電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第45回

高機能化が進むスマートハウス


目標は「ZEH」と「レジリエンス」

2014/5/16

 スマートハウスは、1990年代後半から導入が開始されたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災を契機に一気に需要が加速した。調査会社である(株)富士経済(東京都中央区)の国内スマートハウス関連システム・サービス市場調査によると、12年の国内スマートハウス関連市場(見込み)は、11年比25.3%増の1兆8409億円となり、1万1500戸が販売された。関連サービス/システム別では、創エネが6205億円、蓄エネが2239億円、省エネが8593億円、通信・計測ほかが1372億円だ。

 また、20年には3兆6362億円にまで拡大すると予測している。内訳は、創エネが1兆653億円、蓄エネが1兆1212億円、省エネが9500億円、通信・計測ほかが4998億円だ。

20年までにゼロ化

 スマートハウスと一口に言っても様々だ。創エネの観点からは90年代から発売された太陽光発電搭載住宅や燃料電池(エネファーム)搭載住宅がある。蓄エネの観点からは蓄電池搭載住宅、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)と連係したVehicle to Home(V2H)が挙げられる。また、省エネの観点からはHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)によるエネルギーの高効率化や「見える化」をはじめ、断熱性能、通風シミュレーションなどがある。

 一方で、現在ではこれら創エネ、蓄エネ、省エネを組み合わせたタイプが一般化しつつある。また、太陽光発電、燃料電池、それに蓄電池を組み合わせた3電池搭載住宅も製品化されている(積水ハウス(株)の「グリーンファースト ハイブリッド」)。

 創エネ、蓄エネ、省エネとますます高機能化が進むスマートハウスだが、その目標の1つに設定されているのが「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」だ。「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の住宅版だが、住宅で消費したエネルギー量に対し、住宅で発生させたエネルギー量で相殺することでゼロ化するものだ。創エネが消費エネルギーを上回るため、理論上は住宅内での「エネルギー自給」が可能となる。政府は、20年までに標準的な新築住宅でZEHを実現することを目指している。

 ただし、「ゼロ」までいかなくても、かなり高い割合で自給は可能となっている。例えば、今年4月に発表された積水化学工業(株)(大阪市北区)住宅カンパニーの木質系スマートハウス「グランツーユー V to Heim(ブイ トゥ ハイム)」は、太陽光発電とEVを最適に連携させることで、住宅全体で使う年間エネルギーの最大75%まで自給できるとしている。

 キーとなるのは、10kW以上の太陽光発電と家庭用蓄電池の数倍の蓄電容量のEV(日産自動車の「LEAF」では24kWh)による効率的なエネルギー活用だ。具体的には、従来のスマートハウスは、EVから住宅へ給電する場合は電力会社からの電気を一時遮断するなど瞬時停電が発生したほか、停電時は太陽光発電からEVへの充電ができなかった。これに対し、グランツーユー V to Heimは平常時と非常時いずれでも住宅からEVへの充電、EVから住宅への給電を可能にする。

 また、停電時でも太陽光発電の電力をEVに充電することで電力を確保する。非常用電源としてEVの電気を使い切っても、太陽光発電からの再充電により再びEVを電源として利用でき、数日におよぶ大規模停電が発生した場合でも家電の利用が連日可能という。さらに、太陽光発電による積極的な売電と、安価な深夜電力をEVへ蓄電し、朝晩に活用することで経済性も実現する。より経済性を追求するケースでは、光熱費約62万円/年、EV燃費約6万円/年の合計約68万円/年の削減効果が見込めるとしている。

防災・減災への耐久力強化

 ZEH以外にも注目されているのがレジリエンス住宅だ。レジリエンスは回復力、耐久力などと訳されるが、我が国ではリスクマネジメントや防災・減災に対する取り組みを促進する「ナショナル・レジリエンス(国家強靭力)」が進められている(13年に法案可決)。

 住宅メーカーでは、13年に(株)LIXIL住宅研究所(東京都江東区)がレジリエンスに対応したスマートハウス「レジリエンス住宅CH14」を開発している。最大の特徴は、非常時に電気、ガス、水道の供給がストップした状況でも、約1カ月の自律的な生活ができる点だ。具体的には、LPGバルクから自律型ガスコジェネ向けの燃料を供給して発電するほか、生活用のガスも提供する。また、貯水槽から日常に使う飲料水を提供するほか、食料を確保するスペースがあるため食料も備蓄できるという。

 これに対し、一般的なスマートハウスは、停電時に3時間程度しか電力供給ができないうえ、水、食料の対策はなされていない。

半導体産業新聞 編集部 記者 東哲也

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