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(株)日本介護福祉グループ、新築・全個室対応のお泊りデイサービスを開発


介護従事者向け「逆求人」サイト開始、「けあらぶ」で高齢者専門のマッチング

2016/1/12

藤田英明氏
藤田英明氏
 (株)日本介護福祉グループ(東京都墨田区両国1-12-8、Tel.03-5625-4456)は、飯田グループホールディングスのグループ子会社である東栄住宅、ウェルフューチャーと業務提携した。これにより、法改正対応を強化した夜間対応型(お泊り)デイサービスの進化モデルである、新築・全個室対応の夜間対応型(お泊り)デイサービスの展開を2016年から開始する。また、日本介護福祉グループとは別に、新会社「けあらぶ」を設置し、介護従事者向け「逆求人」サイトのSCOUT ME KAIGO(スカウト ミー カイゴ)を提供開始した。両事業について代表取締役の藤田英明氏に聞いた。

―― 業務提携の背景について。
 藤田 日本には、特別養護老人ホームの入居待機者が大勢いて、その方々が入居できるまでの対処が介護離職をゼロにするうえで急務と考えている。認知症を患う方も多く、その方々の家庭での介護者には大きな負担がかかっている。そのため、デイサービスだけでなく、夜間にも対応する高齢者施設が必要と考えてきた。日本介護福祉グループは「茶話本舗」デイサービス(夜間対応型)を中心に全国で719拠点(フランチャイズ〈FC〉事業所含む、10月末時点)の介護事業所を運営している。空き家を活用するなどして開設コストを下げ、昼間利用者10人、夜間利用者5人を基本として運営してきた。だが、改正介護保険法では16年度から日中利用者18人(夜間利用者9人)の地域密着型サービスに移行することから、新たな不動産物件の開拓が急務となっている。また消防法の改正により、宿泊を伴う275m²以下の介護施設にもスプリンクラー設備の設置が義務づけられ、物件の改修や、導入スプリンクラー設備の開発が必要となっている。そのため、不動産ノウハウ、シニア事業の企画、不動産管理に精通した東栄住宅、ウェルフューチャーと業務提携し、競争力のあるサービスを開発・提供することにした。

―― 新築計画と施設仕様について。
茶話本舗の内部
茶話本舗の内部
 藤田 お泊りスペースは個室(7.43m²以上)対応で9部屋を完備し、また消防法改正に対応してスプリンクラーを設置、2~3階建てモデルはエレベーターを完備し、耐震や火災に対する安全・安心を強化する。当社のFCには、すでに約300法人が加盟しており、そのうちどの程度の法人数が新形態で業務展開するかを予想するのは難しいが、FCは、1施設につき1000万~1500万円の初期投資で済むと思う。

―― 8月には新会社「けあらぶ」を設立し、11月から介護従事者向け「逆求人」サイトを提供開始した。
 藤田 このSCOUT ME KAIGOは、離職率が非常に高い介護従事者が、自分のプロフィールや希望年収・勤務地・サービス種類などを登録し、法人や企業が登録者をスカウトすることによって、従事者と事業者の条件面でのミスマッチを解消し、介護従事者の離職率を低減させることを目的とした介護業界初の「逆求人」サイトである。11月に開始した事業者向けサービス「スカウトし放題プラン」は、月額3万円(税別)で登録者に対して自由にオファーメールを送信できる。もちろん、登録者の介護従事者はすべて無料である。

―― 3つの特徴のうち1つ目は、介護人材と法人・企業とのミスマッチの解消だ。
 藤田 「求人を見て就職したが賃金が思ったより低かった」「転職したいが、求人を見て転職するとキャリアダウンになる業界だからどうしようか」とか、「勤務場所や希望職種が希望と全く違う」など、これまでの介護求人にはミスマッチを生んでしまう構造があった。SCOUT ME KAIGOはそのミスマッチを解消することで、介護従事者の離職を防止する。

―― 2つ目の特徴は、優秀な介護人材層へのアプローチ。
 藤田 介護現場で中心的役割を担っている人材は、さまざまな業務を兼務している人が多く、転職活動する時間がないのが実情だ。その結果、これまでの介護求人ではそのような方々へアプローチすることができなかった。SCOUT ME KAIGOでは、そのような優秀な中心的役割を担う介護従事者が本サイトに登録することで、「待ちの転職活動」ができるようにし、法人・企業が優秀な人材に接触できるようにした。

―― 3つ目は介護人材のキャリアアップ。
 藤田 現在の介護業界での転職は、一般的にキャリアダウンの傾向にある。「転職すると給料が下がる」「資格や経歴が給料に反映されない」「転職すると一からやり直し」など、介護業界では転職がキャリアアップにつながらない傾向が強くある。SCOUT ME KAIGOでは、介護従事者が保有する資格や経歴、希望年収、希望職種などを事前に登録し、その条件で興味を持った法人・企業が登録者にオファーをかけるので、介護従事者のキャリアアップにつながる。「キャリアアップしたい介護人材」と「そうした人材が欲しい法人・企業」との懸け橋になることで、介護従事者のキャリアアップと、介護事業運営法人・企業の発展に貢献する。

―― サイトを開発したきっかけは何か。
 藤田 世界に類を見ない日本の急速な高齢化に伴い、介護業界は25年までの10年間で、100万人以上の介護人材の増加が必要とされるが、毎年22万人が介護業界に流入し、20万人が介護業界を去っている。その最大の理由は介護・福祉事業者と介護従事者のミスマッチだ。そのミスマッチを解消し、介護従事者の離職を防止するためにSCOUT ME KAIGOを開発した。私が介護業界に携わって10年以上の間ずっと必要なサイトだと考え続けてきた。

―― 今後の展望について。
 藤田 すでに10月から転職希望のある介護従事者の事前登録が始まっており、11月から法人・企業向けに「スカウトし放題プラン」(1カ月間3万円定額)を開始した。15年度末までに介護従事者の登録者数を1万人、法人・企業で300社への導入を目指している。また、本サイト登録者と法人・企業とのマッチングを目的とした交流会も開催する予定である。

―― 日本介護福祉グループとは別に、「けあらぶ」を立ち上げた理由は。
 藤田 今後は色々なヘルスケアに特化したサービスへの参入を考えている。例えば、高齢者専門のマッチングサービス。これは、私の母親を見ていて感じたことだが、若くして伴侶を失い、家にこもりがちだった。腰や目が悪くなってきたと弱音を吐いていた私の母(60歳)が、あるきっかけで新しい友人ができたことで、食事に出かけるなど、外出の機会が増え、元気になっていった。そこからヒントを得て、介護予防サービスを利用しなくても、高齢者がいつまでも元気でいられるサービスを作ることができるのではないかと考えた。このように、これまでの日本介護福祉グループの毛色とは違うサービスをトライ&エラーの精神で機動性をもって展開していくためには、別会社として新規事業を立ち上げる方が理に適っている。

(聞き手・笹倉聖一記者)

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