。コンデンサーやコイル/トランス、抵抗器など受動部品の世界市場は3兆4801億円で、同市場の半分、50.1%を日系メーカーが占める。もっと凄いのは小型モーターなどに代表される変換部品で、2兆8665億円市場のうち75.8%は日本製である。


相次ぐ国内新工場計画

 儲かってますな。儲かっているだけに、設備投資にも勢いがある。例えば一部を紹介するだけでも、タイコエレクトロニクスジャパンは13年9月に静岡県掛川市にマザー工場を、村田製作所は15年9月の竣工予定で福井県越前市に積層セラミックコンデンサー(MLCC)量産ファブを建設中である。同じくMLCC量産を焦点に、太陽誘電が16年4月の予定で新潟県上越市に、TDKも来年末にスマートフォン(スマホ)向け部品やフェライト材の量産を担う工場を秋田県に立ち上げる計画である。

 工場建設を国内で推進する電子部品業界だが、主戦場は日本ではない。アジアだ。とりわけ中国がダントツで、電子部品需要の約40%を占める。これはスマホのサプライチェーンを見れば、よく分かる。
 電子部品メーカーは自社製品を採用してもらうため、スマホメーカーに営業活動を展開する。これは当然のこと。しかし、納品先はスマホメーカーではなく、スマホメーカーから生産を委託されたEMS(生産受託サービス)である。また、電子部品メーカーは次期スマホの設計コンセプトをEMSから入手し、次の商品展開に向けての準備を進めることになる。このため、電子部品メーカー各社の売上高には、EMSとの契約金も含まれる。2014年度の電子部品メーカーの決算において、各社ともスマホ関連を手がけたにも関わらず、業績に格差が生まれたのは、組んだスマホメーカーの力量に依存するところが大きい。
 EMSは中国を筆頭に、アジア地域に生産拠点を展開。日本とアジアでの税金や電力・原材料費、人件費などを考慮すると、現地生産・現地調達に踏み切らざるを得なくなる。日系電子部品メーカーの海外生産比率が70%を超えるのは、もはや仕方ないことである。

2020年以降のビジョンは?

 では、需要が減少傾向にある国内において、電子部品メーカーの積極的な設備投資が意味するのは、生産製品のすみ分けということになる。汎用・量産品は海外、高信頼性を有するカスタム品は国内工場が担う。スマホ搭載部品など、需要旺盛な電子部品の生産サポートも、一部、国内工場が担うことになる。

 変換部品の1つである小型モーターは、どちらかといえば、労働集約的な汎用・量産電子部品である。本来なら日本製よりも、日本陣営を追随する中国、韓国、台湾など、アジア電子部品メーカーが制する分野である。2兆8665億円市場のうち、日本陣営が75.8%ものシェアを有するのは、高付加価値用途を日系メーカーが押さえていると推測する。今後はロボットの関節などへの搭載も期待されており、同市場における日本陣営の優位性は続くであろう。逆に、コネクターなどの接続部品は、世界の電子部品市場21兆5229億円のうち、約35%にあたる7兆3540億円の市場があるにも関わらず、日系メーカーのシェアは24.3%にとどまる。汎用・量産品が多く、この分野はアジア勢の牙城であろう。それでも1兆7870億円の市場を日系メーカーが死守したのは、車載用途など高信頼性を有するアプリ分野で採用された成果と思う。

 さて、今後のアプリ展開をにらんでは、電子部品業界も半導体業界と同じ。スマホの進化系となるウエアラブル機器、自動走行に向かって突き進む車載用途、そのほかヘルスケアやロボット、エネルギー関連などが続く。だけど、どれもこれもその見通しは東京オリンピック開催に焦点を合わせた2020年まで。その後のビジョンを描くのは勇み足? 日本全国で展開中の再開発とは、一線を画してほしい。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 松下晋司

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