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第43回

世界のLED市場は2017年まで1.4兆円規模で長期横ばいが続く


~意外と伸びない照明向け白色LED、ヘルスケア用途で赤色LED、紫外LEDに期待~

2014/3/7

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

 「あれだけ急成長の期待がかけられたLEDマーケットはここに来てまったく伸びが止まっている。2012~2017年にかけての5年間についてもほぼ横ばいで推移すると見られており、世界市場は1.4兆円で止まったままだ。照明用途に過剰な期待が集まったが、実のところは世界的には白熱電球、蛍光灯からの置き換えがなかなか進まない」

 これは国内の照明機器メーカーの幹部がうなるようにいった言葉である。世界の照明マーケットは、どう少なく見積もっても12兆円はあるといわれている。この30%を通常の電球や蛍光灯から置き換えただけでも、LEDには3兆6000億円のビッグマーケットがあるといわれているのに、ここにきては伸びを欠いているというのだ。ちなみに、現状で世界人口72億人のうち、電気が通っているのは50億人分であり、残る22億人はいまだに油とたいまつ、ろうそくの世界にいるのだから、LED照明の普及には本来ならもっと期待が集まってよいのだ。

 さて、LEDはきわめて少ない電流で光を発することができるため、省エネルギーという観点でいえば、世界のエコブームに乗っている電子デバイスだ。特に白色LEDは1990年代後半に日本の日亜化学工業が青色LEDを開発し、これに黄色の蛍光体を被せることで白色化に成功したのが始まりだ。このことで照明光原としての用途が一気に広がった。当初は携帯電話の液晶パネルのバックライト需要で弾けた。その後には、大型液晶テレビに大量採用され、これで爆発的に伸びた。大型液晶テレビは500~1000個のLEDを用いるわけであり、まさに大型アプリであったが、世界出荷台数が年間2億台を超えたあたりから完全に伸びが止まった。現状では買い換え需要が中心であり、このことでLEDの世界市場も伸びが止まってしまったのだ。


 もちろん、自動車のヘッドライトや一般照明といった大型アプリが充分に残っているが、価格が下がってきたとはいえ、やはり通常のライトを使う人が圧倒的に多い。店舗や街角のポスター、広告看板などをターゲットにするデジタルサイネージという世界もLEDには魅力のある市場。しかして、こちらもなかなか一気には開花してこない市場なのだ。

 ところでLEDメーカーの売り上げランキングを見れば、日亜化学工業が長期にわたって世界チャンピオンの座を守っている。ここにきてサムスン、LG、ソウルセミコンダクターなど韓国勢の追い上げも激しいのであるが、ハイエンドでもローエンドでも強い日亜化学の牙城はなかなか崩せない。技術的にも世界に最先行しており、品質の良さでも定評のある同社は設備投資についても積極的だ。
 2010年には582億円、2011年には826億円、2012年には614億円、2013年についても500億円を投入したと見られ、常に一定レベルの高水準投資を断行している。この背景としては、同社の営業利益率が非常に高い、ということがあり、要するに高水準投資を充分にできる環境にあるのだ。2006年当時は売り上げの約60%が営業利益というすさまじさであり、最近はさすがに減ってきたとはいえ、やはり売り上げの30%以上が利益だといわれている。日本の半導体メーカーでこれだけの高収益を叩き出すメーカーはまずいないだろう。

 現状で日亜化学に迫っている世界ランク第2位のサムスンは、フラッシュメモリー、DRAM、液晶など常に大型投資案件を抱えており、正直言ってLEDに全力投入できないことも日亜にはプラス要因に働くのだ。これは世界4位のLGについても同じことが言えるだろう。2012年段階における国別マーケットシェアを見れば、日本勢が世界シェア30%を持ち、いまだ世界トップの座にある。日亜を筆頭に世界ランク8位のトヨタ合成、同9位のシャープがそれなりに頑張っている。これに対して韓国勢はシェア28%で日本を猛追しており、今後の状況によっては韓国が日本を追い抜き、さらに差を広げる展開とも言えそうだ。ちなみにアメリカ・ヨーロッパ勢はシェア19%、台湾勢はシェア15%、中国勢はシェア8%となっている。

 「白色LEDはここに来て伸びを欠いているが、赤色LEDについては今後急増が期待できる。赤色LEDは血液中のヘモグロビン濃度を測れるという特性があり、これがヘルスケアに生きるのだ。次の世代のスマートフォンにはかなり多く赤色LEDが搭載されるといわれている。すなわち、血圧や血流などのヘルスケアをモバイル端末で行うという時代がもうそこまで来ているのだ」
 これは化合物半導体メーカーの幹部が期待を込め、笑みを浮かべて語った言葉である。また紫外LEDは、照射することにより、がん細胞治癒に役立つという臨床例も出てきているのだ。さらにいえば、LEDを使った農業もかなり実用化されており、つまり植物工場であるが、野菜や果物が早く育つという有利さがある。また、海水の中で魚やイカを釣る際にLED照明を使って効果を挙げるという道筋も見えてきている。

 液晶テレビ向けバックライトという大きなマーケットが成熟化してきたとはいえ、様々な用途拡大は今後も続くだろう。米国エネルギー省のLED照明普及計画を見ても2030年にはLED普及率を74%に引き上げ、従来比46%の省エネを見込んでいるというのだ。ちなみに中国におけるLEDの普及拡大が話題になったが、実際のところLED照明がもっとも普及している国は日本である。もったいない精神が国民の一般的な哲学となっているこの国では、2015年にはLED照明普及率が70%を超えてくるとまで予想されているのだ。
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