電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第511回

緩やかな伸びにとどまる自動車世界市場


23年下期からの挽回生産加速に期待

2023/7/14

 国内調査会社によると、2022年の世界の自動車販売台数は、前年比1.3%減(106万台減)の8145万台となった。8000万台の大台は維持したものの、コロナ禍前の19年の9117万台規模からは約10%減(972万台減)と厳しい状況を余儀なくされた。半導体の供給不足などを受け、期初に描いた生産計画に未達のOEMもあったなかで、辛うじて前年並みを確保した状況であった。

 地域別では、アジアの新興国での販売が好調に推移したが、欧米ではサプライチェーンの混乱や車載半導体・部品の供給不足に加え、物価の高騰やロシアのウクライナ侵攻など、地政学的な緊張の高まりも相まって経済が停滞したことが影響した。国別では世界最大の自動車市場である中国が同2.2%増の2686万台となり、19年比でも4.4%増と堅調に推移している。また、インドは前年比25.8%増の476万台と2桁の高成長を果たし、初めて日本を抜いて世界第3位となった。ロックダウンなどが続いたコロナ禍の影響が収束しつつあり、富裕層を中心に個人消費が大きく回復したことが追い風となったもよう。なお、22年の米国は同7.7%減の1421万台、ドイツは同0.4%減の293万台、また日本も同5.6%減の420万台となり、先進国は軒並みマイナス成長を余儀なくされた。

 なお、23年の自動車世界販売台数は、前年比3.6%増の8435万台が見込まれているが、日系OEMでは半導体の供給不足などの課題が解消する下期からは、挽回生産を加速させるとしており、海外OEMを含め各社がどれだけ生産を上積みできるのか、注視していく必要がある。


日系OEMのグローバル販売はまだら模様

23年上期に国内新車販売でトップとなったホンダの「N-BOX」
23年上期に国内新車販売で
トップとなったホンダの「N-BOX」
 一方、日系OEM主要7社の22年度の販売台数は、トヨタ、スズキ、SUBARUの3社がプラス成長となったものの、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車の4社がマイナス成長となり、7社合計では前年度比2.6%減の2334.6万台にとどまった。22年に前年比25%以上の高成長を記録したインドをメーンマーケットとしているスズキは同10.8%増の300万台を販売。また、米国を主戦場としているSUBARUは、リテーラーをはじめとするバリューチェーン全体での効率的な販売が奏功し、同16.1%増の85.2万台を販売し、それぞれ2桁の高成長を果たした。



【トヨタ自動車】

 22年度グループ販売台数は、前年度比1.7%%増の1055.8万台。また、トヨタ・レクサスの販売台数は、同1%増の961万台。このうち電動車は284.9万台で、構成比率は前年度の28.4%から1.2ポイント増加し、29.6%となった。車種別の内訳は、ハイブリッド車(HEV)が同6%増の272万台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が同24%減の8.8万台、電気自動車(BEV)が同130%増の3.8万台、燃料電池車(FCV)が同36%減の3000台。

 23年度は、グループ販売台数が前年度比7.8%増の1138万台を計画。生産台数(トヨタ・レクサス)は、同10.6%増の1010万台を見込む。「前期からの増産の背景としては、半導体の供給リスクの見える化により、代替品の検討などに取り組んできたこと、さらには工場の稼働率向上に向けた改善を推進してきた結果、3月以降、高いレベルの生産が継続できていることが挙げられる。各地域の販売店では、顧客の需要に生産が追い付いていない状況が続いており、生産台数のさらなる積み上げに向けて、仕入先などと協力しながら、取り組みを強化していく」と副社長・CFOの宮崎洋一氏は語った。

【ホンダ】

 23年度の販売台数としては、中国市場の先行きが不透明ではあるものの、グローバルでは22年度から続く良好なモデルサイクルに加えて、生産工場の稼働率改善による市場への供給回復などもあり、前年度比18%増(66.3万台増)の435万台を計画している。

 なお、研究開発費については、9800億円(全社)を投じる計画で、「これは過去最高レベルと認識している。従来のICE(内燃機関)、HEVのプラットフォーム開発に加えて、BEV関連の研究開発がいよいよ本格化してきていることが背景にある」と代表執行役副社長の青山真二氏は語った。

 電動化へ向けた取り組みとしては、23年4月にPOSCOとカーボンニュートラルの実現に向けた包括的パートナーシップの検討を開始したと発表。また、中国上海モーターショー(23年4月18~27日開催)では、BEV「e:N(イー・エヌ)」シリーズ第2弾となる「e:NP2 Prototype(イーエヌピーツー プロトタイプ)」、第3弾となるコンセプトモデル「e:N SUV 序」を世界初公開するなど、電動車のさらなる拡販に向け攻勢を強めている。

