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大阪はびきの医療C、196億円投じ開院、最新鋭機器で専門医療を強化(2)


救急・がん・呼吸器・アレルギー・分娩を強化、感染症拡大時には病棟全体を陰圧化

2023/9/5

 大阪府立病院機構大阪はびきの医療センター(旧大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター、大阪府羽曳野市はびきの3-7-1、Tel.072-957-2121)が5月8日に開院した新病院は、呼吸器・アレルギー・感染症など専門医療機能の充実と、地域の基幹病院としての高度専門医療機能の強化を図っている。

内視鏡手術支援ロボット
内視鏡手術支援ロボット
 かつて大阪はびきの医療センターは結核療養者を中心とする1000床を備えた病院であったが、救急ニーズの拡大、がん治療の症例増加、糖尿・腎臓病患者の増加、年間1000件程度で推移する分娩件数の動きなどを踏まえ、新病院の開院を機に結核病床を減らし、専門医療機能の充実を図った。救急は南河内医療圏の二次救急を担っており、旧病院は救急エリアが小さかったが、新病院では処置室を3室設け、うち1室は感染症にも対応できる処置室を整備。ICUは4床(うち個室は2床)、HCUは12床(うち個室は8床)救急専用のエレベーターも設置しており、新型コロナが流行した際は、5階の感染症病棟へ直通できる動線を確保している。同様に、1階の結核病棟も感染専用のエレベーターを設けており、こうした救急・感染専用のエレベーターに加え、一般エレベーター、医療エレベーター、給食エレベーターを備えている。

 感染症(結核や新型コロナなど)への対応強化では、病棟の運用方法に工夫を凝らしたほか、最新の換気システムを採用している。運用方法では新型コロナといった感染症拡大時の対応として、感染症病床(6床)を備えた5階において、最大68床まで運用できる体制を整えた。ゾーニングは常開防火扉を閉鎖して形成し、スタッフステーションのカウンターには仮設用スクリーンを設置して、既存の病棟エリアと区画を分ける。このような工夫を凝らすことで、一般病棟への影響を最小限に抑え、感染症病棟の運用を実現させる。

ICUの様子
ICUの様子
3階に設けたHCU
3階に設けたHCU

スタッフステーションのカウンターには仮設用スクリーンを設置
スタッフステーションのカウンターには
仮設用スクリーンを設置
 病室でも感染症への対応を強化。施工会社である(株)竹中工務店の協力を得て、感染症の拡大時には病棟全体を陰圧化できる、病室陰圧切り替え換気システムを整備した。病室陰圧切り替え換気システムは空調ダクト内のダンパー開度の操作により、病室を通常時の等圧から、感染症の流行時に陰圧への変更が可能。平常時は給排気をそれぞれ同風量とすることで、対象病室を第1種換気、廊下に対して等圧としている。感染症の流行時は、給気ダクト分岐部のダンパーについて、病室側を閉鎖し廊下側を開放することで、病室を第3種換気、陰圧に変更できる。このダンパーは手動での開度調整ができ、ダンパー開度を50%に設定することで、平常時の50%のSOAを供給しつつ、病室を陰圧とすることも可能。1部屋ずつを陰圧化するよりも設備投資が抑えられる画期的な換気システムだ。

特別個室
特別個室
 地域の基幹病院としての高度専門医療機能の強化では、急性期機能の強化、がん診療拠点病院機能の充実、生活習慣病への対策強化、分娩室・NICU隣接配置による連携強化の4つに取り組んだ。がん診療拠点病院機能の充実では従来の肺がんを中心に、山口誓司院長が担当する泌尿器がん、子宮がんや乳腺がんといった婦人科系がん、消化器がんの治療強化に努め、肺がん治療では内視鏡手術支援ロボット「インテュイティブサージカル ダビンチ・システム」を導入。同システムは1台導入したが、コンソールは2台備えており、指導員を置き、研修用としても活用する。このほか、ロボティックアーム手術支援装置(股関節・膝関節用)やAIを活用した読影支援システムも導入している。

眺望も楽しめる最上階のレストラン
眺望も楽しめる最上階のレストラン
 病棟は自然が多い羽曳野市という地域性を考慮し、1フロアにすみれ、たちばな、ひまわり、さくらの4病棟を配置。1階の結核病棟は閉鎖的なイメージが強いため、病棟周辺に庭園(はびきのガーデン)を設け、その庭園を展望デッキで眺められる仕組みを構築している。また、5階の特別個室(1室のみ)には、キッチンのほか、テレビ、オーブン、ケトル、L字ソファー、足かけ椅子などを揃え、VIPの入院患者にも対応できる体制を整備。6階には病院職員だけでなく、外来患者や患者の家族も利用できるレストランも設置し、軽食から定食まで幅広いメニューを提供していく。なお、新病院の開院に伴い、旧病院の病棟(12階建て)は取り壊して駐車場を整備するが、外来棟は職員の控え室、更衣室、会議室として活用する方針だ。

(岡田光記者)
(この稿終わり)

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