電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第183回

サムスン、新型スマホの発火原因を発表


2017/2/3

 サムスン電子の新型スマートフォン(スマホ)Galaxy Note7の発火による大量リコール問題は、バッテリーの欠陥と結論づけられた。2016年8月から米国や韓国などで販売された同製品は発火事故が相次ぎ、製造や販売が全面的に中止された。

バッテリーの欠陥が発火原因

 サムスン電子は1月23日に記者会見を開き、Galaxy Note7の発火原因はバッテリー自体の不具合にあったと、最終的に発表した。また、次期製品「Galaxy S8」などスマホに対する安全性強化のための部品専門チーム創設や多重安全システムの適用、専門諮問グループの編成など、今後の具体的な安全対策を提示した。

高東真(ゴ・ドンジン)サムスン電子無線事業部社長
発火原因を発表するゴ・ドンジン社長
 高東真(ゴ・ドンジン)サムスン電子無線事業部社長は、この日、「20万台のGalaxy Note7と3万個のバッテリーで行った大規模な充電・放電テストの結果、発火原因を突き止めた」とし、「同製品に採用されたバッテリーからそれぞれ異なる原因で不具合が起きることを確認した」と説明した。また、高社長は「大規模な再現テスト設備を構築し、ユーザーの条件と類似の環境下、充電・放電テストを経て発火要因が再現できた」といい、「これを通じて的確な分析ができた」と付け加えた。

 これによって、一部で指摘されたサムスン電子による設計ミスとソフトウエアの欠陥については否定した。同社は今回の原因究明に対する信頼性を高めるために、海外の専門調査機関の関係者数人を記者会見に同席させた。

 ここ3カ月間、Galaxy Note7の発火原因を調査したサムスン電子とUL(米イリノイ州)など海外検証機関3社が下した結論の骨子は、1次的な責任はバッテリーを作ったサムスンSDIとATL(中国)、2次的な責任は限られたサイズの高容量バッテリーを注文したサムスン電子にあったと指摘した。

無理なバッテリーの設計との指摘も

 今回発表した内容を総合すると、16年9月に1次リコールを起こしたサムスンSDI製バッテリーでは、発火したバッテリーの大半に右端部門が圧迫された欠陥が発見されたほか、全般的に分離膜が薄かった。また、2次リコールを招いたATL製バッテリーは、発火したバッテリーの陰極板に小さな突起が見つかり、一部の製品は分離膜に不可欠な絶縁テープがなかった。つまりは、バッテリー自体に問題があったというわけだ。

 だが、このような不具合が発火につながった背景には、「無理なバッテリー設計」があるという指摘が支配的だ。サイズを小さくしつつ容量を増やすために、充電材を両脇に詰めることによって、陽極と陰極を分離する分離膜が薄くなり、バッテリー内部の密度が高くなりすぎたのであろう。

 原因調査に参加したULは「分離膜が薄くなり、製造欠陥に対する耐性が弱まった」といい、「とりわけ、電力の密度が上昇すると、発火の可能性は高くなることが確認された」と説明した。

8ポイントの安全性検査プロセス導入

バッテリーの大規模な充電・放電テストの様子(写真提供・サムスン電子)
バッテリーの大規模な充電・放電テストの様子(写真提供・サムスン電子)
 サムスン電子は今後、Galaxy Note7の発火原因であるバッテリーの内部問題が解決できる特殊装置を導入する。また、バッテリーと完成品に対する大量充電・放電テスト、使用者の実使用環境を考慮した加速試験を強化する「8ポイントのバッテリー安全性検査プロセス」を導入した。さらに、「バッテリーの解体検査」も実施する。バッテリー内部の融着状態や絶縁状態、工程での品質を確認する検査である。バッテリーの漏液を感知する「総揮発性有機化合物(TVOC)検査」プロセスも導入する。

 同社は、8ポイントのバッテリー安全性検査以外に、製品の安全性を高める多重安全システムを整える。コア部品の設計と検証、工程管理などを専門に担当する「部品専担チーム」を設けた。また、新製品の企画段階から安全を最優先課題として多重安全システムを適用する。バッテリーの実装空間を追加で確保し、ユーザーが使用中に製品を落としてもバッテリーに加わる物理的な衝撃を最小化する。

「品質経営」に大きな汚点

 同社の品質強化策について、韓国の専門家らは多様な見解を表している。総論的な話に終始し、具体的な中身に欠けており、これといった評価を下しにくいという。品質強化には「完璧」はないため、継続的な改善努力が重要だとアドバイスしている。

 Galaxy Note7のリコール問題は、韓国を代表する企業と賞賛されるサムスン電子の「品質経営」に大きな汚点を残した。大量リコールで7兆ウォン(約7000億円)の損失を被った。製品信頼度の墜落で、スマホだけではなく、他の分野でもブランドイメージの失墜が懸念されている。性能アップと製品の開発速度にブレーキがかかっても、品質管理を通じた信頼度の回復が急務だ。

 同社は16年に201兆ウォン(約20.1兆円)の売上高と29兆ウォン(約2.9兆円)強の営業利益を達成した。サムスン電子には、このような利益に相応しい製品安全策が求められている。

電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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