【日産自動車】

 22年度通期のグローバル販売は、前年度比15%減の330.5万台となった。日本では電動車人気の高まりを受けて同6%増の45.4万台とプラス成長で推移。米国では事業の質の改善に集中的に取り組み、中型ピックアップではフロンティアのセグメントシェアが10%に達したが、北米市場は同14%減の102.3万台と大きく落ち込んだ。また、中国でもコロナ禍によるロックダウンと生産活動の制約、半導体の供給不足などが相まって同24%減の104.5万台となった。欧州は同9%減の30.8万台のマイナス成長となったものの、堅調なEV販売に加え、e-Power搭載車種の投入が寄与し、販売における電動化比率は前年度の12%から23%へほぼ倍増した。

 一方、23年度の見通しは、生産台数が前年度の338.1万台から71.9万台増の410万台、販売台数は同69.5万台増の400万台を計画。「半導体供給不足は継続しているものの、状況は確実に改善してきている。中国もゼロコロナ政策の転換により経済活動は正常化。また、当社ではNissan NEXTの取り組みを通じてこれまでに投入してきた新型車が、好評を得ており、多くの車種でセグメントシェアの向上を実現している。これらの結果、生産・販売ともに前年度比21%増の大幅な成長を想定している」と社長兼CEOの内田誠氏は語った。

【スズキ】

 23年度の生産台数は、22年度の321万台から5.3万台増の326.3万台を計画。販売台数については、スズキが開発し、トヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)で生産を開始した新型SUV「グランドビターラ」の販売もスタートすることから、前年度比6.2%増の318.6万台を見込む。

 「国内生産の方で少々半導体による減産影響を見込まざるを得ないのと、インドについても足元で多少減産影響が発生しているが、年間での挽回は図っていかねばならない。それ以外の地域での減産は特に見込んでいない。いまだ半導体不足の影響は拭い切れていない状況ではあるが、いつまでも引きずるわけにはいかないので、調達方法の改善や契約の見直しなど、精力的に進めている」と鈴木俊宏社長は語った。

【マツダ】

 22年度は、生産台数が前年度比11%増の113.5万台と回復したものの、グローバル販売台数は同11%減の111万台となった。販売ネットワーク再編中で商品の端境期にある中国での販売が大幅に減少したことに加え、22年度は期初より在庫が枯渇するとともに22年4~6月期の減産影響などにより上期の販売が低調に推移。結果として通期では台数減を余儀なくされた。

 23年度の世界販売台数は、前年度比17%増の130万台を計画している。7月から米アラバマ工場で生産体制の2直化がスタートするとともにラージ商品の本格導入で、出荷・販売台数が北米や欧州市場を中心に増加することが見込まれる。中国では上海モーターショーでCX-50の販売予約を開始。新商品の導入などにより販売台数を伸ばすとしている。「半導体の調達については各種対応が進捗しており、前年よりも安定的に調達ができるものと期待しているが、まだまだ予断を許さない状況にあり注意を継続していく。一方で、今期は輸送船需給の逼迫がボトルネックになると想定しており、その点に留意して短期オペレーションを行っていく」と取締役専務執行役員の毛籠勝弘氏は語った。

【SUBARU】

 22年度の販売台数は、米国での需要が大きく回復するとともに、日本や欧州、豪州もプラス成長となったことから、前年度比16%増の85.2万台となった。同社では、半導体の供給課題に対し、柔軟な生産計画の調整など影響の最小化に注力。22年度は特に第4四半期に一部の車載半導体の供給不足による操業への影響が大きくでたものの、生産台数は前年度から14.7万台増の87.4万台となった。23年度は、半導体の供給におけるリスクは依然として残っているが、徐々に回復していくことを見込み、生産台数は22年度から13.6万台増の101万台、グローバル販売台数は同15.8万台増の101万台を計画している。

 「半導体不足については徐々に解消してきており、4月の生産実績は前年超えとなった。現時点で操業に大きな影響を及ぼす他の案件は控えていない。また、部品供給不足への対応力は向上してきており、23年度はしっかりと101万台を生産したい。依然としてグローバル全体で需要は強く、現時点で約7万台の受注残を抱えている。1台でも多く生産・供給してお客様に届けていく」と前CEOの中村知美氏は語った。

【三菱自動車】

 22年度の販売台数は、前年度比11%減の83.4万台となった。主にASEAN地域では、上期に半導体の供給不足に加え上海ロックダウンによる生産制約の影響を受け、また、下期には断続的な利上げやインフレなどによる購買意欲の低下などもあり、購買環境が厳しさを増す結果となった。

 23年度はASEAN地域を中心に三菱自動車らしさを具現化した新型車を順次投入する計画。日本市場では、好調に販売を伸ばしている「デリカミニ」や、「アウトランダー」のさらなる拡販の推進により、グローバルで91.7万台の販売台数を見込む。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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